表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月夜海は、誰が為に想ふ。  作者: 朝霧唯凪
序章 : 残雪
PR
1/21

プロローグ

あれは確か雪が降っていた日だった。父に連れられ、常世神社を訪れた。

当時俺は15歳。本殿に入ると、たくさんの大人がいて妙に緊張したのを今でも覚えている。


『朧』


父が俺の名前を呼んだ。


『はい』

『挨拶するだけでいい。決してそれ以外は喋るんじゃないぞ』

『分かりました』


素直に頷いて案内された部屋に入る。四人の男性が既に座布団に座っていて、その前に一人の少女が座っていた。


『どうぞお座りになってください』


座布団に座ると、顔合わせが始まった。


左から順番に挨拶が始まり、最後に俺の番になった。


『十六夜朧。15歳です。よろしくお願い致します』


全員が簡単な挨拶を終え、ずっと俯いていた少女が、ふと顔を上げた。

ビー玉のような目だった。光を閉じ込めたみたいに、何の感情も映していない。こけた頬。白すぎる肌。

その存在だけが、この場から浮いている。

その姿を見た瞬間、言葉にならない感覚が胸を刺した。

怖いのか、美しいのか、それすら分からない。

ただ、視線を外せなかった。


『■■■■。9歳です。よろしくお願いします』


彼女はか細い声でそう言って、とても律儀に頭を下げた。


─9歳。


幼なさに驚く。まだ子供じゃないか。

こんな場所にいるべき年齢じゃない、と直感的に思う。

けれど、部屋の誰もそれを問題にしている様子はなかった。

静けさが戻り、間に座っていた男性が次の話題に移らせる。父の言う通りにしてそれ以上は一言も喋らず、顔合わせが終わった。


『何も言わなかっただろうな』


帰り際父に聞かれ、俺は頷いた。


『ならいい。選ばれることはないだろう』

『選ばれるって何ですか?』

『お前は知らなくていい。災いになんか仕える必要はない』


その時の俺は、連れてこられただけで何も分かっていなかった。この顔合わせは、巫様に仕える次の鎮守人を決める会合だったらしい。そして、彼女が壮絶な人生を送っていることも知りはしなかった。

今でも思い出す。あの雪の日の静けさと、ビー玉のような目を。

そして、変わりもしないことを毎回考えるのだ。


─あの時、俺が選ばれていたら彼女を救えていたんじゃないか、と。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ