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······話が進まない······。

曜日とか一切考えていないので、「一週間が十日あるな~」とか「あれ、一週間って三日やっけ?」と思ってもスルーしてください!お願いします。

 人工ではない、柔らかい光に照らされた無残な姿の植物達。

 しかし、踏みにじられた日から2日経った為か、既に起き上がっている子もいる。

 この子達は本当に強い。花びらが散ってしまっても、葉がぐちゃぐちゃにされても。枯れないのだから。

 でも、やっぱり。そうでない子もいるのだ。学校側から要求されて育てている子や、私の実験の為に育てている子は、踏まれるとやがて枯れてしまう子が多い。

 実際に、高めの所にいる子達には茶色くなり始めている子がいる。

 まぁただ観察していても意味はない。

 一応犯人が花咲さんであるか確認するため、数ヵ所に設置された監視カメラを外す。

 これらは友人が私好みの形にしてくれている。一見ただの美しい飾りにしか見えないから、ここに来る人達にも気付かれない。

 ちなみに『友人』とは、あのビリ······ピリッとなマシーンやゴッキーBOX(勝手に命名した)を作ってくれた人だ。

 死角がないようにと複数作ってもらったカメラ。これらはすべて同じ時間帯を録画している。

 あの日の昼休みだ。

 花咲さんが温室の[管理者]がだれか知っている可能性があったから、二時間目が終わったらすぐにカメラの起動時間を設定しに来た。

 使用者が起動時間を設定するタイプのため、望む時間をすぐに見られるし、まぁまぁプライバシーを守ることも出来る。

 常に監視されるのは不愉快だからな。私たちなりに気を遣っているのだ。


 カチリ、カチャ、ガー······。


 先程まで時計の規則的な音しかなかった空間に、様々な音が溢れだす。

 機械を操作する音や、カメラから流れる人々の話し声。


「······見つけた」


 録画時間も残り3分を切った時。

 彼女が、入ってきた。

 彼女は入り口の扉を閉じると、植物を踏みにじり、手折り、ちぎってゆく。

 様々な角度から撮られたそれを、植物たちの処理をしながら眺める。

 彼女が出ていってテープが切れたら、彼女が入ってくるところまで巻き戻し、また流す。そんな無意味なことを繰り返しながら、作業を終わらせていく。

 処理すべき植物は少なかったから、作業はすぐに完了した。

 枯れ始めていたものには、学校の授業などで扱う用にと去年から育てていたものもある。早いものはゴールデンウィーク前の授業で使う予定のはず。今から育てなおしても間に合わない。

 花をまとめて渡せばいいだけだから、店で買うか?だが店で一学年分は用意出来るだろうか。

 贈り物に使われる花でもないから、そもそも売られていない可能性も高い。

 入手は不可能ではないが、場合によっちゃ金がえらくかかってしまう。

 やっかいなことをしてくれたね、あのアホは。仕返しにこのビデオを花咲さんの顔にモザイクかけた状態で流しちゃおっかな?

 でもそれやって彼女が攻略対象に徹底的に嫌われたらつまんなくなりそうだよなぁ。

 やるんなら、ゲーム期間が終わってからかな?でもそのとき彼女が誰かを攻略して幸せになっていたら、それを壊すのはダメだね。せめて彼女がそれなりのことをしてからかな。そしたら花咲さんに、これを流すよと言ってみようかな。

 ······正直言って今すぐ椿先輩あたりにこの映像を見せたいぐらいには不機嫌なんだけども。

 今回は私もこうなる可能性があるのを分かっていて防がなかったのだから、彼女だけを責めてはいけないし、『酷い』と言って泣き喚いてもいけない。

 自分が楽しむ為の代償は、ある程度は受けとめるつもりだ。

 植物たちの処理をした後は、何もする気が起きなくてただただカメラの映像を眺め続ける。

 映像が終わっても何もせず椅子に座っていると、過去に録画したものが流れ始めた。


「消してなかったっけ」


 流れるのは温室の映像。これらのカメラ達はすべて温室専用なのだ。

 このカメラはひたすら入り口付近を撮っている。

 どうして撮っていたのだったか。

 しばらく眺めて、今見ているカメラ以外は画面が暗くなって節電モードに入っている事に気付く。

 どうやらこの時起動していたのはこの子だけのようだ。

 いったい、何の映像?

 日付を見る限り、二年前の映像だ。

 二年前、何があったのか、と記憶を遡る。すると、すぐに該当するものを見つけた。

 それと同時に扉がゆっくりと開く。映像の中と、ここの扉。

 映像の中で入ってきた人物を見る前に振り返ると、予想外の人物がそこにいた。


「······[管理者]、部屋に入る許可をいただけませんか」


 誰かがここを訪れる可能性は、常にある。ここの扉を、開けている限り。

 でも、まさか彼が来るとは思わなかった。


「断ります。今、ここに入る許可は与えません」

「······どうしても、駄目ですか······?」


 私に断られ、悲しそうに顔を歪める藤崎先生。

 何故、ここに来たのだろう。この前渡された仕事はすべて終わらせたし、園芸部としての仕事も問題ない。

 彼が来る理由が分からない。

 まさか、早速生徒会をやめさせられるのか?いやそれは早い。早すぎる。いくら私がふざけた態度・恰好だとしても、仕事をちゃんとこなしている以上、文句を言われる筋合いはない。


「······入室する理由は?」

「温室の様子を見るためです。あの日、花咲さんがあなたに向かって、『温室を楽しみにしておけ』と言っていたでしょう?」

「聞こえてたんですか?」

「ええ。あの人、あんな低い声も出せたんですね。驚きました」


 アニメに出てくるぶりっ子のような声しか知りませんでしたから、と妙なところで感心している先生を見て、小さく笑う。そういえば、半ば放心したまま話していたから、笑みを浮かべるのを忘れていた。

 面倒だからこのままでいいか。

 さっきはなんとなく断っただけだし、入りたいなら入ってもらおう。


「入室を許可します。もう鍵かけちゃって下さい。あまり他人と話す気分じゃないので」

「わかりました」


 そう頼めば、先生は慣れた手つきでやや複雑な鍵をかける。

 外から開閉する分には簡単なのだが、室内から開閉するのは若干難しい。

 とはいっても一見金属の輪が複雑そうに絡んでいるだけで、どの輪を引けばいいか、もしくは回せばいいのかさえ知っていればとても簡単なのだが。

 先生はドアを少し押したり引いたりして鍵が閉まっているのを確かめると、隣に座って私の頭を撫で始めた。

 いつものように丁寧にされるそれが心地良くて先生にもたれると、くすくすと笑う声がした。


「お疲れ様です、乙さん」

「頑張りました~」

「ふふ、本当にお疲れ様です。結構体力を使ったのではありませんか?」

「普段よりは使いました」

「時間はありますし、保健室で寝ますか?一時間ぐらいしたら起こしますよ」

「ん~、放課後にさっさと生徒会室行ってそこで寝ます。一時間したら教室に行かなきゃいけない時間になっちゃいますから」

「······尊くん達に注意しておかないといけませんね」

「何でですか?」

「乙さんは知らなくて良いことです」

「凄い気になるんですけど」

「ダメです。とりあえず、三十分だけでも寝ておきなさい。休み時間に教室で寝ていたら、誰に何されるかわからないですから。ああ、保健室も危険ですね。僕がいない間に誰かが来るかもしれません」

「あー、花咲さんやファンクラブの人ですか」

「女子生徒の方もそうですが、それ以上に男子生徒です」

「確かに、私が生徒会に入ったことに反対したのは女の子だけじゃないですもんね。寝込みを襲われて喧嘩になったら、極端な結末しかない」

「喧嘩ならまだいいんです!非力なあなたでも、勝つ可能性はありますから。でも、そうじゃなかったら······」

「藤崎先生は何を気にしてるんですか」

「力技となったら、あなたは何も出来ないでしょう!?それが心配なんです」

「えー······」


 先生がえらい過保護だ。

 力技って。そりゃ男に上に乗られて首を絞められたら助からないけどさぁ。

 普通そこまでするかなぁ?


「生徒会室ならおそらく大丈夫でしょう。役員以外勝手に入ってはいけませんから。じゃあ生徒会室で寝ますか?」

「いやそもそも寝ませんて。頑張って起きますよ」

「······そう、ですか?」

「はい」


 話していたら先生の手が自然と止まる。

 もうちょっと撫でて欲しかったが、仕方ない。今度椿先輩に頼んで撫でてもらおう。彼なら、頼めばいっぱい撫でてくれるだろう。


「藤崎先生、かなり早いですけど、もう生徒会室に行きませんか?」

「構いませんよ。行きましょう」

「ええ。······あ、言い忘れてたんですけど、二週間後に渡す予定だった花が、花咲さんに荒らされちゃいまして。人数分はなんとか集めますが、色を揃えられそうにないんです。すいません」

「いえ、悪いのはあの人ですから。昼休み、温室を封鎖する必要はありますか?」

「そうしてもらえると助かります。放送部あたりに協力してもらいましょう」

「······多分交換条件としてテレビ放送か何かに出ないといけませんよ」

「問題ありません。彼らが私に直接言ってきたら、応えるつもりでしたから」


 心配そうな表情の先生に、軽く笑いかける。

 あそこのテレビ放送といえば、ゲストに恥をかかせるものとして有名だ。恥をかかせるというか、嫌がらせをする、かな。

 不躾な質問や、台本にはなかった質問をする。その為、ゲストになる人が非常に少なく、テレビ放送は滅多に行われない。

 まれに『俺ならやり返せる』とか思った人がチャレンジするも、結局赤っ恥をかかされる。

 本来なら学校側がやめさせるべきなのだが、社会に出ればこんなのよりもっと残酷なものが云々と言いくるめられてしまったのだ。

 そんなテレビ放送に出るということは、恥をかかされることを覚悟するということだ。

 まぁこれまでの様子を見る限り、特に心配する必要はなさそうだがな。

 彼らはゲストに関しての情報をほとんど集めない。多少は集めるが、ゲストの成績が学年何位、とか成績の悪い科目は、とかそんなものだ。

 ゲストの交友関係や、過去に関してはほとんど探っていない。


「放送部のメンバーで、テレビ放送でよくゲストに質問をする方々の情報は、ちょっぴり集めておきましたから」


 彼らが普段探りを入れない、家族に対しての態度やこの学園以外での面白い噂など。

 勿論、私は別に今までのゲストの仇を取りたいなんて思ってないよ?

 でもね?


「ケンカ売られりゃ喜んで買います」


 彼らに使える情報を思い浮かべ、笑みを深める。

 生徒会室に行って仕事をある程度やったら、放送部のとこに行こうかな。



『先日、温室が荒らされたため、今日の昼休みは温室を使用禁止とさせていただきます。繰り返します──────』


 今は朝の8時25分。たいていの人がすでに登校している時間だ。

 放送部に許可をもらい、連絡をしている。


『今後このようなことが起こらないよう願っています。今回のようなことをした際の罰則については、『校則集』最新版の最終章、『温室を利用する際』をご覧くださいませ』


 連絡事項をすべて言い、右に座る放送部副部長に合図をする。

 音量をゼロまで下げる前にマイクの電源を切ってしまうと、電源を切るブツッという音が流れてしまうのだ。

 副部長が音量をゼロにしたのを確認してマイクの電源を落とす。

 ついでに機械全体の電源も落とす。

 こいつらが勝手にマイクやらなんやらの電源を入れて、オフの時の会話をゲストに内緒で流すゲス共だと知っているからな。

 案の定、私の行動を見た部長や副部長達が悔しそうに顔を歪める。

 が、部長の方はすぐにニコニコフェイスに戻した。


「お疲れ様、乙くん」

「いえ、こちらこそ急な頼みを聞いてくださりありがとうございます」

「気にしないでくれ。代わりに、テレビ放送に出てもらうからね」

「ふふ、あまりいじめないでくださいね?······おい何しとんねん」


 部長と話していると、一年生女子が機械の電源を入れようとしていた。

 私が手を払うとすぐに離れたが、別の男子生徒が電源を入れようとする。

 もう、面倒だねぇ。


「なっ、君、何を!」

「コンセントを抜いただけですよ。貴方達ってば、くだらねぇ事ばっかなさるんですもの」

「へ、へぇ、君、流されちゃ困ることを話すのかい?」

「場合によってはね。ってかそうでなくても必要のないことは流さない。流された側だけでなく、聞いてる側も不快に思うかもしれませんから」

「かもしれない、だろう?」

「だからなんですか。こんなこと常識ですよ、じょ・う・し・き。非常識が悪いとは言い切れませんが、もしこんな非常識なことをしていると親に知られたら、困るのはそちらではありませんか?」


 ふふ、図星のようだね。

 親に素晴らしい事ばかりする架空の自分を報告している部長からすれば、これがバレるのはまずいよねぇ?

 昔からやんちゃばかりして、中学生の時は本来なら通報されるレベルのセクハラまでしていた部長さん。

 そのたんびに父親は被害者に口止めをしてきたけど、中三の時に後輩の女の子に暴行しようと知り合いと計画を立てていたのがバレてさすがに父親もブチ切れた。

 そりゃそうだ。むしろ何故その時まで許していたのだ。

 まぁそんなこんなでこの学園に入れられた部長。もし模範生と呼べるような行動を取り続けなければ、寺に入れると脅されている。寺から帰った後も部長が本気で嫌がるような事が山ほど待ち構えているとの事。


「······俺を、脅す気か?」

「脅してませんやん。ただ、頼んでるだけですよ」


 連絡をしたから、ここには用はない。さっさと生徒会室に鞄を取りに行こう。

 ······ああそうだ。


「テレビ放送の時もそうですが」


 ちゃんとこれも言っておかなくては。


「あんまなめくさった真似しよったら······しばくで」


 物理的に、ではなく。


「手持ちのネタ、見せたります」


 精神的に。


「ふふ、ネタはまあまあ持ってますから。では、また」


 その時のことを考えてにこやかに言うと、全員が怯えた表情になる。

 にこやかに言ったはずなんだけどな?ま、いっか。

 私は気にすることなく、生徒会室へ向かった。




 目が覚めると、最初に、額に与えられた鋭い痛みと顔の中央を暖かな液体が伝う感触に気が付いた。

 ······何が、起こったんだ?

次の次の話で分かると思いますが、この作品はマルチENDタイプにする予定です。

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