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盾を落とした新兵

最初に重いと思ったのは、

盾だった。

腕が痺れる。

構えるたびに、半歩遅れる。

教官は言った。

「盾は命だ。捨てるな」

新兵は、うなずいた。

戦場で、それは嘘だと知った。

敵は走ってきた。

速い。

思ったより、ずっと。

盾を構える。

視界が狭まる。

一歩、遅れる。

衝撃。

盾ごと、弾き飛ばされる。

地面に転がった盾は、

彼の腕よりも重そうに見えた。

立ち上がる間もない。

敵が来る。

剣が来る。

そのとき、

横から誰かが走り抜けた。

軽装。

盾なし。

投げ槍が一閃し、

敵の足が止まる。

「立て」

短い声。

彼は、立った。

盾は拾わなかった。

拾う暇がなかった。

その人は、後ろを見ない。

「遅れるな。

盾より先に、足を動かせ」

新兵は、走った。

盾なしで。

矢が飛ぶ。

彼は、初めて気づいた。

盾がなくても、当たらなければいい。

戦いが終わる。

生きていた。

盾は、どこかに消えていた。

夜、焚き火のそば。

新兵は聞いた。

「盾……持たなくていいんですか」

その人は、槍を拭きながら言った。

「持ちたいなら、持て。

だが、

守ってくれない物を信じるな」

翌朝。

新兵は、盾を持った。

革紐を腕に通すと、

いつもの重さが戻ってくる。

安心と、

わずかな違和感。

昨夜の言葉が、

胸の奥に残っていた。

――守ってくれない物を信じるな。

それでも、

彼は盾を置かなかった。

まだ、捨てる理由より

持つ理由の方が多かった。

新兵は列に加わる。

盾を持ったまま、

迷いだけを携えて。

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