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明治「再」起動 ―暴君が塗り替える近代史―  作者: tky@複数作品を同時連載中
第5章:無謀な自由と神を思わせる星

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第88話:鋼の同化と、深淵のダイソン球

本日2話目

【時系列:西暦1888年 秋 ― 銀河開拓時代の深化】


地球が「完璧な管理」と「小さな不満」の奇妙な均衡状態にあった頃。

アイアン・パレスの巨大な手は、すでに銀河の隣人たちを完全に掌握しつつあった。


無血開城を受け入れ、パレスの軍門に降った異星文明の本星「惑星ゼノス」。


かつて彼らが誇っていた独自の文明は、わずか数年足らずで、パレスの圧倒的な技術フォーマットによって劇的に塗り替えられていた。


惑星の軌道上には、ヴァルカン(重工業統括)が設計した超巨大な自動造船プラントが、幾何学的なリング状に展開されている。


その光景は、もはや一つの星というより、星の重力そのものを動力源とした**「巨大な工場機械」**であった。


「……驚異的だ。我々の計算モデルを、遥かに凌駕している」


ゼノス星の最高評議会代表・ゾルは、灰色の四つの瞳を瞬かせ、軌道上から次々と産み出される新型艦艇を見上げた。


ゼノス星人は、感情を排し、純粋な論理と効率のみを追求して進化してきた種族である。

彼らにとって、パレスの支配は「屈辱」ではなく**「究極のアップデート」**であった。


「代表。第三セクターの装甲板生成ライン、パレス標準規格への統合が完了しました。生産力は降伏前の八千倍に達します」


「素晴らしい。我々はパレスという『完全なる上位互換システム』の一部になれたのだ。


これこそが、我々ゼノス星人が宇宙で生き残るための、最も美しい最適解だ」


彼らは自らを「奴隷」だとは思っていない。 偉大なる魁斗の指揮下において、銀河を統治するための「最も優秀な歯車」として選ばれたことに、種族としての誇りすら見出し始めていた。


【同時期:銀河系中心部近傍・深宇宙探査母艦『アルゴナウタイ』】


ゼノス星がパレスの巨大な兵器廠として生まれ変わる一方で。

銀河のさらに深淵――ペルセウス腕の彼方へと進み続けていた探査艦隊は、ついに「未知の領域」へと足を踏み入れようとしていた。


「……魁斗様へ、最優先の暗号通信レベル・ゼロを繋ぎなさい」


航海・海図統括のコロンブスが、普段の優雅な態度を完全に消し去り、声に微かな「緊張」を滲ませて命じた。


通信回線が繋がり、エリュシオンの玉座に座る魁斗の姿がモニターに映し出される。


『どうしました、コロンブス。あなたから直接の緊急通信とは珍しい』


「……マスター。銀河中心部、第十二宙域。恒星の光が、物理的に完全に遮断されているエリアを発見しました」


『遮断? 暗黒星雲による減光ですか?』


「違います。……**『物理的な構造物』**によって、恒星が丸ごと覆い隠されているのです」


モニターに映し出されたのは、あまりにも巨大な人工物のシルエットだった。



一つの太陽をすっぽりと包み込むほどの超巨大な球殻――**『ダイソンスフィア』**の痕跡。


コロンブスは、手元のコンソールに膨大な観測データを展開しながら、早口で説明を続ける。


「重力波の干渉とサイズから計算される総質量は、G型主系列星に匹敵します。

光学観測では完全な『黒』。光の反射すら一切ありません。


当初、我々はこれが中身まで全て機械で構成された『超巨大な人工天体』である可能性も疑いました」


コロンブスは、一つのグラフを拡大した。


「ですが、パレスの量子干渉センサーが、その『黒い壁』の奥から漏れ出す微弱なニュートリノの放射パターンを捉えました。


さらに、重力波の偏向データによる内部質量の分布解析……。

その結果、中心部には圧倒的な超高密度プラズマ――つまり**『自然発生した恒星』**が存在し、それを厚さ数千キロの『殻』が完全に覆い隠していると断定せざるを得ません」


中身が恒星であると断定されたことで、一つの巨大な「矛盾」が浮き彫りになる。


「マスター。エネルギー源として恒星を利用するだけならば、我々の**『反物質対消滅炉』**の方が数桁も高出力かつ高効率です。


わざわざ巨大な太陽の周りに、惑星数個分の質量を浪費して殻を築くなど、エネルギー効率の面からは全く合理的ではありません。


問題は、彼らがなぜ、これほど莫大な物理的コストをかけてまで『恒星を殻で覆う』という非効率な真似をしたのか、です」


パレスの技術力があれば、恒星エネルギーなど不要である。


ダイソン球を建造する意味があるとすれば、それはエネルギーの確保ではなく、恒星を「巨大な要塞のコア」とするためか。


あるいは――**「何か途方もない存在を、その殻の中に封じ込めるための牢獄」**とするためか。


「マスター。この銀河には、我々の物理法則や合理性の枠外に存在する『超古代文明』、あるいは『未知の強大な知的生命体』が存在する可能性があります」


だが。


『……素晴らしい』


モニター越しの魁斗は、恐怖するどころか、まるで新しい極上のパズルを見つけた学者のように、目を輝かせて笑っていた。


『エネルギー効率を無視してまで、恒星を要塞化する……あるいは、閉じ込める。


実に興味深く、美しい発想だ。……ダヴィンチが見たら、解明したくて徹夜でシミュレーションを回すでしょうね。


ゼノス星人とは、また違った**『論理の極地』**がそこにあるのかもしれない』


魁斗の言葉には、未知の強者に対する萎縮は微塵もなかった。



そこにあるのは、自らの知的好奇心と、パレスの技術力をさらに高みへと引き上げるための「極上の餌」を見つけたという、貪欲な歓喜だけである。


『脅威ではありませんよ、コロンブス。それは、我々パレスがさらに進化するための「教材」です。この広大な宇宙で、私を退屈させないものがまだ残っていたことに感謝しましょう』


魁斗は、漆黒の瞳に獰猛な支配者の光を宿して命令を下した。


『アルゴナウタイは、そのまま偵察を継続しなさい。……相手が神であろうと、超古代文明であろうと関係ありません。


私の家族が住むこの銀河に、私が理解・管理しきれない「未知」が存在することは、許されないのですから。


パレスの旗を、その「殻」の上に打ち立てる準備を始めなさい』

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