冬への序章(終)
12月に入ってから1週間が過ぎた。
あと3カ月と少し――それが彼に、そして私たちに残された、最後の時間。
そんな時期に、初雪の周りに変化が起きていた。
「バニー!」
「…………」
本物のウサギを抱え、自分の頭に重ねたウサギ耳をした少女を、初雪が白けた表情で見ている。
けれど少女はめげない。
河野初雪に構ってもらおうと、けなげに頑張っている。
『……? 彼女は……?』
今まで初雪の周囲で見たことがない少女だ。
交友範囲ではもちろん、クラスメートとも違うし、同じ学年の少女でもなかったはず。
調べてみると、どうやら転入生らしい。
『こんな時期に?』
また珍しいこともあるものだ。
そして同時に、奇特なことだ。
初雪に自分から関わり合いになろうとするなんて言う好きものは、今までいなかった。せいぜいが、彼女――小坂井綾くらいだろう。その彼女にしたって、私という要因と、彼女自身が持つ理由があった。
「見て見て、河野君!」
「あ?」
「バニー!」
「…………」
本当に、珍しいこともあるものだ。
『……楽しい方ですね』
そんな少女が初雪のすぐそばに現れた。
――こんな、終わりに向かう、最後の時に。