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PROTOCOL:ASH  作者: さば虎
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プロローグ

初作品になります。

なるべく読みやすく、と思っていますが読みづらかったらすみません……。

物語初期段階では、内容がだいぶ地味かもしれません。

素人なりに頭絞って書いてますが、ご指摘など頂けましたらありがたいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 ガッ――ドゴッ!

 

 拳が空気を裂いた。

 確かな手応えを感じたはずの一撃は、しかし容易く受け止められた。

 直後、視界が反転する。鋭い衝撃が顎を打ち抜き、身体が宙へ浮いた。


 ――ドサッ。


 土煙をあげ、青年は後方へ叩きつけられる。


「無駄だと言っているだろう……」


 淡々と、感情の欠片も滲ませずに呟いたのは、褐色の肌を持つ男だった。

 余裕の表情。その瞳には、戦いを楽しむ気配すらない。


 対する青年は、ごく普通の日本人だった。年の頃は二十前後。

 だがその全身はすでに限界を迎えている。

 呼吸は浅く、視界は赤く滲み、立っていることすら奇跡に近い。


 それでも――


 視界の端に、見慣れたログが浮かび上がる。


 >>経験値が条件を満たしました。

 >>ステージ4へ移行します。


(……今かよ)


 思わず、心中で毒づく。


 だが、躊躇はなかった。


(来たなら使うしかねぇだろ)


 それが、この世界で生き延びてきたやり方だった。


(レノス、アナライズ!)


 応じるように、ログが流れる。


 >>限定解除有効時間……残り約45秒

 >>状況分析中……

 >>……

 >>新規解放機能【APVC】検出

 >>APVC起動推奨

 >>起動しますか? はい/いいえ


「もう諦めろ」


 褐色の男が、無造作に距離を詰める。


 速い。


 青年はかろうじてその一撃を受け止め――


(なんだそれ!でも“はい”だ!)


 次の瞬間。


 “それ”は、頭ではなく本能に直接叩き込まれた。


 殻を壊す。


 触れたものを、そこから崩壊させるイメージ。


「――くっ、オラァッ!!」


 隙を縫い、拳を叩き込む。


 だが、完全にガードされる。


「しつこいな」


 冷ややかな声とともに、男の身体がしなやかに捻られた。


 次の瞬間――


 腹部に、凶悪な衝撃。


「がはっ――!」


 後ろ回し蹴り。内臓が軋み、青年の身体は再び宙を舞った。


 地面に叩きつけられる。


 褐色の男が、ゆっくりと歩み寄ってくる。

 今度こそ終わりだと告げる足取り。


 ――その時。


「……へっ」


 よろめきながらも立ち上がり、血を吐き捨てて笑った。


「こういうことだろ?」


 掲げた拳が――灰色に輝いていた。


 それを見た瞬間、男の目が細まる。


 ガードしたはずの箇所に、微かな“ノイズ”が走っていた。

 そこだけ、現実がわずかに歪んで見えた。


「……ほう」


 初めて、興味が宿る。


「なぜ、お前がそれを?」


「こっちが知りてぇよ!」


 叫びとともに、灰色の拳が振り抜かれる。


 だが。当たらない。


 男はわざと紙一重でそれをかわし、的確なカウンターを叩き込む。


「ぐはっ!」


 青年は膝をついた。


 男は追撃しなかった。

 代わりに、低く呟く。


「それは“神殺し”だな」


 わずかに愉悦を滲ませていた。


 そのままじっと、観察するように青年を見据え――

 不意に大きく後方へ跳んだ。


「お前……妙だな。ログの解析が必要か」


 その背後で、空間が裂ける。


 ざっくりと開いた“穴”。異次元へと通じる裂け目。


 ――こいつが現れた時と同じものだ。


「どういう……意味だ……っ」


 立ち上がろうとするが、脚が言うことを聞かない。

 視界が揺れる。激しい頭痛に意識が削れていく。


「ぐ……時間切れ、か……」


 全身から白い湯気が立ち昇っていた。


 男は答えない。

 それ以上の関心を示すことなく、そのまま裂け目の中へと消えていく。


 穴も、何事もなかったかのように閉じた。


「くそっ……あいつは……」


 言葉は最後まで続かなかった。


 意識が、闇へ沈んでいく。


 その中で――


 記憶が、断片的に浮かび上がる。


 白い部屋。


 椅子に座る自分。


『いきなりで済まないね』


 白衣の男が、穏やかに笑っていた。


『私はアルファ。科学者だよ』


 断片的な声。


『これは実験でね……リキャスリング……

 問題ない、100%戻せる……』


 意味は分からない。ただ、単語だけが残る。


『お詫びに、これを――』


 その瞬間。首筋に、鋭い衝撃。


『……はすぐ分かる……生存率――』


 直後、警報音。赤い光。


 何かが起きていた。


 だが――思い出せない。


 ただ一つ、奇妙に焼き付いているものがある。


 あの科学者の視線。

 ほんの一瞬だけ“横目で何かを確認した”こと。


 その違和感。


 そして。


 世界から切り取られる感覚。


 ――そうだ、あの後、俺は。


 風になったんだ。


 それが、すべての始まりだった。


 半年前の、あの空から。



 ーープロローグ 終ーー

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