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千代浜市役所の一室で、坊やと提督は新聞の取材に答えていた。インタビュアーは「あけぼの」のウェイン記者。すきっ歯の実直そうな男である。彼は緊張していた。
「本当にいいんですか?最初のインタビューがあけぼので」
「一番頑張ってるからな。よく調べてる。マスコミは嘘ばっかりだが、あんたの所ならちゃんと報道してくれると思った」
「ありがとうございます。嬉しいなあ」
「水平党って言うと弁護士のイメージだが、本当は官公労や税理士団体が強いんだよな。役所や飲み屋の帳簿から大ネタがボロボロ出てくる」
「こないだの刑部局幹部のガールズバー通い、あれを最初に上げたのもウチです。千代浜日報さんに手柄を取られてしまいましたが。でも、このインタビューで仇を取れましたよ」
「俺はもう引退したから分からんが、最近日枝門町はどうなんだい?皆グッチャグチャに飲んでんだろ?魔王はおっかないもんな」
ウェインは一呼吸置いて、本題を切り出した。
「伯爵様に率直にお尋ねします。怒らないで聞いてください。
市民は今、不安な毎日を送っています。口では勇ましい事を言い、アンケートでも支持する、勝てるに丸を付けていますが、本音では、寄せ集めの素人軍隊で勝てるはずないと思っています。本当に勝てるんですか?」
A「決戦の日が雨上がりなら、僕の剣で虹を描いてみせるよ」
B「魔王?ふざけんな。もう相手じゃない」
C「いやいや秋水とか女剣士とか普通に強いし、ネビルだって猛将系でむさくるしい戦いをする。ていうか、アシュリーですら現場にいたら頼りがいがあって恰好いいよ。テリーなんか名将の風格ムンムンだし、ピアースは突っ込みが上手い」
沈んでいたウェインの顔が、一気にパッと明るくなった。
「それ絶対記事にします!やっぱり伯爵様は本当のヒーローだ!青い光の剣を手にした伯爵様は無敵です!千代浜市民の誇りです!絶対、絶対魔王に勝てます!」
「でかい事言えるだけの準備はしてるってこった。話せる範囲で話してやる」
「嬉しいなあ。せっかくだからこれも聞いていいですか?この噂で街のご婦人方がいきり立っています。伯爵様とアシュリーアーバインさんがお付き合いなさっていると」
「孫に手出したら殺すぞ?」
和気あいあいとした部屋が、一瞬でこの世の終わりのような空気になった。
「……あ、あの!じゃこれはどうです?伯爵様がテリーアーバイン将軍とお付き合い」
「殺すぞ?」




