ガンガンくるやつ
早朝、森の中で二日酔いと共に目覚める。
「頭、痛てぇ……」
起き上がろうとしたが、身体がつらい。全身筋肉痛だ。昨日の記憶は――ヴァノミアを食ったのは覚えているが……ダメだ、断片的な記憶があるだけだ。
なんで、俺は裸踊りなんかを披露したんだ? 腹が揺れる途切れた記憶が脳裏を過ぎり羞恥にかられる。
ため息を吐きながら、大人しく朝日が昇るのを上向きで眺めた。
ヴァノミアの花……毒ではないが、摂取すると酒に酔った状態になるようだ。失敗したな。
ヤドがぐったりした声で言う。
「アルス……生きてるか?」
「ああ、全身筋肉痛で動かないけど……生きてはいる」
「何があったんだ?」
「たぶん、ヴァノミアのせいで酔っぱらったんだよ。要するに二日酔いだ」
「ああ……もう、ヴァノミアは食わねぇ……」
少量だったら気持ちよく酔えるのか? いや――今は、パイナップルのことを考えるだけでも気持ち悪い。
しばらく無言の時間が続き。身体も少し楽になったころにヤドが俺の腹に登り不満気に言う。
「俺に大量のリポポネス草が生えてんだが。これはお前の仕業か?」
ヤドの殻は、まるでグラスヘッドのように大量のリポポネス草で覆いつくされていた。
ヤドの情けない姿に、全身で笑う。
「やめろって、笑うと頭が痛くなるだろ!」
「元はお前のせいだろ!」
「こいつら全然取れないんだが、取ろうとすれば逃げやがる!」
「取ってやるから、ジッとしろって」
笑いながら、ヤドの身体からリポポネス草を取る。
ヤドは仏頂面をしていたが、急に真顔になり声を抑える。
「アルス……あれ、もう一匹いたのかよ」
「は?」
急いで起き上がり、目を見開く。そこには、以前のやつよりも大きなヴァノミアの花がいた。二匹目がいたのか!
俺たちに向かってヴァノミアの花の蔓が何十本と迫り、もう終わりだと目を強く閉じた。ヴァノミアの蔓に身体が絡むと、頬をそっと撫でられた。
「へ?」
蔓を引き、何もせずに立っているヴァノミアを訝しげに観察する。どういうことだ?
「攻撃してこないのか?」
ヤドも困惑した表情でヴァノミアを見つめる。
恐る恐る触れると、ヴァノミアの蔓に優しく触れ返された。
「あ……これ、俺の種で作られた奴だ」
どうやら、俺は酔っぱらってヴァノミアの花の種を生成して成長させたらしい。酔っぱらいの思考ヤバいな。俺、酔っぱらってやらかすこと多いな……実際、前世は酔っぱらって死んでしまったしな。
「俺も、もう……ヴァノミアは食わねぇ」