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★第12話ー3

 万年、霧がたちこめ夜のような薄闇が広がる地下から、地上の元いた部屋に戻ると、窓から太陽の光が差し込んで明るい。そして城内は今までになく賑やかな声が響き聞こえてくる。


「もしかして皆んなが正気に戻ったのかな?」

「そのようですね」

「良かったぁ〜」


 僕とユラハは窓に駆けよる。


「太陽の光なんて久しぶりだ! 眩しいな!」


 大陸に異変が起き始めてから氷に閉ざされていたから、久しぶりの太陽にユラハは嬉しそうだ。


「うん! 風も気持ちいいね」


 手で日差しを避けながら空を見上げる。


「戻ったのじゃな!」


 外を見ていると、ルルカが翼を羽ばたかせ城の屋根から降りてきた。


「うん。今帰ってきた所だよ。皆んなはどこにいるの?」

「昼ごはんを食べてから、念の為の見回りに行くと言って出かけたのじゃ」

「そっか」


 なるほど。誰もいない室内には確かに食べ終わった鍋の残骸と、人数分の食器が重ねて置いてある。


「僕も食べたかったなぁ」

「あたしもお腹空いたぁ……」


 そんな僕たちを見て、シラハさんがニコッと微笑み立ち上がると部屋を出ていき、すぐに5人のメイドさんを連れて戻ってきた。そしてメイドさんたちはテキパキと鍋の用意を始めた。


「頑張った貴女たちに、とっておきのご馳走を用意しました」


 シラハさんが、パンパンと手を叩くと6人目のメイドさんが大きな籠を持って現れた。


「皆さんには内緒ですよ」


 悪戯っ子のようにウインクをして、メイドさんから木製籠を受け取ると、蓋を開けて蟹を箸でつまみ次々に鍋に入れていく。


「わぁ! 蟹だ!!」

「ママ良いのか?」

「もちろん。味わって食べるのですよ」


 僕の手のひら程の小さな茶色の蟹が茹でられていくにつれ、真っ赤に色が変化して美味しそうな匂いが漂いだす。香りからすると、どうやらベースは味噌のようだ。


「もう良さそうですね」


 シラハさんが、クツクツ煮えたぎる鍋からお椀に野菜と豆腐と、メインの蟹を2つずつ入れて渡してくれる。


「ありがと!」

「ありがとうママ」


 ちなみに僕の背後には羨ましそうに見ているルルカと、部屋のすみで寝ていたはずの天音が匂いに誘われ目を覚ましてヨダレを垂らしながら僕の肩に乗ってきた。


 うん。こんなご馳走が目の前にあったら食べたくなるよね。


「ルルカ様と天音も、こちらにいらっしゃい」

「妾も食べて良いのか?」

「うにゃ?」


 シラハさんは優しく微笑み、お椀によそって2人の前にも置く。大量に放り込んだ蟹は、最初からルルカと天音の分も入っていたみたいだ。


「それではいただきましょう」

「「「いただきます」」」

「にゃん!」


 この世界の蟹は殻の部分も柔らかくて、全部食べられると言うので思いっきり齧り付く。天音の蟹はほぐして冷まして小皿に乗せる。


「うっまーい!」

「美味しすぎる!!」

「にゃにゃーん!」

「お口に合って良かったです。最後はおじやにしますね」


 シラハさんが蟹の身をほぐして、ごはんと一緒に鍋に入れて煮込む。たまらなく良い匂いがする。ほどよく煮えるとシラハさんがお椀に、おじやをよそい手渡してくれた。


 お椀の熱で手のひらを温めてつつ、木製スプーンで掬って吹き冷ましパクリ。蟹の旨味が出ていて最高だよね。


「ん〜……! 美味し〜!!」


 日本人に生まれて良かった。とは言っても今は日本人じゃ無いけど、それでも食べ慣れた味噌の風味はたまらなく美味しいと感じる。幸せだ。


 天音の分も吹き冷ましながら小皿に移す。


「みゃん!」


 元々、海産物が好きな天音はカッカッと勢いよく食べていく。


 ユラハとルルカは、夢中になって食べまくり、おかわりまでしているのを見てしまった。さすがに僕はお腹がいっぱいで、そんなには食べられなかったけどね。


 シラハさんは、そんな僕たちの様子を微笑んで見ていた。



 食事が済んで暫くすると、リュカとルデラさんとフィンが戻ってきた。


「戻っていたんだな」

「うん! 少し前に帰って来たよ。リュカたちは街の見回り?」

「あぁ。だが商人は見かけなかったな。タキの方はどうだったんだ?」

「そっか……。どこに消えたんだろ? あっ! 僕たちの方だけど、やっぱりルデラさんの思っていた通り大精霊にも影響が出てたよ」

「やはりな」


 万能薬で赤い糸を消して、大精霊に薬を飲ませたら回復した事を伝えた。


「それでさ。色々と分かった事があるんだよ」


 白の大精霊から聞いた3700年前の話を聞かせた。


「なるほどな。偽りの双子神子か……。そんな過去があったから悪しきものが召喚すれば世界が破滅すると伝わったのかもしれないな」


 リュカが呟くと、ルデラさんとフィンが頷く。


「更に言うならば、ラウルとシャイナがおこなったのは、まさに3700年前の再現。同じ儀式と考えていいだろう」

「えぇ。その為に必要と思われる222名の魔導師は奴隷を使ったのでしょうね……」


 あまりにも凄惨な話に場が鎮まりかえる。


 最近、人攫いが多発していて秘密裏に奴隷にされて、何処かに連れて行かれていると聞いていたから、もしかしたらその人たちが……と思うと心が痛い。



「あと気になったのは、白の大精霊が存在してるなら、噂通り王が実在していてラウルとシャイナを操っているとかないかな?」


 過去の話を聞いてから、ずっと引っかかっていた事をリュカに言ってみた。リュカは以前から、こんな大掛かりな計画ラウルとシャイナの、2人だけに出来る事ではないと言っていたからね。


「あり得なくはないな」

「あぁ」

「そうですね」

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