表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第9章 赤き血のイチゾク
95/136

9-14-F

 F 坊やは祭り真っ只中の街を一人で歩いた。住民は、護衛も付けずに歩く坊やを見て見ぬ振りした。北岸の人々は大阪のおばちゃんのように遠慮なく触ってくるが、南岸の人々は東京人のように気を使ってくれた。

 大きな神社の境内に、様々な屋台が立っていた。その片隅で、天使のような青い瞳の美少女が一人寂しく遊んでいた。

 長いまつげの可憐な顔立ちだった。綺麗な金髪をツーサイドアップに結って、リボンで飾っていた。彼女は可愛らしいピンクのミニ浴衣を着て、ローラーシューズを履き、石畳をボトムズのようにローラーダッシュしていた。仕草は放課後の女子小学生そのもので愛らしいが、雰囲気は気品漂うお姫様だった。

 坊やは美少女と目が合った。その瞬間、彼女は全身に殺意を漲らせた。

 坊やの後ろを、肩車した親子連れが元気に通り過ぎていった。美少女は殺気を解いて下を向いた。青い瞳は赤く変色していた。

 巡回中の警察が、ただならぬ空気を察して、二人に声をかけてきた。


「どうしました?トラブルでもありました?」


 美少女は首を振った。坊やは何でもありませんと説明したが、警察は簡単に引き下がってはくれなかった。警察は彼女に尋ねた。


「今日は家族と一緒に来たのかな?お父さんお母さんは?」

「ママはいます。パパは、いません」

「小学生?」

「はい」

「ママの名前と、家の住所を教えてくれますか。お巡りさん、怖い顔してるけど君の味方だよ?何も怖くないからね」


 美少女JSは下を向いて黙った。妹です、と坊やは説明した。JSはローラーダッシュで坊やの後ろに回り込んで、警察から隠れた。

 警察はじっと坊やの目を見つめた。それから、腰を屈めてJSに話しかけた。


「お兄ちゃんと仲良くね。何かあったら連絡してね」


 警察は地面に名刺を置いて立ち去った。JSは泣きそうな顔で小さく頷いた。

 坊やとJSは夜店を回って、白いキツネのお面と、綿アメと、焼きそばを買った。二人はお堂の縁に腰掛けて、買ってきた物を食べた。


「・・・お兄ちゃんを名乗る不審者にご馳走される事案発生です。お兄さん、偉い人ですよね?一人で歩いてていいんですか。襲われますよ」


 A「そんな卑怯な事をする敵じゃない」

 B「殺されるほど弱くない」

 C「襲われたい」

 ↓

 A「卑怯ですよ、すごく……」


 B「遠距離が強いだけって誰かが言ってました。街中で接近されたら終わりなんだから、これからは注意してください」


 C「うーん。?ピンチを楽しむ、って事?すごいなあ、本当のヒーローみたい」


 JSは焼きそばを食べ終えた。坊やはまだ手を付けていない自分の分を差し出した。彼女は坊やの分を食べながら、自分の身の上を語り出した。


「今、プチ家出中なんです。なのに、ママの事ばっかり考えちゃう。これママに食べさせたいなとか、ママと一緒に見たかったなって。家にいた時は辛くて、誰にも話せなかった。年の離れた友達もいるけど、色々あって、多分二度と会えないから……

 お兄さんは辛くないですか? 色んな人が周りに集まってくるじゃないですか。名前も知らない、会った事もない人達が、助けてください、力を貸してくださいって。皆が私を頼ってくるけど、じゃあ私は誰を頼ればいいの?」


 A「自分」

 B「勝ち続ければ離れない」

 C「お兄さんを頼れ」


 JSは箸を置いて、「りんご飴食べたいです、今すぐ」と坊やにねだった。坊やは近くの夜店に買いに行った。

 JSは「焼きそばとわたあめおいしかったです。お面大事にします」とメモに書くと、お面を被ってその場を立ち去った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ