氷点火山 14
見た目こそ迫力はなかったが、ノックの背後からの攻撃、氷室が完全に対応できていなかった点で判定は大打撃となったのだろう。
「ノッ君、いまワープした……?」
水瀬の言葉に、「いや……」と浩仁が言葉をつなげる。
「スピードは確かに速かった……だがワープとは程遠いモンだ」
「ですね。あの虚を突くような速攻に目が反応しきれず、結果氷室さんや他の方にはそのように見えてしまったのでしょう。流石に私も、"素"の状態じゃ見切れなかったと思います」
「素の状態って」
疑問を感じた水瀬が宮前の方を向くと、そこには瞳を碧く変色させた宮前がいた。
「ちょ、異能使ってるしっ。なんかずるいような羨ましいような……ていうかアヤの【もう一つの記憶】って目が良くなるわけじゃないでしょ? 身体能力が上がるんじゃなくて、あくまで記憶の引き出しなんだよね、なにか意味あるの?」
「相手の虚を突くような動きには、"こっち"でよく見てますから」
「よく見せてるからなァ」
「うわ~やっぱりずるいなぁ」
「大丈夫ですよ水瀬さん、あくまでノックさんのスピードは速いというレベルです。水瀬さんの運動神経なら直ぐに追いつけるようになりますから、目を離さないで見てみてください」
頬をふくらませる水瀬をなだめるように言う、事実校庭での一件で水瀬には並外れた運動神経が備わっているというのを理解していたし、ノックのスピードくらいになら順応できるはずだ。
(私の初手を初見で避けたんですし……)
〈一分経過。Turn1-2を終了します。お互いに能力を解除してください〉
「あれっ? うそ、話してるうちに1分経っちゃった!」
宮前や浩仁も同じような反応をする。目を逸らせばたちまち置いていかれる、選手にとってはただひたすらに時間が足りない。一同は改めてこの大会の特殊なルールを実感した。
〈Turn1終了。現在氷室選手が1ポイント、榎田選手が2ポイントで榎田選手のリードです〉
「ノッ君、あんな綺麗な速攻決めたのに追加点がないって……メグル、どういうこと?」
会話に参加していなかった巡ならと声をかけるが、眉根を寄せた彼からはなかなか言葉が返ってこない。
「そいつに聞いても見えちゃいねーだろ、聞くだけ無駄だ無駄」
「それは流石に言い過ぎでしょセンセー。……えと、巡、マジで見えてなかったりするの?」
「結局薗も疑ってんのかよ……確かに俺はアイツの動きは目で追いきれなかった。でもあの後の展開は目で追えなくても理解できるもんだったよ」
「と、いいますと?」
「放送聞いてなかったのか、氷室の方に1点入ってるだろ」
ほら。と、巡がスマホからリアルタイムで戦況がまとめられている特設サイトにアクセスして見せた。ノックの2点に対して、水瀬の気づいていないうちに氷室にも1ポイントが加点されている。
「防御したんだよ、あのあとの攻撃を全部。氷室は多分、俺と同じでアイツの動きを捉えきれていない。だから全方位を氷の盾で囲んだんだ。対してアイツは全方位に拡散された密度の低い盾すらも壊すことができなかった。仮にもAランクの創りあげた盾だしな」
「なるほど……つまりあの速攻は、盾を作られる前に叩くというちゃんとした戦術だったってわけだな? 盾を創られたら突破できないことを既に奴は理解してんだ」
「その通りです。Aランクは属素を練り上げるスピードも早い、それに防御状態になった氷の使い手を崩すのは困難。初撃以降もあの俊敏な動きで隙を突こうとしてたっぽいですが、結果的には手を出さないほうが点差は残ってくれましたね。――それで、こんどは俺に教えて下さいよ。アイツの動きのタネを」




