氷点火山 16
〈能力の解除を確認しました。それでは攻守を交代します。Turn2-2、開始〉
2-2の展開も、1-2のリプレイだった。開始直後にノックが氷室から大打撃を奪い、今度はそこでノックの攻撃が完全に停止する。守備の氷室は相手を攻めるようなことはできない、攻撃をしかけられないなら盾をはる以外にできることもない。
〈Turn2終了。現在氷室選手が1ポイント、榎田選手が4ポイントで榎田選手のリードです〉
もはや試合は榎田陸のペースになっていた。この会場のほとんどの客が氷室の優勝を見に来たのだろうが、それはあくまで氷室が優勝するに決まっているという予想の元に成り立っていた興奮だ。しかし彼らは観戦者、彼らにとって盛り上がりのある試合を見れるのもまた、喜び以外にありえない。故にこの戦いが氷室の圧倒的な勝利でおさまる試合でなくとも彼らは昂ぶる。当然のことだ。
「頑張れェェェ!! 氷室ォォォォっ!!」
だから彼の背中を押す。応援する。彼がここで終わるとは思っていないから。
もっと、試合を盛り上げてくれると思っているから――。
そんな気持ちも、純粋なファンとしての期待だ。
〈能力の解除を確認しました。それでは攻守を交代します。Turn3-1、開始〉
だが、そんな彼らの期待は虚しく。
氷室はターン開始後、ただ立ち尽くすだけだった。
ノックは膝をかがめて力を抜く。ターン1から変わらない体勢だ、彼にとってのいつでも回避ができる状態なのだろう。だが氷室は動かない、指先ひとつすら動かさない。
「氷室さん、どうしてしまったのでしょうか……」
宮前だけでなく、会場の半数が彼を心配した。
「無理もないよな……ここまでの試合、氷室はほとんどストレート勝ちしてきたんだ。こんなリードを許したことなんてねえし、そりゃ……プレッシャーに押しつぶされてもおかしくねえよ」
彼の試合を見続けてきたのであろう誰かがそう言った。やはり氷室の勝利を期待していたのか、その声音は暗い。だが氷室が途中で諦めてしまうことを嫌厭しない態度は、彼が心から彼の応援者であることを思わせた。
ターン3はまもなく30秒を経過する。
「違う……アイツは諦めたんじゃねェ」
静かに、唸るように浩仁が吐き出した。
「アイツは諦めちゃいねェ、この大会で勝利するために必要なのは戦術なんだろ、だったらそんな直ぐに諦めるやつが決勝まで残れているわけがねーんだよ。なんでアイツが属素を"温存"し始めたって考えねぇンだ。どうせ攻撃しても避けられる、榎田の回避の仕組みが見抜けていないんだったら無闇に攻撃して属素を消費するほうがハイリスクだ。それでポイントを取れるならいい……ターン1・ターン2でわかったんだろ、命中でポイントを取るのは難しいって。だったら1ポイント取れてる防御に集中したほうが、まだ勝ちの目はある。そういうこったろ」
宮前達だけではなく、その周囲にいた観戦者が浩仁の方を振り返る。確かに浩仁の言っていることは単純かつ当を得ていた。要は勝てるところだけで勝負をするというわけだ、なにも自分が不利な状況でまで戦う必要はない。ターン3-1は既に40秒を経過している。しかし彼がこのターンに棒立ちでいるのは、勝つための立派な戦術なのだ。
「――じゃあ聞くけどさ、浩仁さん」
そこに、新たな声が加わる。
「氷室の髪は、どうして白く染まっているんだと思う?」
その少年――巡は氷室一人を凝視して続けた。
「あんまりランクAを舐めないほうがいいよ」
そして、彼らは閃光に目を奪われる。




