[0]プロローグ
「おうええぇぇ…うっ…」
気持ちわっる…死にそう、無理…。
俺は、仕事の帰りに上司に飲みに連れていかれ、泥酔していた。
「はいっはいっ飲んでっ飲んでっ」とあれよあれよという間にお猪口に日本酒をつがれてしまった。
視界がぐわんと歪むのを頭を抑えて、どうにか耐える。
「上坂くんは、もっと行動がおっさんくさいのを直せば、すぅぐに彼女だって出来るさァ!」
上司に言われた言葉がふと頭をよぎる。
うるせえ、俺だって高校時代はそこそこモテて…。
あれ、俺、バレンタインに母さん以外からチョコをもらったこと、…無いわ。
ガンガン痛む頭で、嫌な現実を思い出し、俺は道端にさらに吐きそうになったのを理性で止める。流石に道端に吐くのは、常識としてまた一大人としてどうかと思うからだ。
大通りを外れ自分の家へと足早に向かうが、心地悪い酔いのせいで全くに足が進まない。
…あんっっの、クソジジイ。覚えてろよ。
俺は、上司のバーコード頭を思い出す。
クッッソ、いつかその僅かに残った髪の毛を全部むしり取ってやるからな。
「ん?…なんじゃこりゃぁ…」
ふと顔を上げた俺は異変を感じ取る。
「…霧?」
自分が向かう先の道に霧のような霞がかかり始める。いつも通る道に急に現れた上、ここ数年霧などみたことなかった身としては違和感しかない。
しかも…。
ンー…、あんなところに家なんてあったっけ?
俺の視線の先には一軒の家。
普段あそこには…、あれ?何があったっけ?
自分の家の近所だというのに、どうしても俺は思い出せなかった。確かにあそこには家などなかったはずなのだ。
俺の知らないうちに建ったのだろうか。
まあ、いい。そんなことは、どうでもいい。
それよりも、だ。
「…変な家だな、おい」
遠くから見れば、普通の家なのだが、どうも浮世離れしているような感じがする。真っ赤な屋根にレンガの少し高級そうな家。だが、家の輪郭がぼんやりとしていて、はっきりとしない。まるで霧の中を霞んでいるような、そんな感じがした。
ふむ、輪郭がぼんやり、ねえ…。
「…俺、酔いすぎだろ」
自分に流石に呆れて、そうボソリと呟く。
そんなことあってたまるものか、何が浮世離れした家だ?
俺は意地になって、目を細めて近寄る、が、その変な霞みは取れそうになかった。
ドアの前に立つほどに近づいて、ふと気づく。
「…ここ、店か?」
ドアの前には、「OPEN」と書かれた木札がブランとかかっている。
横から見える窓からは暖かい光が漏れ、煙突からは煙と香ばしい匂いが立ち上る。
俺は何かに引かれるように、するりと中へ入っていった。
突発的に思いつき、書き始めた話なので、修正を何度も入れることになると思います。
読み直したら、この前と話やセリフが違う!とか、サブタイトルが違う!ってことなどがとても多いので、ご了承ください。
ゆっくり気が向いた時に更新していきます。
個性的なキャラが沢山出てくるので、是非読んでいただけると幸いです。