★第14話、帰郷。束の間の休息。
ルルカが呼びだしたドラゴンの背中に乗る事になったんだけど、いつもとは違い長距離移動という事で落ちたりしないようにリュカとルルカの間に座った。
「ルルカの腰にしがみついてろ。オレが後ろから支える」
「分かった」
リュカが言葉通り、僕を腕で固定してくれるから安心出来る。
隣を見るとフィンの操る2体のドラゴンが伏せをしている。フィンとルデラさんは、そのドラゴンたちの背中に跨り乗っている。しかも鎧を着込んでいるので騎士って感じがしてかっこいい。
「出発なのじゃ!」
「また会おう!」
「じゃ! またな!」
「またね!」
「お元気で!」
「にゃ!」
手を振って別れの挨拶を交わす。
僕たちの乗るルルカのドラゴンが先に飛び立ち、続いてルデラさんたちのドラゴンが羽ばたき僕たちの後を追いかけてきた。
1か月近く滞在した青の王城の回りをゆっくり旋回すると、城の窓からシラハさんとユラハが手を振るのが見えた。手を振り返すとシラハさんは微笑んで、ユラハは更に力強く手をブンブン振ってくれた。
ルデラさんたちの、向かう先は僕たちと反対方向なので途中から別れる事になった。そして2人の乗るドラゴンの姿は瞬く間に見えなくなっていく。ドラゴンはスピードが速いからね。
日が沈む方角へ、太陽を追いかけるように僕たちのドラゴンは向かう。
大陸が鼓動している為に、大陸と大陸の間で海水がぶつかり合い噴き上がり噴水のように踊り輝く水飛沫。そして夕日に照らされ煌めいて幾重にも重なる虹の幻想的な風景に目を奪われる。
「綺麗!」
「そうじゃろ! 朝日も良いが夕日の赤みがかった海の柱も最高なのじゃ!」
「うん!」
「美しいな」
「にゃん!」
美しいこの世界を壊されないように守らないといけないと改めて思った。
ルルカのドラゴンは徐々にスピードを上げて、普段より空高く羽ばたく。雲が下に見えて切れ間から海の青が見える。
「なんだか暑いね」
「いつもより高く飛んでおるからなのじゃ」
「やっぱりこの世界は空に近いほど暑くなるんだね」
「太陽に近づくから当然なのじゃ! タキのいた世界は違ったのか?」
「うん。山も空も太陽に近づくほど寒くなるんだよ」
「逆なのじゃな。違う所があるのは面白いのじゃ!」
「だよね!」
「うむ。タキの世界の事、いつか聞かせて欲しいのじゃ!」
「オレも、それは凄く興味があるな」
「うん! いつか話すよ」
ルルカは僕の前世を”見て”知っているけど細かい事まで分からなかったのだろう。リュカは以前から僕の前世の事に興味津々だったよね。全てが終わったら2人には、沢山色々な事を聞いて欲しいと思ってしまう。
「コヤツには頑張ってもらっておるから明日の朝にはフィラシャーリに着くのじゃ」
ドラゴンの頭をルルカは愛おしげに撫でて、到着が早くなった事を教えてくれた。
「寝てもいいぞ。落ちないよう支えておくからな」
「うむ! 寝ておれば良いのじゃ。妾のドラゴンは安全なのじゃ」
「ありがと!」
回復薬を量産したからなのか、実はかなり疲れが出て眠かった。だからすぐに睡魔がやってきてリュカにもたれかかるようにすると、落ちないようにとリュカの力強い腕が支えてくれたのを感じ眠りに落ちた。
「タキ。起きろ」
「フィラシャーリは目の前なのじゃ!」
目を擦りながら、見回すとドラゴンは既にスピードを緩め低空飛行になっていた。
目の前には大きな街が見えてきた。中央には西洋風の城が建っている。外観は初めて見るけど水色と白を基調とした美しい城だ。
「思ったより大きな城だね」
「城は大体このくらいの規模のものが多いだろうな」
たしかに今まで見てきた城も大きかった。前世は庶民だったから未だに驚くんだよね。
「さ! しっかり掴まるのじゃ。城の中庭に降りるのじゃ」
「分かった」
ルルカの腰にしがみついた。リュカも支えてくれる。
次の瞬間、あまり衝撃もなくフワリと中庭の芝生に舞い降りた。そして僕はリュカに抱きかかえられドラゴンから飛び降り芝生に下ろしてもらった。
「妾はこのままセランケーナ山に戻るのじゃ。ハルルが心配なのじゃ」
色々な事が裏で動いていて、いつ何が起きても不思議じゃないからね。ハルルが心配なのは僕も一緒だ。
それでもやっぱり……。
「さみしくなるね」
「またすぐ会えるのじゃ」
「そうだよね」
「うむ。次は白の大陸で! なのじゃ」
「またね」
「うむ」
ルルカを乗せたドラゴンが、僕たちの上を一度旋回してから飛び去っていった。




