食えるか食えないか
新しく解放された潜在能力は種生成か……。
「ヤド、新しく種生成が使えるようになった」
「それは、めでたいな。どんな能力なんだ?」
種生成を調べると、今まで植物記憶した種が並んでいた。
【ヴァノミアの大食い花(雌)の種】
【ヴァノミアの大食い花(雄)の種】
【リポポネス草の種】
「文字通りだが……植物記憶した植物の種を生成できるようだ」
「どれか出せるか?」
ヴァノミアの大食い花は避けるとして、リポポネス草の種に気持ちを集中させる。すると、ポンッという音と共に手元に小さな種が出た。
本当に種が出たな……しかし、小さな種だな。
植物操作を使い、種を成長させると立派なリポポネス草が手の平の上に咲いた。
ヤドのリポポネス草を見せながら尋ねる。
「これ、根っこからの栄養とかどうなっているんだろうな?」
「魔力だろ」
「そうなのか?」
「そうだと考えるのが普通だろう」
こちらの世界では普通かもしれないが、俺にとっては不思議な現象なのだ。
リポポネス草に咲いた小さな花を触れると、リポポネス草が俺の手に触れた。
「え? ヤ、ヤド。見たか、今の!」
「ああ……触り返してきたように見えたな」
まさか、意志があるのか? 植物にも気持ちがあると、何かの植物研究家が言っていたが……もう一度、リポポネス草の花に触れてみる。するとスリスリと草部分を俺の指を擦り付けた。
興奮しながらヤドに見せる。
「す、凄くないか。意志を持っていんだって、この草」
「しかも、アルスに相当好意があるようだな」
ヤドがリポポネス草に触れても無反応だった。
「もしかして、俺が操らなくても動けるのか?」
リポポネス草に好きなように動いてみろ、と言えば、左右に揺れた。これは、かなりの能力なのではないか? 後であれこれ試してみる楽しみができた。
リポポネス草を頭の上に置き、辺りの惨状を眺めた。
「このヴァノミアの花の死骸をどうするかな……」
「……食うか?」
「ええ。食えんのか?」
「……食えないことはないんじゃないか?」
アロエやサボテンは確かに食えるが……植物記憶には、ヴァノミアが毒を持っているとは書いていなかった。食えるのか……?
本体のサボテンを切って匂いを嗅いでみる。臭いは無臭に近い。一口、口に入れ咀嚼する。
コリコリした食感に酸味がある。強いて言うならば、海藻よりのナタデココだな。
ヤドが興味津々に尋ねる。
「どうだ? 食えそうか?」
「食えないことはないな。食ってみるか」
「本当か? リポポネス草の時みたいにクソ不味かったら怒るぞ」
「気になるなら食えって」
ヤドは少し躊躇しながらも、ヴァノミアを口にする。
「美味くも不味くもないな」
「野菜ではないが、魚と貝以外にも食えるもんができたって感じだな」
残りのヴァノミアの花をマジックバッグにいれると、チャームのメーターが増えた。これは容量のメーターだったようだ。
ヤドが腹を擦りながら言う。
「なんか腹が減ってきたな」
「ヴァノミアを焼いてみるか」
ヤドは気乗りしなかったが、ヴァノミアを焼いて食うと焼きパイナップルの味がした。ヤドはうまいうまいと後半は、ハイテンションでヴァノミアを食いまくっていた。俺もなんだか楽しくなって、上半身を脱ぎ、裸踊りをした。
「もっと食うぞ!」
「おお!」
その晩はヴァノミアをこれでもかと食べたのは覚えているが、他の記憶は曖昧だった。




