氷点火山 15
巡が恥ずかしそうに三人を見る。「え? いや、あたしもわかってないよ、まだ全然目が慣れてないっていうか、見破るどころじゃないっていうか……」そういった水瀬が巡と同じように2人に視線を向ける。
〈能力の解除を確認しました。それでは攻守を交代します。Turn2-1、開始〉
次ターン突入のアナウンス。再び攻撃権は氷室へと移った。先ほどは一度も命中を奪うことが出来なかったが、今回はどうだろうか。
髪を白くさせた氷室の周囲を再び冷気が舞う。ここまでは同じであった、しかし氷室が生み出した第二の武器は先の長棒を2つ合わせた十字型のものだった。氷室はそれを5つ作り出し、全て空中で高速回転させる。――ここまでくれば予想がつく、今度の攻撃は曲線的に攻めてくると。
「いいか、まず奴の動きを追わなくていい。そのかわり動く瞬間をよく見ておけ」
氷室が十字の能力を5つ同時に繰り出すと同時に浩仁は言った。予想通り大きく曲線を描きながらノックに迫っていく十字は5方向から立体的な攻撃を仕掛けた。ターン1の長棒の一点攻撃とは違ってスピードは落ちているが範囲は数倍以上だ。避けにくさは比にならない。
「――ッ」
だが、何故かノックはいとも簡単にその攻撃の隙間をくぐり抜けてしまう。決して広い隙間ではなかったはずだ。それなのにここぞというタイミングを的確に見定めたかのように、とても綺麗に氷室の射程から離脱している。
「やっぱ守備の時はそんなにスピード出さねぇか。でも、攻撃時と同じトリックは使ってるみたいだなァ」
「ターン1の守備時にも使ってたよお父さん、さり気なく気づかれないように。でも最後の10本同時射出を避けたところで確信した、"使ってる"って」
「使ってる……? もしかして、能力を?」
首を傾げる水瀬に宮前は頷く。
「俺が目で追えてないからかわかんないけど、避ける瞬間のアイツ、なんか"ブレ"なかった……?」
「あ……やっぱり見間違いじゃなかったんだ。あたしもメグルと同じ、そんな風にノッ君が見えてたんだケド……もしかして、ブレたっていうか、いきなり加速してるの?」
「わかってんじゃねェか。奴は炎の使い手だったよな。何らかの工夫をして、突然加速できるんだ。それを攻撃時には速攻に使い、守備時の今は被弾寸前まで氷室の射程圏内にとどまり、ギリギリのところで加速して圏外に離脱してやがる。単純に速さで避けるんじゃなくて相手のリズムまでも崩しにきてやがんだ」
「そっか、だからターン1の時はアレだけの手数がありながら当たらなかったんだ。ノックさんが上手く避けてるっていうのもあったんだろうけど、攻撃終了目前にまでなった氷室さんの照準は度重なるノックさんのムラがある動きでとても乱されていた。どこを狙えば当たるのかが、わからなくなりかけていた……」
「わかってる奴同士でキャッチボールすんなよ、俺にはさっぱりわからないし。確かに今のアイツならなんとか見失わずには済むけど。でもだめだ、俺も氷室と同じなんだと思う、動きが全然読めない」
それは攻撃手段は違ってもターン1のリプレイのようなものだった。氷室の攻撃はただ曲線を描くだけではなく、精密な能力の操作技術によって同じ十字が何度も彼を襲うようになっていた。一度足りとも同じ角度からの攻撃はなく、1つだけを避けようとすれば残りの全てが奇襲のように襲いかかる。それでもノックはその隙間をかいくぐり続けた。1度目は静まり返った会場だったが、今度は違う。徐々にざわつきを覚え始めていた。
「なんか、アイツやばくねぇか? 俺の勘違いじゃなければ大した能力使ってないよな。なのにポイントも上だし、今回の攻撃も全然あたらねえし……」「前の試合見たやついねーのかよ、データがないわけねぇだろ」「……俺、前の試合も見てたんだけど。見えないんだ、やっぱり。あの炎の使い手の動きが、全然見えない……」「まさか、このまま勝っちまうンじゃねェのか……?」
「恥ずかしいからさり気なく紛れ込まないでお父さん」
「はい」
〈一分経過。Turn2-1を終了します。お互いに能力を解除してください〉
「うわー、本当に避けきっちゃったよノッ君……」
「氷室のほうもそろそろ焦りはじめるだろうな」
「へ~、ってことはメグルでもお手上げなんだ?」
「Aランクの氷の使い手であの調子なんだぞ、俺にどうにかできるわけあるか」
(俺がどうにもできないのは能力以前に運動神経がわるいからなんだけど)




