全部、全部。 後半 ~花咲 心視点~
駆け足になってしまった\(^o^)/
「ねぇアンタ。また談話室で話したいんだけど?」
四時間目になって、乙を誘う。こいつの目的を、ちゃんと知りたい。どうせイベントを壊すのが目的なんだろうけど。
「へぇそうなんだ。私行くとこあるからバイバイ」
「はぁ!?」
待ちなさいよ、という前にさっさと教室を出ていこうとする乙。
だけど出ていく直前で男に話しかけられて、立ち止まった。あいつは······あー、前の席の······そうだ、野見山だ。距離がありすぎて何を話しているのか分からない。
でも特別重要な話ではないみたいで、すぐに話は終わって乙は教室を出て行く。
もういいわ。昼休みに捕まえてやる。
「乙」
「なんだい?今食事中だから話しかけないで欲しいんだけど」
「知んないわよアンタの都合なんて」
「あっそ」
女子にしては多い量を静かに、でも素早く平らげていく。
昨日はこんなに多くなかったのだけど。ダイエットでもしてたのかしら?
「アンタそんなに食べるの?太るわよ?」
「いや放課後消費するから問題ない。それに食べる量を変えてもあんま体型変わらん。······痩せにくい体質なのかな」
「太りにくい体質でもあるんじゃない?ってかアンタでも体重気にすんのね」
「ん~?基本気にしないけど、急に体重増えたら今より筋肉つけないと体支えられなくなるかもじゃん」
「どんな支え方すんのよ」
「······さぁ?でも結構体を動かさなきゃいけない時あるから、気を付けるにこした事はないよ」
案外会話が続く。話題さえあれば、話せない事もないのね。
お弁当を食べ終わった乙が、小さく何かを呟く。合掌していたから、何を言ったのか想像は出来る。
意外と律儀なのね。
「······それ、母親が作ったの?」
「いや、私。一人で暮らしてるから。で、君の用事はなんだい?」
「唐突ね。まぁいいわ。私は、アンタの目的を聞きたいのよ。私の目的は昨日言ったわよね?アンタは私の邪魔が目的じゃないって言ったけど、アンタの行動は明らかに私を邪魔してるじゃない」
そう言って乙を睨めば、乙はきょとんとした後、ニッと笑った。いつもより、悪戯っぽい笑み。
「確かにね。私の行動の結果、君の邪魔をしているのは事実だ。でも別に邪魔したくて動いているんじゃない」
「嘘つかないでよっ!アンタは私を邪魔したいんでしょ!?」
「ないないそれはない」
「はぁ!?」
「何で君を邪魔するために動かなきゃなんないのさ」
「そんなの、皆を攻略したいからでしょ!?」
「いやいやそんなの興味ありませんて。もしそうだったら、君が来る前に終わらせてるよ」
「うるっさいわねっ」
アンタが邪魔してるんじゃなかったら、イベントが上手くいかない事の説明が出来ないわ!
アンタのせいに決まってんのよっ!
「うっわまたヒステリー始まった。もう面倒だしバイバイ」
「待ちなさいよっ」
「嫌だよ。君どうせ喚き散らすだけだろ?話しても無駄じゃん」
「あ、待てって言ってるでしょっ!?」
私から逃げて教室を出ていった乙を追うけれど、差は開いていくだけで追い付けない。
ああ、もう。
「ふざけんじゃないわよっ!!!」
全力であの女が逃げた方向に叫んで、私は教室へ向かった。
どうせ生徒会勧誘イベントは起きないし、放課後はさっさと帰りましょ。
一応イベント発生時間まで待ったけど、発生する気配がなかったから、学校を出て駅へと向かう。
駅までは歩いて10分。いつも通ってるこの道は、人通りが少ない。民家が近くになくて、幅の狭い川とよくわからない建物にはさまれている。私と同じ駅を使う人は少ないみたいで、とても静かだ。
「ねぇ」
急に後ろから肩を叩かれる。聞いたことのないダミ声に驚いて、勢いよく振り返る。
やっぱり、知らない人だ。
後ろにいたのはヘラヘラと笑う一人の男。そこまで年はいっていない。
「お、当たりだぁ。高校生?それとも、中学生?大学生かな?」
······ナンパね。
そういえば、『君想』の全ルート共通で、ナンパされるイベントがあったっけ。相手が強引で困っている所を、ランダムに選ばれた攻略対象が助けてくれる。
まだ全員と出会ってないし、発生するのが凄く早いけど······。いつ起こるかわからないラッキーイベントだから、今日起こっても不思議じゃないわ。
でもこれ、ホント運次第であまり起こらない。だからどんなセリフだったか、覚えてないのよね。
まぁ適当に純粋な女の子演じときゃいいかしら。
「えっと、高校生です。あの、あなたは?」
「高校生なんだ、可愛いねぇ~?俺は大学生。ライって呼んでよ。君の名前は?これからあそこの喫茶店行かない?」
こいつ、全然緊張してない。手慣れてるわね。
ってかいつ攻略対象が来るのよ?もう喫茶店に誘われたじゃない。
「あの、でも、そんな······」
「あ、親御さんの事を気にしてるの?大丈夫だよ、ちょっと喋るだけなんだし。ね?」
どうしよう。こいつ、私の手を握ってきやがる。手をほどこうにも、こいつの方が力が強くてほどけないし。攻略対象が現れそうにもない。
「ほら、行こ?」
「え、待って、どこに行くんですかっ」
「ん?ちょっと遠いけど、美味しいコーヒーのある喫茶店」
私の手を引っ張りながら、ニッコリ笑いかけてくる男。
まだ攻略対象は現れない。
「あの、いいです、帰りますっ」
「何で?行こう」
私が抵抗しても、男は気にせず歩を進める。
これでは攻略対象に助けてもらえない、と不安になった時。
急に高い声が聞こえてきた。
──────とーりゃんせぇとーりゃんせぇ。
「こーこはどーこの細道じゃぁ」
歌っているらしい。私も知っている歌。
高いけれど、安定していてよく通るその声は、徐々に近付いてくる。
「天神~さまの細道じゃぁ」
私の手を握っていた男の手が、離れたのがわかった。その直後すぐそばで鳴った鈍い音。
「ち~っととおしてくだしゃんせぇ」
そちらを向けば、何故か男はうつ伏せに倒れていて、その上に人が座っていた。この人物が歌っているようだ。
「御用のない者とおしゃせぬ~」
その人物は──────奇妙な姿をしていた。乙といい、この人物といい、最近は変人に出会ってばっかりだ。
「この子の七つのお祝いに~」
体型からして、女。暗い青色で薄手のコートを着ている。腰まである長く美しい黒髪は、平安時代の貴族みたいに、下の方でゆったりと一つに纏められている。
「御札を納めに参ります~」
そして、仮面。乙が着けていた物とは違って、顔全体を覆うタイプだから顔は全く見えない。
狐の顔。左右で色が変わっていて、向かって右側が白、左側が黒となっている。お祭りで手に入れたのだろうか。
「行きはよいよい帰りはこわい」
下敷きになっている男が、上に乗っている女に手を伸ばす。が、すぐに踏みつけられた。
痛そう。
「こわいながらもとーおーりゃんせー、とーりゃんせー」
曲の最後のフレーズと共に、少し離れた所から三人の人がこちらへ向かってくる。
その内の二人は、体がガッシリとした男。倒れている男をどこかへ運んでいった。
もう一人は、女のようだ。またもや仮面を付けている。仮面ブームなのかしら?
黒い仮面に大きな黒いくちばしが着いているから、おそらくカラスの仮面だろう。それだけじゃなくて、黒いパーカーに黒いズボンという姿だから、一瞬本当に大きなカラスが来たのかと思った。
狐の女がカラスの方に向かって歩いたのを見て、はっとする。いけない。現実逃避をしていたわ。
結局、狐の女によってイベントは邪魔されたって事よね?攻略対象が来る前にナンパ男は退治されちゃったんだから。そう思うと、腹が立ってきたわ。乙も狐耳のローブを着ていたし、きっとこの狐の女は乙に命令されて邪魔しに来たのね。
「ちょっと!アンタ達誰よ!?どうして私の邪魔をしたの!?」
私が問い詰めると、二人は顔を見合わせ、こちらを向いた。
「ミオ」
「ソラ」
それぞれ違う声で言われた二つの名前。声からして、『ミオ』の方が狐の女だろう。
よく見ると、カラス──────ソラはパーカーのフードを被っているのだが、そこから髪の毛が少しはみ出ている。上手く仕舞いきれなかったのね。
髪の色は、赤っぽい茶色、かしら。日本人じゃないのかも知れない。
「······あれは、そっちが思ってるようなヤツじゃねぇぞ?」
「は?」
急に話し出すソラ。普通に日本語を喋っている。
あれ、とはナンパ男の事ね。
ソラの言いたい事が理解できなくて聞き返したけど、二人はそのまま消えていってしまった。
近くの車に乗って行ってしまったのだ。
「······ワケわかんない」
一体、どういう意味よ?あの男は、イベント用の人間でしょ?
······ああそうよ、イベント。
攻略対象は、現れなかった。あのミオとかいう女のせいで。ミオも、どうせ乙に指示された決まってる。
だって、それ以外ありえないもの。
全部乙のせいじゃないと、ありえないのよ。こんなにも、イベントが失敗していくなんて。
そう、全部、全部。
──────乙のせいよ。
滅茶苦茶わかりづらくてすいません(汗
とりあえず、ヒロインちゃんの思考はブッ飛んでる、ということをご理解頂ければ大丈夫です。
後、定期テストが近いので、投稿を一時ストップさせて頂きます。
次の投稿は5/24の予定です。




