表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
1/5

プロローグ:神童の終わりと、飽くなき武への執着

【第1章:黎明の魔気闘法編】

前世において、俺――神谷陣かみや じんは、間違いなく歴史に名を残すべき「百年に一人の天才」だった。

古武術『神谷流』を代々伝える道場に生まれ、物心がつく前から祖父に拳を叩き込まれた。

武器を使わず、呼吸と精神の集中によって内なる『気』を練り上げ、触れた瞬間に爆発的な威力を叩き込む発勁の技。俺はその技術を、恐ろしいほどの速度で吸収していった。

十歳で大人の門下生を総なめにし、十五歳で祖父すら凌駕した。

周囲からは「神童」と持て囃され、俺自身、この世に極められぬ武などない、と傲慢にすら思っていた。

――だが、天は俺に、武の深淵を覗く時間を与えてはくれなかった。

二十歳を迎えたある日、俺の肉体は突然の病に侵された。

不治の病。日に日に痩せ細り、あれほど自由自在に操れた『気』すらも、体外へ霧散していく。

「嘘だろ……。俺は、まだ何も成し遂げちゃいない……!」

病院のベッドの上、痩せこけた自分の両拳を見つめながら、俺は歯を食いしばった。

天才と謳われようが、二十年ぽっちの人生では、武の入り口に立ったに過ぎない。

もっと先へ。誰も到達したことのない、本当の『極み』へ行きたかった。

この拳一つで、世界のすべてを圧倒するような、本物の強さを手に入れたかった。

そんな果てしない無念と、武への狂気的な執着を抱いたまま、俺の意識は深い闇へと沈んでいった。

「――おめでとうございます、エルリア王妃様! 元気な男の子でございます!」

次に意識が覚醒した時、俺を包んでいたのは、聞いたこともない言語の歓声だった。

視界はひどく霞み、身体は自分のものとは思えないほど小さく、そして言うことを聞かない。

状況からして、俺は死に、別の世界へ生まれ変わった――いわゆる『転生』をしたのだと、すぐに理解できた。

大国ルミナス王国の第5王子、アレン・フォン・ルミナス。それが、俺の新しい名前。

だが、そんな奇跡への驚きなど、次に感じた衝撃に比べれば些細なことだった。

(なんだ……この、悍ましいほどのエネルギーは……)

小さな赤ん坊の肉体の奥底。そこには、前世で練り上げていた『気』など比べ物にならないほど、濃密で、海のように広大な未知のエネルギーが渦巻いていた。

まだこの世界の言葉も、文化も、何もわからない。

だが、この肉体に宿る規格外の質量を持ったエネルギーだけは、本能で理解できた。

俺は産声すら上げず、ベッドの中で自分の小さなお手手こぶしをじっと見つめ、ひねくれた笑みを浮かべた。

(前世では、肉体の限界と時間の短さのせいで、武の極みに届かなかった。だが、今の俺には、この異常なまでのエネルギーがある。これを使って、前世の術理をさらに高めることができたら……一体どれほどの領域に到達できるか)

想像しただけで、赤ん坊の身でありながら、ゾクゾクとするような歓喜が全身を駆け巡る。


どんな世界だろうと関係ない。王位継承権も貴族の権力争いも、俺には興味の欠片もありはしない。

俺の邪魔をする奴、そして俺の身内に手を出そうとする奴は、誰であれ徹底的にすり潰すだけだ。

「今度こそ、誰も追いつけない最強の道を歩んでやる」

ひねくれ者の戦闘狂王子アレンと、のちに彼の影として絶対の忠誠を誓う元暗殺者メイドのセリア。

世界を震撼させ、やがて伝説の『アンノウン』ランクへと駆け上がる男の二度目の人生が、今、静かに幕を開けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ