表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

盾が教えてくれたこと

盾を持っていると、

世界は狭くなる。

新兵は、初めてそう感じた。

訓練場では、盾は安心だった。

前を向いて構えればいい。

横も後ろも、考えなくていい。

教官の声が響く。

「盾は仲間を信じる証だ」

その言葉に、疑いはなかった。

だが戦場では違った。

盾を上げた瞬間、

視界の半分が消える。

足元が見えない。

仲間の位置も曖昧になる。

それでも構え続けた。

教えられた通りに。

矢が飛んだ。

盾に当たる音がした。

硬い音。

安心する音。

その直後、

横から悲鳴が上がった。

盾を持たない側の仲間が、

倒れていた。

新兵は、盾をずらした。

一瞬だけ、横を見る。

その一瞬で、

剣が迫っていた。

盾を戻す。

間に合った。

だが、

腕が痺れる。

重い。

重すぎる。

戦いの合間、

彼はあの軽装の兵を見つけた。

盾はない。

鎧も薄い。

それでも、

誰よりも遠くにいた。

近づかれず、

囲まれず、

追われてもいなかった。

新兵は思った。

「盾がないから、危ないんじゃない。

盾があるから、動けないんじゃないか」

その考えは、

すぐに振り払った。

教えに逆らう考えだ。

夜。

焚き火のそばで、

盾を地面に立てかける。

腕が軽くなる。

それだけで、

少し怖くなった。

隣の古参兵が言った。

「盾はな、

守ってくれるもんやない」

新兵は顔を上げる。

「じゃあ……何ですか」

古参兵は、肩をすくめた。

「考えなくて済む道具や」

その言葉が、

胸に残った。

盾を構えている間、

自分は何も選んでいなかった。

前に出るか。

下がるか。

逃げるか。

全部、

盾の向こうに隠していた。

新兵は、盾を見る。

傷だらけの表面。

確かに、

何度も命を救ってくれた。

同時に――

何度も、判断を奪っていた。

その夜、

彼は盾を抱えたまま眠った。

捨てる勇気は、

まだなかった。

だが、

重さを知ってしまった。

それだけで、

もう前と同じではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ