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王都の中心部に、魔王の住む城があった。その本丸御殿は、赤坂迎賓館似の白亜の宮殿だった。
本丸御殿前の広場に、王国軍数万が集結して、歓声を上げていた。本丸御殿の二階バルコニーに、王子と大竹が立っていた。
王子はニコリともしなかった。
「結城、時間稼ぎも出来ないか。こうも簡単に崩れるとはな」
大竹が取り成した。
「驕り高ぶった猿は、その驕りが最大限に高まった時に討てばいい。追い込まれているのは奴らですよ」
王子は振り返った。烏天狗の黒武者と、黒鎧の兵士数十名が立っていた。
「敵は鬼の力を着実に物にしている。しかしこの黒鴉軍がいれば対抗出来ます。存分にお使いください」
王子は右手を上げた。軍は一瞬で静まり返った。
「北が我が国に攻めてくる!皆殺しにするぞ!」
王子の叫びに、軍は怒涛の歓声で応えた。王子は両手を広げて、その歓声を一身に浴びた。
大竹は振り返って、黒武者にヒラヒラと手を振った。黒武者は目を背けた。
魔王とヒーローの織り成す革命劇は、新たな局面を迎えようとしていた。
(続く)




