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死んでこの世に未練は無いけど、元婚約者候補たちが私を地縛霊にしようとしてきます  作者: 天りあま


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1/5

1. 目が覚めたらお葬式でした

「どうして死んでしまったんだ……!」


 

 ——死んだ? 誰が?


 

「僕を置いていかないでよ……」

「一緒に美味しいケーキを食べようって言ったじゃねえか」

「海にも行こうって、あの景色を見に行こうって、言っていたでしょう」

「俺らと約束しただろ」


 

「……シェリア」


 

 ——誰かが、私のことを呼んでる?


 

 ふわふわと浮かぶ感覚の中、シェリアは目を開いた。


 声が聞こえてきた方向を見下ろす。

 足元よりももっと下の方で、五人の男性が棺を囲んでいた。


 棺の中には一人の女性が横たわり、胸元で手を組んでいた。たくさんの花に囲まれたその顔には見覚えがある。

 

 プラチナブロンドの豊かな長髪と、同じ色の長いまつげ。

 見覚えがあるどころではない、シェリアが最もよく知る顔。


 ——あれは私だ。え、私? でも私は今ここに……。


 胸元へ持ち上げた手に視線を落とすと、何故か手の向こう側が見える。

 ()()()()()


「えっ」


 何度見ても、透けている。明らかに、半透明である。


 ――私、死んだの!?!?



 シェリアが困惑に包まれる中、黒い服を着た人々が棺の周りに集まり、棺をどこかへと運んでいく。


「あ、待って」


 シェリアは確かに声を出した。が、誰にも聞こえていない様子だ。

 もっと近付けばいいのか、と地面へ降りようとしたが――。


「近付けない……」


 十字架が魔を阻むことは知っていたが、幽霊も対象だったとは。


 彼らが向かう先は墓地のようだ。

 

 土葬された遺体が魔のものに取り込まれないように、墓地には大きな十字架が一つ掲げてある。


 

 ――これじゃあ墓前で故人を偲んでも、故人本人が立ち入れないじゃないのよ。


 

 遠くなっていく彼らの背を眺めながら、そんなことを思う。

 

 まあ、墓地の管理人も幽霊から「十字架をやめてください」と言われていないのだろうから、仕方ないことではあるが。



 学校の友人や、バイト先の人々も参列してくれているらしい。

 皆暗い顔をして静かに歩く姿を見ると、シェリアの気持ちも暗く沈んでいくようだ。


 

 ――あそこに居るのはママとパパだわ。


 

 列の最後尾には、シェリアの母と父がゆっくりと歩みを進めていた。

 

 泣き腫らした顔の母、そっと寄り添う父。

 それを見た瞬間、駆け寄って声を掛けたい思いが胸を衝く。


 

「ね、ねえ、私はここに居るよ!! ママ! パパ! 泣かないで! 私は、シェリアはここに……、」


 

 声を張り上げて叫んでも、全く聞こえている様子が無い。

 しずしずと進む足取りは止まることがなく、そのまま棺の前まで辿り着く。


 

 今までに無いほど叫んだのに、喉は痛くならない。

 誰も振り向かなくて心が張り裂けそうな思いなのに、涙一つ出ない。

 

 透ける手足。十字架に近付けない身体。届かない声。

 否応なく積み上げられる事実を、シェリアは。




 ――そっか。私、死んじゃったんだ。




 あっさりと受け入れた。

 

 生前から「切り替えが早い」とよく言われていたシェリアのその気質は、死後も変わらなかった。



 ――死んじゃったんなら仕方ない。私がここで嘆いても、生き返るわけじゃないもんね。ママ、パパ、先に死んじゃって、親不孝で本当にごめんなさい。


 それから……と、シェリアは自身の婚約者候補であった幼馴染たちや、友人、知人たちに向けて心の中で詫びた。



 ――でも私……なんで死んだんだろう?

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