森
翌日、目覚めてすぐにルーレットをすれば梅干しが当たる。
「今日はついてるな」
朝食の魚に梅干しを付け、食べる。
ヤドが同じ梅干し付きの魚を食いながら尋ねる。
「筋肉痛はどうだ? 今日は森に行けそうか?」
「少しあるが、痛覚鈍化を掛ければ問題はない」
「そうか。じゃあ、行けるな」
この無人島で目覚めて一か月、ようやく島の森部分に足を踏み込む。
大きなヤシの木の影になっているからか、森の中は浜辺よりも涼しいと感じた。
森を進むと、写真で見たことのある南国っぽい植物が多かったが、初めて目にする紫や淡く光る植物もあった。
「ヤド、この光る花、なんの植物か分かるか?」
「いや、俺も初めて見る花だ」
よく分からない植物を触って手がかぶれるのも嫌なので、タオル越しに光る花を採取する。
摘んでも光り続けるのか……そんな光る花は、鶏のとさかにそっくりだった。とりあえず、粗品タオルに包んだままマジックバックに仕舞う。
その後、光る花以外にも紫の葉っぱを含む初めて見る植物を採取してマジックバッグに入れていった。今のところ野菜に似た植物はない。花や葉っぱが多い。食える植物があるといいんだがな。
ヤドが、辺りを見渡しながら唸る。
「うーん」
「どうした?」
「やっぱり動物はいないか……」
夜中に森からそういった類の声が聞こえなかったので、ある程度動物がいないことは予想していた。
ヤドはここ数日、口癖のように肉が食いたいと嘆いていた。なんだよ、肉食いたいって……ヤドカリのセリフじゃないだろ。
俺もできれば肉を食いたいが、哺乳類の動物を屠殺なんかしたことなんかない。それに運よく捕まえたとしても殺せるかわからない。そこまでして肉を食いたいとは今は考えていない。
「魚や貝で十分だろ」
「こうもっと歯ごたえがあるやつ食いたいんだよ」
「タコとかなら歯ごたえありそうだが、この辺いるのか?」
「タコ? なんだそれ」
「え? もしかしてタコいないのか?」
ヤドにタコの説明をすれば、驚く回答をされる。
「そりゃクラーケンのことだな」
「クラーケンってあの怪物の?」
「ああ、巨大な魔物だがアルスの元いた場所ではそんなもんを食うのか?」
「いや、俺が知っているのはもっと小さいので、そんな化け物じゃないんだが……」
それからヤドとタコの話をしながら森を進んだが、俺の頭はタコどころではなかった。
クラーケンって、なんだよ! 海のそんな化け物いんのかよ! 海に出てもそんなのと遭遇したら終わりだろ!
そんなことを考えていたから見落としてしまったのかもしれない。足元に音を立てずに迫っていた存在を。




