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発表会

「いつだ?」

「今日の8時35分からです」

「······は?」


 おい、聞いてねぇぞ?

 ······いや、私の聞き間違いかもしれん。うん、きっとそうだ。『今日』じゃなくて『明日』とか言ってたんだ。


「今、何て言いました?」

「今日の8時35分からです」

「それは今から35分後という事でしょうか、藤崎先生?」

「そういう事ですね」

「······皆さん御存知でしたか?」


 他の人達に尋ねて見れば、全員首を横に振る。先生は誰にも言ってなかったようだ。


「藤崎、何故今までそれを俺達に言わなかった?」

「乙さんは勿論、僕達だって色々用意があるんですよ?」

「言い訳、は?」

「あ、あの、言い忘れてたーってのは」

「「冗談だよね、藤せんせー?」」

「······フォローの仕様がないっすねぇ」

「そんなぁ······」


 皆に笑顔で責め立てられた先生に助けを求められるも、コレは先生が悪いので苦笑しながら切り捨てる。

 でも決まった事は仕方無いか。


「ま、藤崎先生を責めんのは後回し。後でネチネチ言いましょ」

「今は時間もないしな。おい、風紀の方には連絡してんのか?俺達はともかく、乙がファンクラブの奴らに捕まったら面倒だ」

「椿くんには連絡しています。副委員長と書記には言ってませんがね」

「どうして?風紀の人皆に言った方が良いと思うんだけど······」

「風紀委員長だけじゃ女共を止めんの辛くない?ってかあの人も女に群がられる方でしょ」


 首を傾げる夏草兄弟に、会長達は苦い顔をする。

 そうか、夏草兄弟は風紀がどんな構成か知らないのか。


「風紀は委員長である椿さん以外は、委員長目当てで風紀になった、ただの役立たずなんですよ」

「聖くん、もう少し丁寧な言い方をしてください。彼女達も全く役に立たない訳ではありませんから」

「副会長も藤せんせーも酷くない!?」

「そんな事、ない。あいつらは、椿の邪魔ばかり、してるから」

「椿の仕事の方も、あの女共がいない方が良いものだ。何だかんだ言って、椿にやってもらうのは乙の護衛だからな。あの女共がついてきたら、厄介なだけだ」

「え、僕達の護衛はしてくれないの!?」

「日向、自分の身は自分で守りなさい。自分のファンクラブなんて簡単に操れるでしょう」

「副会長、それ無理!あいつら凄く僕達にに詰め寄ってくるんだよ!?」

「邪魔だという事を伝えれば、問題ないぞ」

「どうやって伝えるの!?」

「人によって違うな。俺は『目障りだ』と言うだけだ。聖もだろ?」

「そんなに乱雑じゃありません。『迷惑です』と言いますから」

「俺は、『邪魔』って、言うだけ」

「僕はそもそも滅多に囲まれませんね。囲まれても、あまり相手にしません」


 四人の答えを聞いて、絶句する夏草兄弟。意外に柳瀬さんと先生のやり方が酷い。

 私には彼等のような芸当が出来ないから、椿先輩が護衛してくれるんだろうなぁ。いやはや申し訳ない。


「そんな事より、藤崎、場所は講堂だな?」

「はい。僕らは横で控えていて、乙さんの挨拶が終われば先に講堂を出ます。まぁ椿くんの護衛は、念のためですね。正直言って、形だけです」

「いや形だけの為に椿先輩に迷惑かけんのやめましょうよ!」

「壇上に上がってきて乙さんを攻撃しようとする馬鹿がいるかもしれません。そういう場合、君をスカウトした僕らが出ていっては悪化する可能性が大きい。なので、全く関係のない椿くんに守ってもらうんです」

「······椿"先輩"?」


 私と先生が話していると、会長が不思議そうに呟く。どこか、おかしかったか?


「先生、僕達はいつ講堂に向かうんですか?」

「8時25分ぐらいですかね」

「はあ!?5分後じゃねぇか!藤崎お前何でそんな重要な事をっ」

「尊、今それを言っても仕方ありません。とりあえず荷物を置いて、講堂へ行きましょう」


 悟りを開いたかのような表情の副会長に皆何も言えず、ただ頷いて講堂に向かう。

 講堂には、既に椿先輩がいた。なんとなく先輩の元へと走る。

 近くまで走っていって気付いたが、先輩は妙にそわそわというか、イライラしている。

 普段の柔らかい雰囲気じゃないのだ。


「おはよーございます、椿先輩」

「あらおはよう、乙さん」


 声を掛ければ、ニッコリと笑う先輩。イライラは収まったようだが、声がいつもより僅かに低い。疲れているのかな。


「何かすいません、私の護衛なんかで早くに来てもらって」

「ううん、問題ないわ。やっぱり貴女だったのね、新しく生徒会に入る子」

「あれ、藤崎先生には護衛だけ言われたんですか?」

「ええ。新しく入る子を護衛してくれ、とだけ。誰か予想は出来てたけどね。······嫌だわ、貴女が生徒会に入ったら会う機会が減っちゃう」

「大丈夫ですよ。生徒会に入っても、花の手入れはサボりませんから、心配しないで下さいな」

「······そういう事じゃなくて」


 困ったように笑う先輩。

 ドタドタと複数の足音が聞こえる。まだまだ距離がある。そんなに突き放したつもりなかったんだけど。

 足音の方に顔を向けようとすると、先輩が呼び掛けてきたから、そちらに視線を戻す。


「花の手入れとかじゃなくって、単純に貴女と会いづらくなるのが嫌なの。もう部活には来づらくなるでしょう?」

「でも元々私、集会には顔を出しませんでしたよ?」

「それでも、会うことは出来たわ。これからは、生徒会の仕事を優先させるでしょう?」

「まぁ朝早くに手入れ終わらすことになりますね」

「ほら、ね。私は朝早くにここに来られない。だから貴女に会えなくなるでしょ?」

「······椿先輩、ハッキリ聞きますね。もう世間体とかそういうのなしで答えて下さい。椿先輩は、本当に私と会えなくなるのが嫌なだけなんですか?」


 私からの突然の質問に先輩は少しだけ目を見開くけど、すぐに口を開いた。


「そうよ」


 迷いなく放たれたその言葉に、今度は私が目を見開く。

 だけど、もしそうなら、と私は笑みを深める。


「なら、部活ある日は放課後、部室行きます。クラブ開始の4時45分までは、一緒に花でも弄りましょ。その時間になったら生徒会室行きますけど」

「本当に!?約束よ」

「はいはーい。気分で行くか行かないか決めますけど」

「え······。······まぁ会えないよりはマシよね」

「んじゃどぞー」


 先輩の方へ小指を出せば、意味を察したらしく先輩もすぐに小指を絡ませてくる。


 指切り拳万、嘘吐いたら針千本飲ーます。


「ゆーび切った」


 最後のフレーズとともに、絡めた指をほどく。

 振り返れば、会長達の姿が見えた。

 最初に副会長が到着すると同時に、8時25分になった事を告げるチャイムが鳴る。

 発表、無事に終わると良いな。その方が、楽だから。



 結論を言えば、何事もなく終わった。

 ──────なんて訳もなく。


「選挙をしていないっ先に選挙をしろっ」


 最初は一人が言い出した。あいつマジ勇者。

 そっから徐々に賛同者が増えてって、今大体20人くらいかな。それでも発表の邪魔になってるのは、この講堂がそういう作りだから。何かよく響くんだよねぇ、この講堂。

 私が注意していないのは、この状況を楽しんでいるから。試してみたい事があるし、良い機会だ。

 丁度叫び続けている生徒の一人が立ち上がろうとした。そのタイミングで、あるキャラクターのセリフを大音量で流す。

 あははっ、面白い反応期待してるよ?


「聞い『そんな装備で大丈夫か?』のか、って、は?」


 ······つまんね。そこは『大丈夫だ、問題ない』って叫ぶところだろ。このゲーム、こっちの世界にもあるぞ。それに、原作知らなくてもセリフは有名だろうが。

 しょうがない。黙らせるって目的は達成したし、充分かな。


「叫んでらした皆様、一度お静かに。······あ、前から二列目、最初に声を上げた七三分けの人、静かにして下さい。······あぁほらもう立たないで下さい。生徒指導の人呼びますよー」


 再び騒ごうとした人を注意して、静かにしてもらう。さっさと発表終わらせないと、一時間目食い込むからな。急がねば。


「皆さん、生徒手帳はお持ちですか?それの42ページ、だったかな。そこを開いて下さい。そこに生徒会の役員の決め方があるはずです。では、後はご自分でどうぞ。これからよろしくお願いします」


 最低限の情報を言って、強引に締め括る。

 舞台裏へ行けば、生徒会の人達や椿先輩がいた。皆それぞれの反応を示している。

 藤崎先生はニコニコしていて、椿先輩と日向、柳瀬さんは必死で笑いをこらえている。他の三人は絶句していた。


「お疲れ様、乙さん。凄かったわ。っ、くくっ」

「行こ、ふふっ、早く、もう少しで、終わる」

「あ、本当ですね。じゃぁ、帰りましょ」


 絶句していた人達に声を掛けると、全員ヨロヨロと歩き出す。

 そんな調子で大丈夫かー?これから授業だよー?

前回と合わせて一話の予定だったから、長さが······(汗

次回こそはっ、次回こそはっ······!

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