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★第12話ー2

 ここに来た目的は終わったけど、地上に戻る前に聞いておきたい事が出来てしまった。


「気になる事があるんだけど?」

「申してみよ」

「何で双子神子は召喚されるって伝わっているの?」

「ふむ。それは数千年前に起こった事が関係しておるの」

「何があったのか聞いてもいい?」


 大精霊は少し考えこんでから僕を見た。


「……封印された過去を……少し長い話になるが……そなたら地上に住む者にも今こそ伝えておかねばならぬの……」




◇◇◇◇◇


 約3700年程前、白の大陸。


「どれほど待っても双子神子など生まれないではないか!」

「王よ。お気をお鎮めくださいませ」

「何が繁栄をもたらすだ!」


 国中から女性を城に連れてきては子を産ませた。だがそれらしい子供が生まれないどころか、白の王アルは破滅をもたらすなどと言う輩まで現れ出した。


「このままでは終わりだ……」

「我が王よ。オレが力を貸そう」


 何も無い空間から霧がたちこめ、全身真っ白の大精霊が現れワシの耳元で囁いた。


「生まれぬなら召喚すれば良いのです」

「そんな事が出来るのか?」

「白の大精霊スヴェンにお任せください」

「分かった。任せたぞ」

「御意」



 それから半年後、純白の城の中で禁忌とされる双子神子の召喚の儀が行われた。


 白の大広間いっぱいに描かれた魔法陣は、禍々しい赤紫色の輝きを放ち稲光を伴う。


 輝きが収まると、2人の人間が現れた。そのどちらも、この世界の者ではないと分かる雰囲気がある。


 1人は、黒く艶やかな長い髪の大人の女性で、泣き黒子が特徴的で妙な色気を孕んでいる。ただし薄汚れたボロ切れの様な服を身に纏い虚な目をしている。


 もう1人は、小さな男児で、おそらく7〜10歳くらいだろう。茶色がかった柔らかそうな髪の、その子供は母が恋しいと泣きじゃくっている。服装は質素ではあるが白い半袖シャツに紺の半ズボンを身につけている。


 どう考えても奇妙な取り合わせの2人を囲むようにして、大きな水晶と宝石が嵌め込まれた仰々しい杖を手に持ったまま222名の魔導師が床に倒れていた。


 そしてその様子を、22段ある階段の先にある玉座から、口元に笑みを浮かべ見下ろす白の王アルがいた。


「多くの犠牲が出たが遂に成功したな」

「双子神子の召喚に関わる事が出来たのです。彼らも本望でしょう」

「そうだな」


 けれどそれは偽りの双子神子、当然すぐにほころびが現れた。


 泣き黒子の女性はシズリと言ったが、魔力も力も何も持ってはいなかった。が、自らの溢れ出るような妖艶な色気で白の王アルを籠絡し贅の限りを尽くした。

 女性とは逆に、男児は莫大な魔力を有していた。その事が女性は気に入らなくて、白の王アルに頼んで男児の魔力を封印して地下牢放り込んだ。更には事ある事に痛ぶり続けた。




 それから10年が経った頃、事件は起きてしまった。


「俺から全てを奪った貴様らを滅ぼす」


 いきなりの召喚によって両親との別れを余儀なくされた上に、一緒に召喚された女には痛ぶられ、白の王アルには力さえ封じられ日の光も届かない地下牢に閉じ込められていたのだ。更に食べ物にいたっては1日一回、残飯を牢の中に放り込まれるだけだった。


 ー 名前を聞かれる事も無かった。 ー


 茶色がかった髪の毛は真っ白に変わり果て、瞳の色は怒りと憎しみで赤々と燃える。

 

 ー けれど呼ばれなくて良かった。両親に貰った大切な名前が汚れなくてすんだのだから……。 ー


 悲しみと孤独は恨みヘ変わり長い時を経て怨念となり、白の城の地下深くに厳重に封じられていた魔神を呼び起こし同化した。


 ー 少しずつ力を蓄えた俺はこの世界に復讐すると誓った。 ー


「やっ! やめろ!! そうだ! 望むものは何でもやるから! だから殺さないでくれ!」


 ー 何か言っているな……くらいにしか思えなかった ー


「もう虐めたりしないわ! 家族のように大切に優しくするから! だから!」


 ー もう何を言われても、俺には届かない ー


 手のひらに業火を灯し、目の前の2人を薙ぎ払うように消し去って、城も消し炭さえ残らないくらいに燃やし尽くした。


「スヴェン。お前は裏切るなよ」

「もちろんでございます。レイジ様」


 レイジと呼ばれた者の隣には、白の大精霊スヴェンの姿があった。



◇◇◇◇◇




「妾が知っておるのはこれくらいだの。双子神子の情報が曲がって伝わった原因は、間違いなく白の大陸での出来事のせいであろうの」

「召喚してみたら出来てしまったから、双子神子は召喚出来るって伝わってるって事なんだね?」

「そのようだの。だが所詮は偽りの双子神子。世界を救う力など持ってはおらん」


 大精霊が教えてくれた今の話、白の大陸に行く時、もの凄く役に立ちそうだよね。


「この話、リュカたち……僕の仲間たちにも話しても大丈夫かな?」

「それはかまわぬが、何か思いついたのかえ?」

「う〜ん。まだ何か引っかかる程度だけどね」

「では何か分かった時はシラハに伝えておくれ」

「うん!」


 シラハさんと大精霊は、繋がっているから聞く事が出来るのだろう。


「ユラハ、アレティーシア、そろそろ戻りましょう」

「またのシラハ」

「えぇ」


 僕とユラハの手をシラハさんが、しっかり握って地上へワープした。


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