8-9-C
C 坊やは立ち去ろうとした。
「何も決められない、か。この戦場で一番人間らしいよ、お前。
王は孤独だ。誰もが王を頼るが、王は誰にも頼れない。そして結果を出し続けなければ、すぐに人は離れていく。一生苦しめ」
戦いは終わった。船は沈み、魔王は死んだ。
戦闘後、坊やは一人、司令部の作戦室に電気も点けずに閉じ篭もった。夜の街に花火が上がって、様々な色の光が部屋に差し込んできた。外から歓声が聞こえた。街中から万歳が聞こえた。
ドアをノックして、書類を抱えたテリーが入ってきた。
「一人でエッチな事考えてる暇があったら顔出す。主役がいないと始まらないよ」
テリーは机に書類を置いた。立ち去ろうとする彼女の手を、坊やは握った。彼はテリーの手を強く握って離さなかった。彼女は困った顔で尋ねた。
「どうしたら離してくれる?」
坊やは抱き締めてくれというように、両手を広げた。テリーは恥ずかしそうに、遠慮がちに彼を浅く抱き締めて、それから、おずおずと背中を撫でた。女性の体とは違う、どこを触っても硬くて逞しい男の体だった。少し震えているようにも感じた。坊やはその震えを止めるように、テリーに伝えるように、彼女の甘く柔らかい体を深く抱き締めて、首筋に顔を埋めた。テリーも強く抱き締め返した。そうして、彼女は「頑張ったね、辛かったね」と言おうとして、別の言葉を素直に口にしてしまった。
「好き、大好き……」
テリーは自分でも驚いて、顔を真っ赤にして離れようとしたが、坊やは抱き締めて離さなかった。
「違います!今『頑張ったね、辛かったね』って言おうとして盛大に噛んだんです!」
坊やは楽しそうに笑って、彼女の耳元でリクエストした。
「もう一回?今度は歌って?馬鹿じゃないの……♪好き好き好きー好きー、愛してるー、好き好き好きー好きー、坊やさん……」
坊やは失笑し、テリーは「もうやだこの人!」と恥ずかしがった。そんな彼女を、坊やはまた愛おしく抱き締めた。




