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第2章 プロローグ

セーラは、今日も仕事をしています。AIを搭載した仲間のアシスタント4人と一緒に。

誰からも覗かれることも聴かれることもできない個室カフェという空間で、他の人には話せないゲームアプリを産み出すシステムの説明を、セーラはしてくれたのです。

「企業秘密だから絶対に他言無用よ。私はダイヤモンドプリンセスだから大金持ちなんだというイメージを保ちたいから、仕事とかバレちゃったらまずいでしょ」と、

その時に言ったセーラは、銀河鉄道の寝台車客室も、当然ながら完全個室を契約しました。

「超特急列車1台をチャーターしたほうが、より安全だけど、私と二人っきりじゃ、マルちゃんが退屈しちゃうでしょ」

3年間を一人で旅してきた僕は、銀河鉄道の旅で特に寂しい思いを感じることはなかったのですが、セーラの気持ちが嬉しすぎて、言われるまま、セーラの提案を受け入れることにしたのです。


初めに、セーラのアシスタント4人と言いましたが、彼らは、妖精のような小さな姿のバイオメトリック(生体)アンドロイドです。

チーフアシスタントのレッドは、統括責任者としてスケジュール管理と仕上げ作業を主に受け持ちます。

メインプログラマーのブルーは、コア部分のプログラミングを受け持ちます。

チェッカーのイエローは、システム全体のチェックを受け持ちます。

そして、オールラウンドプログラマー兼シェフ兼ドクターのホワイトが、チームの健康管理と、全体サポートをしながら、セーラのアイデアを形にしていきます。

セーラのイベントで使用されたアプリ「銀河まるごとクイズダービー」も、このセーラを中心としたチームが産み出したアプリだったのです。

(まだ、市販されていない実験中のシステムではありますが)


セーラが真剣に仕事をしている姿を見ながら、僕はというと、魚座ピスケスのラスカルのメンバーシップ限定ライブ配信にリスナーの一人として参加していました。

歌特化型アプリの一つ「ASPS(アストロシンガーズプラネットシステム)」は、歌特化型アプリの中でも特にシンガーの歌声と音質にこだわったアプリで、制作者が実はセーラだったのです。

もちろん、運営チームは配信のサーバ管理やマイナーチェンジアップデートや音源の制作を任されていますが、そのコアシステムを制作しているのが、この目の前のセーラチームであることを、個室カフェデートの時に明かされたのです。


「レッド、第3階層のデータにノイズが走ってるわ。ブルー、並列処理の負荷を5%下げて。ホワイト、……美味しいハーブティーをもう一杯、マルちゃんの分もね」


セーラさんの指先がホログラムの鍵盤を叩くたび、個室の空気そのものが歌い出すようなリズムを刻みます。

レッドが機敏にスケジュール表を更新し、ブルーが複雑なコードの海に飛び込み、イエローが鋭い目でエラーを摘出する。そしてホワイトが僕の前に、魚の形をした可愛いクッキーをそっと置いてくれました。


「……信じられないな」


僕はスマホの画面で熱唱するラスカルさんを見つめ、それから目の前でその『声の器』を創り上げているセーラさんを見ました。

画面の中の歌姫が、銀河中のリスナーを魅了するその透き通った高音。その一音一音に、セーラさんが設計した愛と数学が詰まっている。

すると、セーラさんがふと手を止めて、僕の方を振り返りました。


「驚いた? 私はね、ただ『あるもの』を楽しむより、『ないもの』を創り出す方が性に合ってるの。水瓶座は、未来から水を運んでくる星座だから」


彼女は少し誇らしげに笑うと、モニターに魚座のシンボル——二匹の魚がリボンで結ばれた姿——を映し出しました。


「さあ、もうすぐ双魚そうぎょ駅。ラスカルが待ってるわ。彼女、ASPSの最新アップデートのお礼に、水族館の『最深部』を貸し切りにしてくれるって。……マルちゃん、準備はいい?」


窓の外、真っ暗な宇宙の向こうから、深い群青色に輝く惑星が見えてきました。

それは、銀河中の「憧れ」と「メロディ」が溶け合う、水の星座の入り口。

僕の新しい旅の第2章が、今、静かに幕を開けようとしています。

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