仕掛け
それから一週間ほど、ヴァノミアの蔓の成長具合を警戒しながら、俺は大量の蔓を生成した。重要なことは奴の動きを静止することだ。動きさえ封じれば、あとは水攻めで枯らすだけだ。奴の蔓は相当な数だ。それならばこちらも相当数の蔓を準備するだけだ。
新しく発見した植物は、全て鑑定をして植物記憶に記録した。今では浜辺の植物は全て操れる。
俺の中で「操る」というのは、主に動きを操ることだと思っていたが……なんとなく試しに植物の成長加速を操ってみたら、簡単にできた。
十分前まで新芽だった立派に育ったリポポネス草を見ながら口角を上げる。植物魔法の可能性は凄いな。
リポポネスの成長を早送りするように操ると、すぐに萎れ、完全に枯れてしまった。
この力ならヴァノミアにも効くはずだ。問題は植物が大きくなるほど、操作が難しいということだった。リポポネス層は見なくとも操ることができるが、大きなヤシの木だとそれなりの集中を要する。
落ちて来たヤシの実をキャッチする。ヤシの木の成長を早め作った物だ。石で中身を確認するが、普通のヤシの実だ。
横から見ていたヤドが唸る。
「凄い能力だな。これだから魔法や能力は面白い」
「正直、使い手によって世の中変わるから怖いけどね」
「それは……確かにそうだな」
ヤドの今の間はなんだ? 何か心当たりがありそうだが……。
「もしかして前世でハゲを大量生産したのか?」
「……気に入らない奴だけだ……」
「恐ろしいな」
前世のヤドは多々の魔法や能力を持ち合わせていたという話だった。髪を操るというのもその能力の一つだった。俺も前世にそんな能力があれば、リア充を――いやいや、そんな酷いことは……でも、俺を馬車馬のように使っていた上司をお日様反射マックスにすることはできたな。禿げた元上司を想像して満足する。前世のことだが今でもあの日々の恨みはあるのだ。
ヤドと共にヴァノミアの蔓の進行具合を確認する。まだ、海には届いていないが……海鮮ビュッフェまであと一週間もないといったところだろう。
ため息をつき、肩にいるヤドと目を合わせる。
「これ以上は待てないな。明日、決行だ。だが、今日のうちにあの再生しただろう針を削いでおこう」
「そうだな」
「あと、奴をどれくらい操れるかも確認したい」
「無理はするなよ」
大きな植物なので、今の俺にヴァノミアを完全に操れるかは分からない。
身を潜めながらヴァノミアの近くまで向かう。前回と同様、雄を誘拐。怒り狂ったヴァノミアの本体が現れる。




