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B 坊やは右手を王子に向けた。指先から、黒い稲妻がほとばしった。王子は弱々しい声で頼んだ。
「日本は数年持たん。次に食われるのはこの大陸だ。だが、下は永遠に平和が続くと信じ、上は無意味な争いを繰り返している。俺はこの大陸を統一して滅びを防ぐ。無理だと笑うか?俺は、俺を笑う奴は、一人残らず捻り潰してきたよ。
俺を殺すなら、俺の革命を継げ」
坊やは驚いた。誰にも頼らない男から頼まれるなんて。
「新たな皇帝となって、欧米人から大陸を救え。鍵はもうお前の手の中にある。そしてアジアと同盟し、アメリカ、ヨーロッパに上陸して、世界の果てまでも帝国領としろ。その時、この大陸は完全に救われる。世界に永久の平和が訪れるだろう。
俺はここで死ぬ。だが、次の魔王はお前だ!」
坊やは黒い電撃を放射して、王子を焼き殺した。部屋の中に、甘い匂いと黒い煙が充満した。部屋の中央に、例の「蟠龍起萬天」の旗が飾られていた。坊やはその旗を掴んだ。彼の全身が黒い稲妻に化けて、船を突き破り空を飛んだ。
港の灯台から、秋水達は戦いの様子を見守っていた。沖合で、魔王の船が炎上していた。船から立ち昇る一本の黒い煙が、一直線に空へと駆け上がる龍に見えた。
船から、一筋の黒い稲妻が打ち上がった。魔王の船は炎上して沈んでいった。
稲妻は港に落ち、それが坊やに変化した。坊やは「蟠龍起萬天」の旗を掲げた。
港の兵士は万歳を叫んだ。灯台から見ていた幹部スタッフも大声を上げた。騒ぎを聞き付けて、港に市民が集まってきた。魔王の旗を持つ坊やを見て、市民も事情を察した。
「坊やが魔王を討ち取ったぞ!」
「勝ったどー!」
「万歳!千代浜万歳!」
人々は涙を流し、抱き合い、声が枯れるほど叫んだ。誰もが我を忘れて喜んだ。歓喜の渦の真っ只中に立つ坊やを、秋水は冷静に見つめた。
大好きな兄の表情は、今までに見た事がないものだった。彼の目は、感情をなくした虫の目とも、復讐に燃える黒い目とも、はい喜んでの感謝の目とも違っていた。強いて言えば、そう、あの魔王のような……




