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不死身と愉快な仲間達  作者: 汚水
2/3

不死身は初めて勝利する

長い文章が書けない


陽の光にチクチクと当てられながら、俺は頑張っていた。それはもう死ぬほど頑張っていた。


なぜって抜けないのだ。こんな古ぼけた小さな墓石が。

全長およそ30センチ。本当に小さい。

どれだけ力を入れても抜けず、正攻法を諦めた俺は周りを素手で掘っていくことにした。なんか負けた気分だ畜生。

しかし掘ろうとした瞬間バチッと手が弾かれた。静電気と言うより手で叩かれたような感覚だ。

え、何この墓、嫌がってんの?

いやいや、まさか、墓が意志を持つわけがないだろう。そんなこと言ったら世界は怨霊で満ち溢れていることだろうよ。


ムキになって何回も地面に手を伸ばすが全て跳ね返される。しかも段々力が強くなっているのはなぜだ。

…これは最早最終手段を取るしかないだろう。墓石なぞに対してこんなことをしたくは無いが、背に腹は変えられない。


ちなみにこの時の俺は自分一人しかいないこの状況に置かれて心がフリーダムになっていた。


その場に膝を付く。



「俺に!!墓荒らしを!!させて下さい!!お願いします!!!」



それはもう素晴らしいまでの土下座であった。


人はおろか虫もいない為ギャラリーはいないが、見ている人がいれば誰もが惚れ惚れするであろう完璧なまでに美しい土下座である。

ただし、相手が墓石であることを考えるとどこからどう見てもただの基地外だった。


だが無機物に土下座した所で所詮は無機物、何も反応しない。

墓石と男の前にそよ風が流れる。


「くっ、俺の土下座が無駄に……」


と思ったその瞬間、


墓石は完璧過ぎる程に完璧な土下座を見て満足したのか____そもそも見えているのかすらわからないが____段々と崩れ自壊していった。


土下座が墓石に勝利した貴重な瞬間である。



墓石が無くなりぽっかりと空いた穴を覗き込む。

穴は大理石のようなもので形成されており、あんな古ぼけた墓石の真下にあったとは考えがたいほど無駄に綺麗だった。穴の中には真っ黒な箱が鎮座しており、取り出して蓋を開けると中から出てきたのは古びた手紙だった。


墓石に掘られていた名前が読めたことから何となく分かっていたが、文字は読めるらしい。

そこにはこう書かれていた。


【 今、この手記を読んでいる君は知らない世界に記憶が無いまま飛ばされてさぞ戸惑っているだろう。何せ()()()()()()、心情が手に取るように分かるよ。君を招いたのは他でもない俺だ、申し訳ないけど。

そう言えばこれを読んでいる君はどうやって墓石の試練を突破したのかな?彼女はクソみたいな性格をしているからなかなか通してはくれないはずだけれど。何か見下されるような無様な真似でもしてみたのかな、ははっ。】


ここまで読んで俺は言い様のない怒りが沸いてきた。

つまりアレだ、俺がこんな所にいるのは全てコイツのせいなのだ。そして俺が土下座したのもコイツのせいなのだ。コイツが俺という一言が引っ掛かるが、まあ無いだろう。俺はここまで糞を泥水で煮詰めたような性格はしていない。


【まあ、いいや。あ、ちなみに君のその体は吸血鬼だから1週間に1回位は血液を摂取してくれ。じゃなければ死ぬ。血液は魔物ものでも構わないよ。】


…は?吸血鬼?お伽噺だろう、それは。


自分の体を見る。少し痩せぎすなその体は特に不自然な所は見受けられなかった。ちなみに服は道着みたいな感じだ。

…ベットで寝る前にこんな服着てたっけ?と思うがその疑問は次の文で解決した。


【実を言うとね、君のその体は俺のものなんだよ。ちょっと不老不死に疲れちゃってね…血液の摂取をやめようと思うんだ。

だが恐らく、精神は死んでもその体は不滅だろうから、俺の最期の魔法をその体に掛けたんだ。

千年後、壁に綻びが生まれるであろうその時に、俺に近い魂魄を見繕ってその体に転生させる魔法を。

失敗するかもしれないし、成功しても君は俺が守ったこの世界を壊してしまうかもしれない。それでも、俺に近い魂魄というならば、きっと世_________】


えっ、ここで途切れんの?なんでなんでめっちゃ中途半端じゃん。

しかしよくよく見たら、一番下の端っこの方にグチュッとミミズがのたくったような字が書かれていた。


【クソ神には気を付けろ】


クソ神?仮にも神様をクソ呼ばわりするとはコイツは神に親でも殺されたのか?

いや、このメッセージがダイイングメッセージだとするとコイツはこの時神様に殺されたってことになるな。


…いやいや、神なぞいるわけが無いだろう。

俺は信じないぞ。…でも頭の片隅くらいには入れておいてやろう。一応最期の言葉だしな。


しかし、手紙を読んだところで頭の中のハテナは消え去らない。

まずなんだ、なんでコイツ自分の体にどこぞの誰かを転生させようとしたの?俺だったら絶対嫌だね、自分の体を誰かに使わせるなんて。

それほどの理由があるのかもしれないが今の俺には知ったことではない。


そして何よりコイツ、元の世界にいた俺を殺したんだろ?魂抜けちゃったら普通は死ぬよね?俺生きてたのに死体に魂移されちゃったってことだよね?

…記憶が無いとはいえ不快感が凄い。ある意味コイツ俺の仇じゃねぇか。

まあ、済んでしまったことを嘆いても仕方がないが…死人に何を言っても虚しいだけだ。


それよりもお腹が空いたな…何時間と歩き続け、墓石との格闘。空腹が天元突破しそうだ。


そんなことを思っていると俺をチリチリと焼いていた太陽が陰った。

吸血鬼の体とはいえ、太陽の下はキツイが出れない訳では無い。転生する前も何となく太陽が苦手だった気がするが。


急に影が差し、上を見上げる。


そこには、ここが完全に異世界であると理解せざるを得ないほど、通常ではありえない ” 空に浮かぶ島 ” が悠々と空を横断していた。




続くの…か…?

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