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★第8話ー5

 変わり映えのしない、砂漠を2本線を辿りながら3日が過ぎていた。あの冒険者たちと別れてから、誰にも会うことがなかったし動物や魔物さえも見かけない。茶色くカサカサに枯れた草木と砂のみの大地をひたすら歩いていく。


 4日目を過ぎてから、次第に砂よりも赤茶色の岩が増えて、石もゴロゴロ転がって歩きにくくなってきた。そして風景も一変した。渓谷の名残りだと分かる、底の見えない深い裂け目のようになっている場所が現れたのだ。


 風が吹き抜けると「ウォー……ウォー……」と不気味な音まで響いている。



「うわ! 思ったよりもろいんだ」


 赤茶の岩肌を触ると、ホロホロと崩れてしまう。とうとう2本線も途絶えた。馬車のような大きく重い、車両は通れなかったんだと思う。車輪が一つ転がっているだけだ。本体はもしかしたら裂け目に落ちてしまったのかもしれない。


「あまり裂け目に近づくな。落ちたら無事ではすまないだろうからな」

「分かった!」

「オレに掴まれ」

「うん!」


 リュカの逞しく力強い手を握ると、しっかり握り返して僕が落ちたり転んだりしないように裂け目から離れ、ゆっくり進んでくれる。


 暫く歩くと明らかに人の手が加えられ作られた、階段状になった岩が谷底に続いている。


「この下にいるのかな?」

「行ってみるしかないだろうな」


 岩を削って作られた階段は、形も歪で段差も大きい。はっきり言って今の僕では、谷底に転がり落ちてしまいそうだ。


「リュカお願いしてもいいかな?」


 ちょっと恥ずかしいけど、両手を広げてリュカを見上げて頼んでみた。するとすぐに、僕を抱きかかえ階段を降り始めた。


「ありがと」

「落ちないように、しっかりつかまってろ」


 ギュッとリュカの腕につかまる。すると「よし。行こう」と言って、くしゃりと頭を撫でてくれる。


 リズミカルに階段を、更に下っていく。谷底に向かうにつれて、少しずつ太陽の光は届かなくなり、薄暗くなって肌寒さも感じる。無意識のうちにリュカに擦り寄る。天音も何かを感じているようでモゾモゾ動いて、僕の胸元から顔だけ出して辺りを見回す。


「誰かいるな……」

「誰?」


 思わず聞くと、リュカは人差し指を僕の唇に当てて小さな声で「シッ」と言って、守るように着ていた砂避けマントで包み込み岩陰に座り様子を伺う。

 僕も天音も気になって、マントから首だけ伸ばして様子を伺う。

 



 そこには冒険者たちが言っていた悍ましいモノがいた。


 地面に斜めに突き刺さるように立っている木の板に、両手両足を鉄の杭で磔にされた”2つの何か”は、髪の毛はボサボサのザンバラで、着ている服はズタボロで、まるで落武者のようになって、口は半開きでヨダレをダラダラたらして、目は死んだ魚のように濁りウツロで何も写してないようだ。


「もしかしてサリアたちなのか……?」

「間違いないだろうな。あれを見ろ」


 指差す方をみると、2人の胸元には丸く赤い魔法陣がしっかり描かれている。


「死んでるの?」

「ここからでは分からないが、あの2人からは邪気が大量に発生している」


 確かに、ドス黒いモヤがたちこめて、腐ったような異様な匂いまで漂って空気まで重い。


「他には誰もいないのかな? 奴隷が馬車を引いてたって言ってたと思うんだけど……」

「途中で馬車が落ちたような跡があった。あとこの周囲にも木片が散らばっている。もしも落ちたとすれば無事では無いかもしれないな」


 と、その時、天音が僕の胸元から飛び出して、全身の毛を逆立て牙を剥き出しにして、小さな翼まで出して威嚇を始めた。


「フゥゥゥ〜……!!」

「天音どうしたの?」


 天音は視線を外す事なく、僕たちを守るかのように前に出る。


「ほぅ! 子供とはいえ、さすがミュルアークの守護獣だ。我々の気配に気がつくとはな」


 磔板の背後にある大岩の影から、ニタニタと嫌な笑みを浮かべ男女が現れた。


「ラウルとシャイナ……なんで此処に?」


 ティルティポーの連中が動いてると言うのは聞いていたけど、まさかこの2人が直接来てるとは思わなかった。


「ふふふ。それはね。倉田木シンあなたを待っていたのよ」



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