★第7話ー4
コンコンコン!
ドアがノックされ、リュカがドアを開けると、スズナが食事の乗ったオボンを持って「失礼いたします」とお辞儀をして入って来た。
「スズナというたか? そなたに聞きたい事があるのじゃが良いかの?」
出て行こうとしたスズナを、ルルカが呼び止めた。
「何でしょうか? 分かる事でしたらお答えします」
「今朝まで妾にそっくりな者が、ここの宿に泊まっておったと聞いたが、どんな様子じゃった?」
「はい! お泊まりになっておりましたよ。ハルル様でございますね。もう1人のヴァレリー様と一緒に行動されてました。お2人共あまり喋らない方たちでしたが、お食事のお魚は美味しそうに召し上がっておりましたよ」
「なるほどの。教えてくれてありがとうなのじゃ」
「いえいえ。それでは、ごゆっくりお食事を楽しんでくださいね」
お辞儀をして、スズナが出て行くと、ルルカは溜息をついてから、小さな消え入りそうな声で「ハルルが元気そうで良かったのじゃ。だか黄の大陸に行くなど、やっぱり心配なのじゃ。本当は一緒に行きたいのじゃ。だがの足手纏いにはなりたくないのじゃ……」と呟いて、天音を抱きしめた。その頬を慰めるかのようにペロペロ舐めている。
「明日、オレたちは船で黄の大陸に向かう。ヴァレリーの事もハルルの事も必ず探して連れて帰って来る」
「そうだよ! ルルカ待っていてよ」
「うむ。頼んだのじゃ」
海鮮たっぷりの夕食をすませ、天音と遊んでいると、窓をカツンカツンと叩く音が聞こえた。もしかして母さんからの、手紙かもしれないと、窓に駆け寄り開ける。
「カァ!」
思った通り、窓の前で羽ばたいている鴉がいた。
「カカカァ!!!」
夜の闇に紛れて飛んできた鴉は、室内に入るとクルリと旋回してから、僕のベッドに降りてきた。母さんが巻き付けたんだろう、首の赤いリボンが似合っていて可愛い。予想通り、脚に手紙がくくり付けてある。
一つは僕宛、もう一つはリュカ宛だ。
「これ母さんからリュカにって!」
「ありがとう」
リュカは受け取り、手紙を開いて険しい顔で読み始める。
自分への、手紙をベッドに座って開く。
『我が娘アレティーシア。手紙をありがとう。嬉しかったですよ。私たちも元気です。アレティーシアの旅が順調のようで安心しました。けど、くれぐれも気をつけるのですよ。ティルティポーが、双子神子を使って何かたくらんでます』
「返事は……」
鴉の脚に巻き付けるので小さな羊皮紙に書く。だから、どうしても短い文章しか送れないのが難点だ。
『母さんへ。お返事ありがとう。元気そうで良かったよ。僕たちは、これから黄の大陸に向かって海を渡るよ。リュカもいるし大丈夫。母さんたちも気を付けてね』
隣を見ると、リュカも丁度、書き終えた所だった。リュカから手紙を受け取り、僕の手紙と重ねて小さく細く折り畳み、羽繕いをしていた鴉の脚に括り付けた。
「母さんによろしく!」
「カァ!」
バサバサ翼を羽ばたかせ、夜の闇へと飛び去っていった。
それを見送ってから、リュカが母さんからの手紙を手に持ったまま、ルルカの方を向いて真剣な顔になった。
「ティルティポーが怪しい動きをしているらしい、一度セランケーナに戻った方が良いだろうと思う」
「分かったのじゃ」




