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諸君、狂いたまえ   作者: カイザーソゼ
第8章 羽虫の河
70/136

8-6

 千代浜軍の長射程カノン砲十数門は、王国軍の砲兵部隊を退けた。

 最初、王国軍は強装薬で反撃の最大射程砲撃を連発した。景気良く打ち返していると、故障が頻発した。大砲に付着した土埃が高熱で溶けて張り付き、各部が動かなくなった。反動で足にヒビが入り、遂には折れた。砲身は磨耗して命中率が減った。事故も増えた。装填された砲弾が打つ前に爆発して、砲身は百合の花のように裂けた。

 王国軍の砲兵隊は後退した。壊れた大砲はそのまま放置された。大量のスクラップが並ぶ放棄陣地は、まるで大砲の墓場のようだった。

 大砲の打ち合いは千代浜軍に軍配が上がった。しかし砲弾を幾ら打ち込んでも、土地は占領出来ない。そして砲弾は棒立ちの人間には強いが、塹壕に篭もった相手には弱い。

 王国軍は力攻めから正攻法に切り替えた。今度の彼らは稲妻状のジグザグ塹壕を築いて、千代浜軍に接近してきた。王国軍は砲弾やガトリング砲が飛んでくると身を伏せて守り、止むと塹壕を掘り進めた。要所には大きな陣地を構築した。夜になると後方の要所陣地に下がり、朝になれば前線のジグザグ壕に出かけて作業を続けた。そしてまた新たな要所陣地を構築し、次はそこを拠点として前進を続けた。彼らは水路前までジグザグ塹壕を掘り進めた。

 ある夜、最前線で照明弾が打ち上がった。それを合図に、王国軍は塹壕から飛び出して、第三回総攻撃を開始した。

 王国軍は団体行動で水路を押し渡り、あちこちで地雷を踏み締めながら第一塹壕に迫ってきた。千代浜軍は頑強に抵抗して、敵を退けた。

 王国軍はジグザグ壕を使って増援を呼び寄せた。千代浜軍も鉄道とボートで新手を呼んだ。両軍は予備戦力を全力投入して、正面から潰し合った。

 これまで、主戦場は東だった。北は側面から艦隊砲撃が飛んでくる不利な戦場なので、王国軍はまともに攻めてこなかった。

 その北のジグザグ壕から、鬼庭率いる青服隊が飛び出してきた。彼らは身軽な恰好で十人一組の傘型陣形(矢じりのような三角形の小陣形)を作り、全速力で突っ込んできた。何割かの矢は弾幕に捕まって蒸発した。しかしそれ以上の数の矢が第一塹壕に突き刺さった。

 第一塹壕の千代浜軍は逃げ出した。青服隊は逃げる志願兵は捨ておいて、強化地点に殺到した。ガトリング砲が四方に発射されて、青服隊を打ち倒した。青服隊は倒されても倒されても強化地点に押し寄せて、遂には火炎瓶を投げ込み炎上させた。

 テリーは北の第二塹壕に篭もっていた。青服隊の戦いを見て、彼女は呟いた。


「これまでと違って、丁寧に進もうとしている。強い敵を最初に叩いて、弱い敵は後回し。敵が少しでも残っていると、前進しないでそちらに向かう。確実だけど、時間のかかる戦法」


 テリーは右手を振った。それを合図に、黒服の正規軍が第二塹壕から飛び出した。青服隊も第一塹壕から飛び出して、両隊は真っ向から激突した。王国最強の青服隊は、元はただの正規軍を銃剣突撃で粉砕した。黒服隊は敗走し、青服隊は追撃した。

 テリーは右手を回した。それを合図に、第二塹壕から新手の黒服隊が飛び出した。新手は突っ込んできた青服隊の左右を包囲した。一部は背後にまで回り込んだ。敗走中の黒服隊は反転して、敵の正面に立ち塞がった。青服隊は釣り野伏に引っ掛かって、四方を包囲された。しかし鬼庭の青服隊は包囲されても一歩も引かず、むしろ前よりも猛り狂って、四方から押し寄せる黒服隊に牙を剥いた。

 テリーは夜空を見上げて呟いた。


「敵の指揮官は魔王から、慎重な軍師に変わった。なら、今魔王はどこにいる?」

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