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1話 プロローグにて

R15は弱めの残虐、暴力描画用として付けております。


ダンジョン……それは過去から現在に至るまで多くの冒険者達の命を奪ってきた場所である。


(……だからこそ、少しでも違和感や知らない情報があったら注意せねばならないのだ)


冒険者ギルドの指導員の言葉が今になって蘇る。


(……こんな事ならちゃんと教えに従えば良かった)


冷たい土に倒れたまま新米冒険者であるアインは何度目かになる後悔をしていた。

そんなアインの身体は血に染まり四肢はあり得ない方向を向いている。

既に身体の感覚はなくなっており彼がいくら頭で思っても手足を動かすことは出来なかった。


ただ唯一動く頭をザクザクと何かを突き刺すような不気味な音へ向けた。


向けた視線の先、そこでは緑色の小さな生き物……ゴブリンと呼ばれる魔物達が何かに群がり手にした刃物を幾度も振り下ろしているのが見える。


ゴブリン達が群がっているもの、それは先程まで彼の仲間達だった物だ。


振り下ろす度に先程から流れているザクザクという鈍い音が洞窟内に広がり……アインは耳を手で塞げずただ唇を噛んで耐えるしかなかった。


(ラーン、ミラク……)


幼馴染で一緒に冒険者となった2人。

ラーンは力も強くアインより強い戦士で、ミラクはしっかり者の魔術師だった。

今はもう二人揃って泣き叫ぶ事も呻く事もなくただただ静かに切り刻まれている。


ゴブリンは頭も悪く魔物の中では弱いと言われるが、その残虐性は非常に有名である。

生きている人間を苦しむ様にいたぶりながら切り刻んでいく。


早々に死んだミラクはまだ良かった方だろう。

それに比べラーンは酷いものだった。

ゴブリン達のいたぶりにより、最初上げていた怒声や悪態が徐々に叫び声や悲鳴に変わっていき、そして『殺してくれ』『痛いのはもう嫌だ』と言った懇願や啜り泣きへと変わっていった。


長い長い間聞こえていた彼の声……それも先ほどから静かになっており、今はゴブリン達の興奮した声と肉を刻む音だけが聞こえてくる。



(2人は死んだ。 次は僕の番だ……)


身体を動かすことが出来ず逃げる事も出来ない、このままラーンの様に切り刻まれるのだろう。

意識があるまま死ぬまでどれくらい苦しむことになるのか……震えはずっと止まらず感覚がないはずなのに股間が生暖かくなったのを感じる。


(どうしてこんな事に……僕達はただ大蝙蝠《ビッグバット》の討伐に来たはずなのに)


初めての冒険者ギルドでの依頼(クエスト)

もちろん駆け出しの僕達にあった適正のものを受けた。

それが『畑を荒らす大蝙蝠討伐』だった。


村の近くの洞窟に住み着いた大蝙蝠を討伐するだけだったが、実際洞窟にいたのは数体のゴブリン達だった。


依頼された内容と変化があった場合、特に新人はその情報を持ち帰り冒険者ギルドに報告するべし。

そう言われていた。


しかし冒険者ギルドで戦闘訓練も受けていたこともあり、試しにゴブリン数体と戦ってみたらアッサリと倒せた。


初めての実戦で高揚もあったのかもしれない。

僕達ならゴブリン程度いくらでも倒せると踏んで、洞窟に逃げた残りを追って僕達も洞窟へと飛び込んだ……それが間違いだったと気付けずに。


洞窟内に入った僕達はまるで待ち構えたようにゴブリン達に包囲された。


全方位から押し寄せるゴブリン達に分断され僕達は揉みくちゃにされるように倒された。

そして今、いたぶられながら殺されていく運命へと変わった。

僕ももうすぐ死ぬだろう。


(せめて腕が動けば自分で……)


再度身体に力を込めるがやはり動くことはなく、逆に力を込めた事で激痛が巡った!


「っ!?」


思わず上げた呻き声にゴブリン達が一斉に顔を上げる。

ギョロリとした赤一色の大きな目がこちらに向けられた。


(ああ、遂に僕の番なんだ……)


ゴブリン達がこちらに歩み寄る。

手にした武器からは血が滴り地面に赤い点を付けてゆく。


覚悟を決めた僕だったが……そこで初めて気づいた。


(あれ? ゴブリン達僕を見ていない……何を?)


こちらに近寄るゴブリン達の顔、そして目線は僕の後ろへと注がれている。

そしてゴブリンのものではない女性の声が上から降ってきた。


「ちっ、遅かったか……お、でもコイツは」


そんな声と同時に頭にそっと手を置かれる。

手のひらで隠されあまり見えなかったが僕の側にしゃがみ込みこちらを窺っているのを感じた。


「まだ生きてるな? よし、ちょっと待ってろ。 今コイツらを片付けて助けてやる」


女性は立ち上がるとゴブリン達に向かいゆっくり歩き出す。

そんな女性をゴブリン達が半円状に囲み始めた。


「…………」


(気をつけて!)そう言いたかったが声が出ない。

それどころか急に意識が薄れ始めた。


それは女性の存在の為だろうか?

心配ではあったが、それよりも彼女なら大丈夫と思える安心感。

それにより今まで張り詰めていた緊張の糸が切れたようだった。


必死に目を開けようとしたアインだがどんどん意識が薄れていく。

そうして気絶する前に見たものは長い金髪と修道服に身を包んだ後ろ姿だった。



読んで頂きありがとうございました。


私自身久しぶりの投稿となり、また稚拙や拙い表現などもあったと思いますが、皆様に伝わって楽しんで下さればと思っております。


書くペースは早くはありませんが、今回も完結出来るよう進めて参ります。


宜しくお願いいたします。

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