★第8話ー6
前世の”俺”の事を、どうして知っているのか? なんて聞かなくても分かる。サリアが話したに違いない。リュカの腕の中から抜け出して、天音の隣に並び、シャイナとラウルを睨む。今の自分に出来る最大限の威嚇だ。
「何故”俺”を待っていたんだ?」
思わず”素”の自分が出てしまったけど気にする余裕は無い。
「あたしはね。王になりたいの。それには特別な血と力が必要なのよ」
「こ奴らの血肉では、この大地は応えてくれんかったしな」
苛立ちを隠しもしないでラウルが、サリアたちの磔板をガシガシと足蹴にしながら「ふん! 所詮、人を欺くエセ神子ってヤツだ。チリほども役にたたんゴミだ」などと罵倒し唾まで吐いてる。
「だから2つの世界と関わりがあって、尚且つ王家の血を引く貴様が来るのを待っていたんだ」
「そうよ! 待っていたの。だって人柱として、これほど良いモノはそうそうないと思うのよね。だからね。さっさと死んで欲しいの」
「貴様を上手く使えばオレたちも”向こうの世界”とやらに行けるかもしれんしな」
シャイナとラウルの目には”俺”は人間ではなく利用価値のある”ただのモノ”として映っている。2つの世界……地球を知っているとすれば、サリアが研究書の事も話したんだろう。
「可愛いシャイナが王になる為に死んでくれ!」
ピュィ〜!
ラウルが指笛を鳴らすと、奴隷の首輪を着けた屈強な男たちが剣を手に、岩場で影から数十人ユラユラと現れた。その全ての人が虚ろな目を空を見上げ邪気を帯びている。サリアたちと同じで正気じゃないのだろう。
リュカが腰の剣を抜いて僕の前に立つ。
「フシャァーー!!」
天音も全身の毛を逆立て、翼を羽ばたかせ空中に飛び上がり臨戦体制だ。
僕も何かしようと動こうとしたら、リュカに手を握られ耳元で「悪用されるおそれがある。魔法は使うな」と小声で囁かれた。
少しずつ色々なモノが呼び出せるようになってきてるから、出来れば一緒に戦いたいけど、ここはリュカたちに任せた方がいいみたいだ。
母さんたちも、この僕の魔法、召喚術は唯一無二の力だとか言っていたから、生捕りにされる可能性もあるのだと思う。
「ふふふ! 多勢に無勢。どうするのかしら?」
「勝ち目など無い! そこの男! さっさとソイツを渡せ!」
ジリジリと奴隷たちが迫って来る。その後ろで妙に余裕のある笑みを浮かべるシャイナとラウル。
「ケケケッ! つっかまえたぁ〜!」
「うわぁ!」
一瞬の出来事だった。
「タキ!!」
「シャァ!!」
誰もいないはずの背後から突然、体全体が蜘蛛のように細い男が現れたかと思うと、僕を細長い腕で羽交締めにしてニャァと笑った。
「オイラは、どこでも、あるける! けはいも、ない!」
細く長い足を素早く動かし岩の上に登り、一気にリュカたちと離される。
ギョロっとした目で見つめ、そして舌舐めずりをしたかと思うと、僕の頬に擦り寄ろうとしてくる。逃げようと男の腕に噛みついたり足で蹴ったり、必死にもがくが拘束する力は強まるばかりだ。
「遊ぶな。早く殺せ!」
「わかった、オイラ、やる!」
ラウルが指示すると、蜘蛛男が右手がカマキリの鎌に変形させた。
そして鎌は振り下ろされる。
絶対絶命だ。
目をギュッと瞑る。
ガキィーーーン!!!
「グァ……ッ!」
ズシャッ!!
ひしゃげる音と同時に、僕の体はフワリと浮くような感覚がして、すぐに柔らかい何かに受け止められた。
凄まじい音に、恐るおそる目を開けるとルルカそっくりの人が僕を右手で抱えて、左手に持った銀色に輝く刀で蜘蛛男を弾き飛ばしていた。
「そっ! そこまでだ! わっ私の大切な人! に……手! を、だっ出すな!」




