氷点火山 11
「えーっと、一応聞くけどさ。アヤ、この大会について少しでも調べた?」
「いえ……そんな、全く調べてないですよ。調べるような事があるとも思えなかったので……」
「あーうん。それは思い込みってやつだね~」
「じ、じゃあどういうことなのでしょうか??」
「我が娘よ、気持ちはよ~くわかるぞ」
隣で眉根を寄せている浩仁は、宮前と同じ疑問にとらわれているようだった。
「もしかしてだケド、浩仁センセーも知らないの?」
「大会っていうくらいだからな……てっきり筋肉比べかと」
「能力部大会って書いてあったよね」
「いやァいつ言おうか迷ってんだよ、筋力部と間違えてますよって」
「なんで自分が正解だと思い込めたの……」
暑いなか歩いたせいだろうか、今日に限ってなら見過ごすが……
この親子、もうダメかもわからない。
水瀬は頭を垂れそうなのを堪らえポケットからスマホを取り出した。ブラウザで能力部大会のHPにアクセスし、概要ページを開くと2人に見せつける。
「ここ、読んでみて」
2人の視線が集まったその画面には、いかにも体育会系といったデザインで大会の概要が説明されていた。
能力部大会とは……能力を操れるB階級以上の者たちが己の能力をいかに巧みに操るかを競う行事である。ただ属素の量が多いから勝てるわけではなく、強力な能力を使えるから決勝にいけるわけでもない。もちろんそれらの力は有利に働くであろう、それは間違いない。しかし、数字が大きいから勝てるとは限らない、それがこの大会の醍醐味である。
「その醍醐味を生み出すためのルールが以下のとおりである……ここから先はあたしが説明したほうが早いかな~」
スマホを引っ込めた水瀬が代わって説明を続ける。
「この大会のルールは簡単にポイント制なの。ある一定のポイント値に相手より先に到達すれば勝利、そのポイント獲得には攻守のターンを交互に用いて稼ぎ合う。攻撃の時には攻めるためだけに能力を使って、守備の時には守るためだけに能力を使う。それに逆らうとルール違反。大体の違反は相手にポイントを与えてしまうか、失格になるかだから要注意だね~」
「でもそれって、やっぱり能力値が高い人のほうが有利のように聞こえますが……」
「そうだね、確かに有利ではある……でもね、使えないんだよ」
「使えない……?」
「この大会は、相手に大怪我をさせてしまうと即失格ってルールがあるんだ、だから強い能力が使える人ほどそれを抑えないといけないの、力を調整して相手を出し抜くっていうのは、言うほど簡単じゃないと思うよ」
「相手を圧倒する力は、ポイントを容易く手に入れる力とは結びつかないってところか……ンで、その肝心のターン制ってのにも詳しく決まりはあンのか?」
「もちろん。むしろこのルールがなきゃノッ君もきっと決勝までこれなかったんじゃないかな~。まずターンについてだけど、1ターン1分、攻守交代でもう1ターンの計2分を1セットとして行われるんだぁ。そしてそのターン開始前に選手は能力を完全に解除――"落として"おかないといけないの。ターンが開始されてから、攻撃側は戦うための能力を、守備側は守るための能力を練り上げなくちゃいけない。これがランクの実力差を縮める一番大きな特徴かもね」
「えっ、どういうことですか? 互いに条件は同じなんですよね、だったらランク差はそのまま戦況を左右するのでは……」
「――だから有利なのには変わりないんだって」
そこで初めて、席についてから巡が口を開いた。
「薗が言いたいのは、あくまで圧倒的な力量差がなくなるってことだよ。互いが同時に能力を発動できる。しかもそれは1分ごとにリセットされるんだ、もしこのルールがなかったら属素の変換速度による能力の差がどんどん大きくなって、後半にいけばいくほどランクの低い方が不利になっていく――というよりも勝つことが不可能になる。このターン制っていうのはそれを防ぐためにあるんだ。属素の変換開始が同時なら、低ランクに方にもワンチャンあるってこと」




