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★第13話ー2

 再び青の大陸、王都ユウギリ。


 10日間ほど滞在したけど、商人を見つける事は出来なかった。でも少しだけ変化があった。それは大陸の核の異変を治したおかげで、寒さが和らいで雲の切れ間から太陽の暖かな日差しが2日に一回は降りそそぐようになった事だ。


 今日も朝から、太陽の光が氷の山々を照らして眩しいくらいだ。空気も澄んで気持ちがいいので、街の見回りに行くと言うリュカについてきたのだ。


「商人たちを仕切っている”誰か”が、僕たちが探っている事に気づいて姿を消したのかな?」

「そうかもしれないが、ここまで何も起きないのは不気味だな」


 そうなんだよね。今までだと僕たちが動くたびに何か仕掛けてきたからさ。そう思って街を警戒しながら歩いていても不審な動きをする人はいない。


 と、その時、黒い影が目の前を横切ってから舞い戻ってきて僕の頭に止まった。


「カァ! カァ!!」

「母さんからだ」


 頭の上の鴉を、リュカに抱きかかえてもらい、いつものように足から手紙を取ろうとして手が止まった。


 鴉の首に少し大きめの鞄がかけられているのだ。しっかりボタンで止められた鞄を鴉の首から外し中に入っている分厚い封書を取り出す。


 宛名には、アレティーシアとリュカデリクの名前が並んでいる。裏には差出人であるフィラシャーリとミュルアークの王国印が押されている。普段の個人的な手紙とは違う、正式な手紙だと分かり緊張が走る。


「何かあったのかもしれない」

「あぁ。急いで城に戻って皆の前で読んだ方が良さそうだな」

「うん」


 僕はリュカに片手抱っこしてもらって急いで城に向かう事にした。


 リュカは鍛えているだけあって風のように速く走って城門に着き、門番には既に顔を覚えられているので顔パスで城内に入る。階段に至っては跳ねるように3段飛ばしで一気に上がったので、すぐにシラハさんの部屋の前に着いた。僕は、床に下ろして貰いリュカと共にシラハさんの部屋にノックをしてから入る。襖だからノックしても鈍い音しか出ないけどね。


「あら、早かったのですね」

「あぁ。緊急の手紙が届いたんだ」


 リュカが部屋を見渡し、シラハさんの他に、ユラハとルデラさんとフィンとルルカが揃っているのを確認する。天音は定位置の僕の胸元で朝から寝ている。


「全員いるな。では手紙を読む」


 緊急と聞いて皆んなが、リュカが持っている分厚い封書に注目する。リュカが懐から小さなナイフを取り出し封を切る。


 僕も緊張でゴクリと喉が鳴って、手に汗をかいてしまう。


—————————


 1週間前、謎の爆発によりティルティポー共和国の約三分の一が消滅しました。


 隣街のアデルギィには被害は無かったものの、家や家族を失ったティルティポーの住人たちが避難してきています。人数が多いので私たちの国でも受け入れる事になりました。


 爆発の原因については、フィラシャーリ王国とミュルアーク王国で協力して探っていますが今のところ詳細は不明のままです。


 魔導師による生存者の確認調査によれば、消滅したティルティポーのラウルとシャイナの屋敷を含む、その領地の住民の生存の可能性はほぼないと結論が出ました。しかし双子神子については不明と言う結果が出ました。


 そしてこれは極秘にリュカデリクに探ってもらっていた事なのですが、ミュルアーク王アラディスの行方について生存者から重要な話を聞くことができました。深夜に黒の大陸の港から何処かに連れて行かれたそうです。


—————————


「……黒の大陸は大変な事になったな」

「あぁ。何があったか知らないが、まさかティルティポーが攻撃されるなんて思わなかった」


 ルデラさんの呟きにリュカが力なく答える。


「一度帰ってみてはどうでしょう?」


 リュカが頭を抱えて悩み始めると、シラハさんが提案してきた。


「そうだな。状況を知る為に一度戻るのもありかもしれないな。タキもそれで良いか?」

「うん。良いよ。母さんたちの事も心配だからさ」

「では妾がフィラシャーリまで送ってやるのじゃ! 妾のドラゴンならば1日で着くのじゃ!」


 僕たちの話を聞いていたルルカが立ち上がり拳を握って仁王立ちする。


「ありがと! ルルカよろしくね!」

「うむ! 頼まれたのじゃ! では今すぐに出発するのじゃ!」


 握った拳を振り上げ気合い充分のルルカは襖を、スパーン! と開けて部屋から出て行ってしまった。


「さみしくなるな……」

「そうですね。次に会えるのは白の大陸に行く時になるでしょう」

 

 ユラハの寂しげな様子に、シラハさんが慰めるようにユラハの肩を抱きよせる。


 僕もユラハたちと別れるのはさみしくて、だからいつでも連絡が出来るように鴉を呼び出す。


「ユラハとシラハさんにも『鴉』渡しておくね」

「カカカァ!!」

「まぁ。美しい鳥ですね」

「鴉って言うんだよ。どんなに離れていても必ず僕たちを繋いでくれるんだよ」


 僕の手から、ユラハの腕に鴉は飛び移った。


「ありがとう! 必ず手紙書くよ」

「うん。待ってる」


 手を振って別れる。ユラハはシラハさんの公務の手伝いがあるから、ここでお別れだ。


「ではワシらも帰るかな」

「そうですね」


 次に皆んなが揃うのは、たぶん決戦の地である白の大陸になるだろう。





 青の大陸、港町サユラ、ぼったくり道具屋。


『……我が王よ。オレたちもそろそろ本腰を入れなくてはいけないようですね』

「そうだな。白の大陸に戻って迎え打つ準備をしなくてはな」


 ぼったくり道具屋の店主の顔が、瞬く間に変化していき白い髪に赤い瞳の青年に変化した。


「双子神子の状態はどうだ?」

『あの娘にぶつけるだけなら充分に役割を果たせる事でしょう』

「戦わせて弱った所を捕縛する。そしてこの世界を破壊する力を貰い受ける」


 王と呼ばれた青年の赤い瞳からは、強い悲しみと憎しみの混ざった赤黒いオーラが立ち上る。


『そのあとオレは自由を手に入れる。これ以上、大陸に縛りつけられて生き続けるなど……耐えられんからな……』


 白い霧を纏っているはずなのに、スヴェンの身体からは赤い憎しみの炎が滲み出て揺らぐ。

 

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