異世界の家族
「……て…ださい。……おきて……さい。起きてください。勇姫様」
「……ぅんん。あと……10分。」
「ダメです。今日はお客様がお見えです。」
「……お客様……。」
「おはようございます、勇姫様。今日も裸で寝ていらっしゃいましたね。今日はお客様が見えていらっしゃいますよ。ご朝食はお客様といっしょにとっていただきます。」
「おはよう、イルミナ。裸で寝てたのは……クセだからゆる……ご……ごめんなさい。」
イルミナに睨まれた……。美人の怒った顔はめちゃくちゃ迫力がある。思わず謝ってしまった。本当に裸で寝るのやめようかな……。
「いいえ。反省してくださったならいいんですよ。毎日同じことを言っている気がしますけどね。」
「本当にごめんなさい。……と……ところでお客さまって、誰なの。私この世界に知ってる人少ないよ。」
「お客様とは、セルドル公爵と公爵夫人ですわ。詳しい説明は同席なさる陛下の方からあると思いますので、私からはひかえさせていただきます。」
「セルドル公爵と夫人……。セルドル公爵家……歴史の授業でやったような……。ぅうーん、何代か前の王弟で、バッシュのお母さんがセルドル公爵家の出だったような……。」
「素晴らしい記憶力ですわ。さすが勇姫様ですね。」
「えへへ、これでも学校の成績は良かったんだよ、学年5位。」
「まぁ、本当に素晴らしいですわ。ですが、裸で言われても説得力に少々かけますね……。」
「うっ……。そうだね。」
「さぁ勇姫様、お客様をこれ以上お待たせするわけにはまいりませんので、お早く準備をしましょう。」
「うん。」
知らない人に会うのたのしみだな。この世界のこといろいろ教えてくれるかな。
***
身支度を済ませ、お客様が待っているという部屋にイルミナとラシエルと向かう途中でバッシュにあった。
「あ、おはよう、バッシュ。」
「うむ、おはよう。これから、客間に向かうのだろう?ともに行こう。イルミナ、ラシエル私がともにいるから下がって構わない。」
「ですが、なにかあったら危険です。騎士としてともに行くのが私の仕事です。」
「下がれと言っている。」
「……はい、失礼させていただきます。」
「では陛下、失礼します。ラシエルともに行きましょう。」
むむむ、ラシエルを怒って気落ちさせるなんて、バッシュはどういうつもりなんだ。美人は意気消沈しても美人だけど、私はかわいくてきれいな女の人の味方だぞ。
「うむ、いったな。さぁ、勇姫行こうか。ん……どうしたんだ勇姫?」
「むー、女の子にあんなに怒るなんて、バッシュはどういうつもりなの。」
「あれは、国王である私の命令を無視したんだから、仕方あるまい。」
「でも、あれは王様であるバッシュのことを心配して言ってたんだよ。あんな言い方しなくてもいいじゃない。ラシエルはがんばってるもん。またこんなことがあったら、バッシュのこと嫌いになるからね。」
あぁ、すごい子供っぽい。
バッシュが言ってることが、この国では正当だってわかるけど……でも、やっぱり、こんなに良くしてくれているバッシュが、傲慢な王様になってほしくないもん。
う~ん、一宿一飯の恩義?友情?母性?とにかくバッシュには、このままいい王様でいてほしい。
「すまなかった、勇姫。今度から気を付ける。後でラシエルにも言っておこう。……だから、嫌いになるだなんていうな。」
なんでバッシュは、嫌いになるくらいでこんなにあせっているんだろ?
「うぅん。わかってくれたならいいよ。嫌いになるなんて言ってごめんね。お客様が待っているんでしょう?早く行こう。」
「ああ、わかったよ。私が悪かったこともちゃんとな。そうだな、これ以上客を待たせるわけにもいかないから行くか。」
「うん」
***
コンコン、ギィー―――
「入るぞ、セルドル公爵。公爵も夫人もよく来てくれたな。」
「陛下がお呼びとあらば、私も妻も喜んで参りますよ、かわいい甥っ子のために。それに、今日はかわいい娘にもあえることですし。」
「……むすめ?ねぇ、バッシュどういうこと。」
「ああ、勇姫紹介する。セルドル公爵とご婦人だ。そして今日からお前の両親になる。」
「初めまして、勇姫ちゃん。ラドクリフ・フォン・セルドルだよ。今日から君のパパになるんだ。こっちは妻のサーシャ・モルト・セルドルでママだよ。パパ、ママって呼んでね。」
「よろしくね、勇姫ちゃん。それにしても、こんなにかわいい娘で、私、うれしいわ。」
か……会話についていけない……。パパ?ママ?両親?どういうこと?
確かに、こんなロマンスグレーの茶髪にエメラルドグリーンの瞳の、ダンディーなおじ様がパパならうれしいし、こんなふわっふわのライトブラウンの髪に、ブルーの瞳の巨乳美少女がママなら自慢できる。
だかしかし、どういうことだーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!
「…………バッシュ、どういうこと……。」
「……く……詳しい話は朝食を食べながらにしよう。」
***
カチャカチャ―――
朝食をとりながら事情を聴いた。
要約すると、こういうことらしい。
この世界には私の戸籍がない。戸籍を作るために、どこかの養子に入れる必要があった。
どうせ養子に入れるなら、身分がある家がいいだろうということで、バッシュのおじさんにあたる公爵に声をかけたらいい返事が返ってきた、ということらしい。
それでもって今日は顔合わせと、養子縁組みの書類にサインをするらしい。
「私たち娘がほしかったの。でも、主人との間には息子しか生まれなくて……。3人も作ったのに全部息子。
かわいくもなんともないわ。でも、陛下に声をかけていただけて一も二もなく返事をしたわ。」
「はぁ……。」
「これからよろしくね、勇姫ちゃん。」
「はぁ……よろしくお願いします。ところで、サーシャさんはお幾つなんですか。」
「ママって呼んで。」
「あの……サー」
「ママ」
「……ママはお幾つなんですか。」
「主人と同い年よ。42歳。」
「よんじゅーに……。」
こ、こんなに若い42がいるのか!!!?少女にしか見えん。
「あー、サーシャだけママって、呼んでもらってずるいぞ。勇姫ちゃん、私のこともパパって呼んで。」
期待のこもった目……あきらめるしか道はない。 本当の両親ですら父さん、母さんと呼んでいたのに……。
「……パパ……。」
ガバ―――
パパに抱きしめられた。
「もう、 勇姫ちゃん超かわいい。こんな娘ができて本当にうれしいよ。」
「まぁ、パパずるいわ。私も仲間に入れてくださいな。」
ギュ―――
ママも参加。
ロマンスグレーと年齢不詳美少女、一般人の人間サンドウィッチ完成。
うわー、ママの巨乳が当たるよ。パパからはいい匂いするしサイコー。
「仲良くなるのは結構だが、勇姫を返してもらおう。」
「なんで?両親ができたってことは、私、お城を出て、セルドル公爵家のお家に行くんじゃないの?」
「勇姫を外に出すわけないだろう。それにこの世界での勇姫の家はここだ。」
ちぇっ、セルドル公爵家のほうが自由に異世界ツワーできるかと思ったのに……。まぁ、バッシュの近くのほうが安心かな。
「勇姫ちゃん。陛下がケチだから一緒に生活はできないけど、今度家にもおいで、部屋も用意してあるから。ここだけの話、家出してきてもいいんだぞ。」
「そうよ、勇姫ちゃん。絶対にいらっしゃいね。そのとき息子たちを紹介するわ。」
「家出なんてさせるかー。」
騒動の中、異世界文字で読めるけど、読みにくい書類の言われたところに3枚サインした。
その中の1枚だけ最重要なものなのか、正式名でサインといわれ、漢字と異世界文字のごちゃ混ぜでサインした。
小町勇姫、16歳。異世界で家族ができて、勇姫・小町・セルドルになりました。
両親はなんだかつかめませんが、面白そうな感じがします。義兄たちに会うのも楽しみです。
言われた通りにサインしたから知らなかった。これが、婚姻のための養子縁組みだなんて……。ごちゃ混ぜサインの書類が婚姻届けだなんて……。私は知らなかった―――。
続くと思う。




