氷点火山 18
「あ……そうですよね、確かにノックさんが有利だって状況は変わってません、まだ勝ちの目は十分に……」
〈能力の解除を確認しました。それでは攻守を交代します。Turn4-1、開始〉
このターンで決着がつくかもしれない。その可能性が見えてから会場の空気は重い静寂へと一変した。応援したいという気持ちが消えたわけではない、薄れたのでもない。それよりも"この目に焼き付けたい"という気持ちが前にでてしまっているだけだ。この先が気になる、どうなるのか気になる、どちらが勝つのか、目をそらすわけにはいかない、瞬きもしたくない。自然と彼らは声援を送ることを忘れ、会場の中央をただ静かに見つめるようになった。
氷室は――やはり動かない。もし可能であるのなら彼はこの攻撃で3ポイントを取りたいところだ。もし氷室が3ポイントを手に入れ合計7ポイントまで到達した場合でも、ノックの攻撃が終わるまでは試合は続行される。原則としてお互いが同じ回数だけ攻撃・守備を行うことになっているため、先攻の氷室が攻撃を終了したとしても、ノックの攻撃フェーズは訪れる。攻守交代してひとつのターンだと明記しているように。
だから氷室は7ポイント目が欲しい、ノックの攻撃で大打撃判定を奪われる可能性は低くない……いや、ほぼ確実に決められると想定したほうがいい。もしノックが7ポイント目を手にした時に氷室が6ポイントないしそれ未満ならば彼の負けが決定してしまう。だが同点の7ポイントなら延長戦まで持ち込むことができる。そうなれば点差がなくなるという意味では次ターンからの条件は同じ、ここでキツくても3ポイントを手に入れる事が氷室に取って勝利を最も安定させる方法だ。逆に今大打撃しかとらず、守備時に防御を狙っても7ポイントまで到達できるが、ノックが大打撃を決めてきたあとにまた攻撃してくる保証はどこにもない。氷室が6ポイントの状態でノックが7ポイント目を手に入れたのなら、彼はそこで攻撃をやめるに決まっている。その時点で彼の勝利条件は整っているのだから。だから氷室は、この攻撃フェーズで少し無理をしてでも3ポイントを狙っていくべきだった。
実際、そうなった。氷室が動き出したのはターン開始後30秒だった。誰もが言葉を失う一撃、それは先程、氷室自身が1分という時間をほとんど使って繰り出した攻撃となんらかわり無かったからだ。一瞬の閃光を経て、身動きの取れなくなったノックが誰の目にも入ってくる。
「なるほどなァ……1ターン前の大技から仕込んできてたってことか。アレだけの技を出すには50秒以上必要だと思い込ませるために、氷室がノックから大打撃を取るには他の攻撃を全て犠牲にして、ただ一度の攻撃にすることでようやく手にできると思い込ませるために」
〈大打撃、氷室選手2ポイント。合計で6ポイントとなりました〉
これで王手。ノックの体から雪が消えていく。氷室がその能力だけを解除したのだろう。
「なんだ、そのまま追撃してポイントをとりにいかねェのか……? 今の流れなら大打撃をもう一度とれるかもしれなかったンによォ」




