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★第7話ー3

 白馬亭は、レンガ作りのお洒落な外観で、宿の外にまで出店を出している。出店では、炭火で外見がオレンジ色の魚が焼かれている。香ばしい香りに誘われて、お客さんが集まって賑やかだ。

 その人々の間を、すり抜け宿に入る。内部は茶色の壁に、床は深緑の絨毯が敷かれていて、落ち着いた雰囲気だ。受付の木製テーブルには、金髪を三つ編みにした、細い狐のような目のお姉さんが「いらっしゃいませ」と元気に迎えてくれる。


「泊まりたいが空いてるか?」

「はい。3名様ですか?」

「あと猫も大丈夫か?」


 リュカが、僕の方を振り返る。すると受付のお姉さんがニコッと微笑んで頷く。


「可愛いらしい黒猫ですね! もちろん歓迎します」

「良かった〜!」

「それでは、メイドのスズナに案内させますね。スズナ! お客さんをよろしくね!」


「はーい!」


 受付の奥のドアが開き、ショートカットされた青い髪にクリッとした黒い目の、そばかすが可愛い女の子が現れた。


「ご案内しますね! わぁ! 可愛い猫さんですね! さ……触ってもいいですか?」


 僕の肩に乗っている、天音に目が釘付けだ。天音は可愛いから撫でたくなる気持ち、めちゃくちゃ分かる。


「これ! スズナ! お客さんにご迷惑でしょ!」

「大丈夫だよ! 天音って言うんだ。首の下を撫でると喜ぶ」

「ありがとう! 天音よろしくね!」

「にゃーん!」

「わぁ! ふわっふわねー! 可愛い」


 天音も嫌がる事なく、スズナに撫でられて、ご機嫌そうに目を細めている。


「じゃ! ご案内します!」


 ひとしきり天音を撫でて満足したようで、2階の客室へと向かい歩いて行く。その途中に、難関が再び現れた。


 また階段かぁ! 


 出来る事なら、今度からは、平屋の宿が良い……


 ルルカを見ると、身長は同じくらいなのにテンポ良く、ぴょんぴょん上がって行く。


「僕だって!」


 勢いよく階段を上ろうとした。だがしかし、やっぱり一段一段が高い。膝上は軽くあるから、手をついてしまうのだ。なんか、悔しい。

 

「うぅぅ〜……」


 唸っていると、フワリと体が浮く。またまたリュカに抱っこされてしまった


「ありがとう」


 お礼を言うと、頭をクシャリと撫でられた。




「こちらになります! お夕飯は3名様と、天音ちゃんの分で、よろしいですか?」

「あぁ。それで頼む」

「では7時頃にお持ちしますね! それではごゆっくりお過ごしください」


 通された部屋は、なかなかの広さでベッドが4つ並んでいる。縦長長方形の大きな窓があるので、室内はとっても明るいし、床は毛の短い緑の絨毯は歩きやすい。部屋の片隅の扉を開けるとトイレはあるけど、やっぱり風呂は無かった。


 3人と1匹で、それぞれのベッドに座る。


「先に言っておくのじゃ。黄の大陸には妾は行けぬ」

「どうして?」

「元々は、黄の大陸は魔族の住む地だったのじゃ」

「だったって事は、もしかして、さっきリュカが言ったラウルたちが何かしたの?」

「うむ。」


 ルルカは立ち上がると、隣のベッドに移動して天音を抱きしめる。


「何があったか聞いてもいい?」

「そうじゃの。百年以上前の事になるのじゃが、白の大陸に住んでおったラウルの曽祖父が突然、魔族は敵だとか正義の為だとか言って大量の軍勢を率いて、黄の大陸に攻め込んできたのじゃ。魔族は500年は生きる長命種じゃから、数自体は数百人程度の少数一族。いくら魔力が人族より多かろうが、万の大軍には勝てなかったのじゃ。ギリギリまで一族を守った魔王である父は、妾の目の前で数十の兵の魔法槍に串刺しにされ死んでいったんじゃ。妾は母と共に城を追われ逃げる事になったのじゃが、その最中に妾は敵の大将に捕まり角を奪われたんじゃ。それを悲しんだ母が命懸けで、妾とハルルと、父の側近バティストを、黒の大陸に転送してくれたのじゃ」

「そんな事があったのか……」

「うむ。それで問題は角なのじゃ。妾の一部である角は妾が近づくと反応するのじゃ。だからの隠密行動には向かんのじゃ」

「なるほどな。出来れば角も領土も取り戻したい所だな」

「無茶をするで無いぞ! 妾の父母を殺した奴らは既に角の呪いで死んでおるし、昔は緑豊かな地であったが今はどうなっておるのかも分からんのじゃ! お主らの目的はヴァレリーを探す事じゃろ!」

「無茶はしない。ヴァレリーとハルルを探す事を優先する。だがラウルの本拠地を探る良い機会だとも思う。とはいえ厄介なのは変わらんが……」


 そう言えば、ティルティポーに関しては、母さんたちが何か策を練っているような事を言ってた。



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