動けるデブ
その後一時間ねばり、魚を一匹釣ることができた。
夕食は自分の釣った魚を食う。
「自分で釣ったからか、今日の魚は一段と美味い」
「水中でも蔓が使えれば、貝も採れるぞ」
「まずは泳ぎを習得しないとな」
ヤドの水玉の中で水をかく練習は数日前から始めていた。毎日動いているおかげか、犬かきならできるようになった。脂肪のおかげで水には浮きやすい。焦ってジタバタしなければ、溺れることもない。クロールは分からないが、この調子なら平泳ぎはできそうだ。
それからまた十日が経った。
この無人島で目覚めてから丸一か月だ。
体重は二十日目から少し減り、筋力がアップしたような気がする。まだ百キロ越えだろうが、動けるデブになってきたような気がする。最近では、水中トレッドミルは卒業してウォーキングの時間を増やし、今はなんと走る練習をしている。
泳ぎは平泳ぎならできるようになったので、海で少し泳いでみた。まだ不安な面もあるが、アルスの身体が完全なるカナヅチでなくてよかった。
植物操作は、かなり上達した。今では釣りは五、六分もあれば一匹は釣れるようになった。あと、蔓を同時に操作することもできるようになった。
目覚めの一番にルーレットを念じると、選択肢は四つになっていた。
「おお、きたな!」
ルーレット四番目の選択肢は氷ブロックだった。
氷ブロック……?
「氷が当たるのか……?」
ヤドも首を傾げながらルーレットを眺めた。
とりあえず矢を投げると、氷ブロックに命中する。
『パッパラパー、氷ブロックが当たりました~』
ドスンと音を立て砂浜に長方形の氷ブロックが落ちてきた。
『また明日も遊んでね!』
氷を持ち上げてみる。二キロほどあるか? 普通に冷たいただの氷だ。
氷を砂浜に戻し、ヤドに尋ねる。
「これ、どうすればいいんだ?」
「涼むか?」
実はここ数日、スコールが止んでから天候が急激に暑くなっていた。
氷を綺麗にしてナイフで削り、ヤドの小さな水玉に入れ口を付ける。
「冷たくて美味い!」
「気持ちいいな」
ヤドが氷の入った、自分の水玉の中で泳ぎながら言う。
「それ、いいな」
残りの冷たい水で顔を洗う。日焼けした肌に効く。
アルスの肌は日焼けしても赤くなるだけで、色黒にはならなかった。おかげで気をつけておかないと真っ赤なトマトのように火傷をしてしまう。もう、すでに何度か火傷は経験済みだ。その点ではこの氷ブロックはありがたい。
「よし、じゃあ、走るぞ」
「掛け声はいるか?」
「ああ、頼む」
肩に乗ったヤドの掛け声に呼吸を合わせ走る。
「いち、に いち、に」
「はぁ、はぁ、はぁ」
開始五分から息は荒いが、頑張って二十分ほど砂浜を走り倒れる。
ヤドが俺の顔を突きながら尋ねる。
「大丈夫か?」
「ああ、疲れただけだ。だが、これだけ走れるならいけるな、森」
「そうだな。早速明日行ってみるか」




