★第10話ー5
コンコンコン!
朝ごはんを食べてから、着替えいるとノックが鳴った。ちなみに朝ごはんは、まさかのホットケーキだった。ふわふわで蜂蜜がかかっていて、とても美味しかった。デザートには新鮮なフルーツまであった。獣人たちは美食家が多いのかもしれない。
コンコンコンコンコン!!
「は〜い!」
朝ごはんを思い出していたら、再びノックが響いた。リュカは毎朝のトレーニングに出かけているから僕と天音しいないんだった。
慌ててドアを開けると、ナリアさんがニッコリ微笑んで立っていた。
「おはようございます。昨夜はぐっすり眠れましたか?」
「うん! 凄くよく眠れたよ。あとご飯が凄く美味しかった!」
「それは良かったです。赤の大陸は食物が豊富なのでシェフたちは、こだわって料理を作っているそうなんですよ」
「そうなんだね。なんだか故郷遠思い出す懐かしい味だったんだよ!」
昨日のシチューといい、今日のホットケーキといい、どちらも日本でよく食べた馴染み深いもので嬉しかった。
「喜んで頂けて私共も嬉しく思います。ところでリュカ様はどちらにいらっしゃるのですか?」
「あぁ。リュカは毎朝走りに行ってるんだよ。もうすぐ帰ってくると思うよ」
リュカが早朝に抜け出して体を鍛えているのは知ってる。最近は早朝以外にも、食後とか隙間時間にも走りに行っている。
「それではお待ちしましょう」
「あ! じゃあ。廊下の壁画を見ながらでも良い?」
「もちろん良いですよ」
部屋を出て壁画を見て歩く。地球とは違った姿をした生き物もいて本当に面白い。
特に、猫と犬なんかは、天音みたいに翼がある子もいれば、尻尾が5本あったりする子もいる。あとは馬はユニコーンやペガサスっぽい子も描かれている。
天音も興味津々で僕の後をついてくる。
「ナリアさん、ここに描かれている魔獣は全部存在するの?」
「はい。ここに描かれているのは神獣に近い者たちなので、会える確率は低いのですが存在しますよ」
「色々な子に会えるといいなぁ!」
元々、動物が大好きなので実物を見てみたくなる。
「タキ! ナリアさん待たせたな」
階段の前の壁画を見ていたら、ちょうどリュカが駆け上がってきた所だった。
「リュカ様も合流しましたので、クルガ様の所にご案内しますね」
苦手な階段は、ここを訪れた時と同様にリュカのお姫様抱っこで一階まで降りた。天音は楽しそうに階段を、ぴょんぴょん飛びながらついてきた。そして昨日と同じ部屋へと向かった。
「待ってましたぞ。今日はこれから魔獣を見せようと思っておったのだ」
「わぁ! ついに魔獣に会えるの!」
「ハッハッハッ! まずは移動しよう」
魔獣契約研究所に来た、1番の目的だから楽しみで仕方がない。クルガさんのあとについて行く。リュカも天音も興味はあるみたいで僕の後ろにいる。
「身体の調子は如何かな?」
「痛みも無いし元気いっぱいだよ」
「それは良かったですな」
「うん!」
宿泊施設とは反対側の廊下を突き当たりまで進んで止まった。
クルガさんが木製の大きなドアを開くと、森の木々に囲まれ、青々とした芝生の上を沢山の魔獣たちが走り回ったり寝転んだり自由に過ごしている。
「楽しんでくれたまえ! 撫でても良いし食べ物を与える事も出来る。このカゴを持って行くといい」
木の実が山盛りになったカゴをクルガさんから渡された。
その瞬間、魔獣たちの視線が一斉に僕に向けられた。
コレって、もしかしなくても、持っているカゴをロックオンしたよね? と思った時には、僕をめがけて走って集まってきた。
「わぁ〜!! くっ! くすぐったい!!」
突進してきたウサギ魔獣に、押し倒され芝生に転がってしまい木の実が散らばった。当然、僕の体も木の実だらけになってしまい。
結果、犬や猫、鳥、ウサギの姿をした、エサ目的の魔獣たちに群がられて舐め回された。
「くすぐったいけど皆んな可愛い〜!」
けれど僕的には大満足の時間になった。沢山のモフモフに囲まれるなんて幸せすぎるからさ。たぶん20匹以上はいたと思う。
「至福過ぎる!」
まさにパラダイスだった。
「ハッハッハッ! 満足頂けたようで何よりだ」
「うん! 可愛いし楽しかったよ! クルガさんありがと!」
お礼を言うと、クルガさんはニカッと笑み、そして……
「ここからは真面目な話に付き合って欲しいのだが良いだろうか?」
「はい」
今までと違い緊張感を、はらんだ声音に僕は居住いを正す。リュカと天音も僕の隣で聞く姿勢をとった。
「ウルの街に来るまでに噂くらいは聞いてると思うが王都についての事だ」
「赤ん坊が王になったとかの話?」
「あぁ。その事だ。人払いをして魔獣に周囲を見張らせてある。何かあれば、どんな質問にも答えよう」
「分かった。聞くよ」
話が長くなりそうだと察したリュカも芝生に腰を下ろす。天音は僕の膝の上に寝そべった。
「王城に普段から出入りする商人は、王に認められた商人のみが許されていた。だか数か月ほど前、不慮の事故でその商人が亡くなったと知らせが入り、後継者を名乗る者が現れた。最初はただの行商人にしか見えん者だった。だが次第に王に近づき始め、最近王に異変が現れた始めたのだ」
「確かに行商人を装って近づけば怪しまれなさそうだけど……」
「どうやら今まで出入りしていた商人の息子だと言って取り入ったそうだ。我が大陸の王は良く言えば全てに優しい王だ。だがな。優しすぎて疑う事もしない。周りの言葉は全て信じる。そんな王だから悪く言えば自分の信念もなく流されているように我には見えた」
「クルガさんは、まるで王様を間近で見てたような言い方をするんだね」
「あぁ。まぁ。隠す気は無いから言っておく。我は王の弟だからヤツが生まれた時から知っておる」
「だから詳しいんだ。でも王様には赤ん坊がいるって事は、奥さん……王妃がいるから大丈夫なんじゃない?」
僕の言葉を聞いて、クルガさんは顔を引き攣らせた。
「その王妃も問題なのだ。王が優しくて何でも言う事を聞くものだから贅沢三昧だ」
ハァ〜っと深い溜息をついて頭を抱えてしまった。悩みの種が、怪しい行商人だけじゃなく王妃までとなると確かに溜息でるよね。
「それで王様の異変って何が起こってるの?」
「急激に痩せ細り倒れたと聞いた。焦った側近と王妃によって急遽、王の継承をまだ1歳にもならん息子に執り行ったとも言っておったな。大陸が死んでは贅沢も出来んからな」
「どうしていきなりそんな事に?」
「分からん! 探りに行きたいのだが、我はウルの大樹の守人。ここを動く事は出来ん」
何となく察した。やたら親切だったのは僕たちに、やって欲しい事があったからだったんだ。無料ほど怖いモノは無い。至れり尽くせりの理由はこれだった
「力になって欲しい!」
放っておく事も出来ないし、不審な行商人も気になる。隣に座るリュカに向き直る。
「リュカ王都に行きたい」
「もしかしたら裏でティルティポーが絡んでいる可能性もあるから行くべきだろうな」
僕たちの言葉を聞いて、クルガさんはホッとした顔をした。
「決まったようだな。ではこれを渡しておく」
クルガさんが懐から、紐で括った羊皮紙と、かなりの重さがある皮袋を、僕の手に握らせた。
「これは何?」
「王城の地図と入る為の通行書だ。それと少ないが旅費だ」
「ありがと! あとちょっと気になる事かもう一つあるんだけど……」
「遠慮なく聞いてくれ」
「ルルカの友達って言っていたけど、どんな知り合いなの?」
僕の質問が突飛だったのか、目を見開き驚く仕草をしてから楽しそうに笑む。
「それはな! 美食の友なのだよ。ティルティポーの夜会で食べた料理が我の舌に合わんくて会場を出て、その辺をぶらついておったら散歩中のルルカに出会ったと言う訳だ。それで美味しい食い物はないか? と話をする内に友となったのだ」
なるほど、ここで出される料理が日本で食べた事があるものに似てる理由が分かった気がした。
ルルカは倉田木シンの世界のDVDを知っていた。当然、様々な食べ物も知っていて食べてみたくなったのだと思う。何せ、この世界の味付けは単純で塩味系しか無い。甘味にいたっては高価な蜂蜜とドライフルーツのみなのだ。
「美食の友……納得だよ……赤の大陸は食べ物が豊富だから、美味しい食べ物も出来るんだね」
「ハッハッハッ! そう言う事だ。 たまにチビドラゴンで配達もしておるぞ!」
「配達までしてたんだ。チビドラゴンって昨日見たことある子だよね?」
「あぁ。機会があれば送ってやろう」
「楽しみにしておくね!」
話が、ひと段落ついたので僕とリュカは立ち上がった。天音もピョンと芝生に降りる。
「じゃ! 善は急げ! 今から王都に出発しよう!」
「状況を聞いた感じ早く動いた方が良さそうだからな」
「王を……兄を、よろしく頼む」
「うん!」




