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Attri-tY  作者: ゆきながれ
見つめるべきは、共通よりも個性であった
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氷点火山 7

「巡さん? どうしたんですかこんなところで」

「綾か。って、本当に榎田おばあちゃんのところ行ったんだね」

「はい。多分、ですが……仲良くなれそうな気がします」

以前榎田に肉を買いに行ったときは巡も同行していた。それを知っていたからこそ、宮前のその言葉は信じがたいことであり、しかしそれが真実ならとても喜ばしいものだ。もちろん、巡は宮前がそのような嘘をつく人間だと思っていない。

「そうか……それはよかった」

「はい、本当に良かったです。――ところで、それは?」

宮前は巡の持つ一枚の紙を見る。紙以外なにも持っていないところから、それだけをとりに下のポストまで降りてきたのだろうか。何か重要な書類なのだとしたら、迂闊に聞くべきではなかったかもしれないが。

「いや、ほらコレ」

そんな思いとは反面に、巡は紙を宮前のほうに差し出してきた。肉を抱えているので宮前は覗きこむように顔を近づける。

「能力部大会決勝の観戦チケット……? どうして能力部の書類が巡さんのお家に?」

「うん」

(うん?)

曖昧な返事をもらい反応に困る宮前。とにかく巡にわからないなら宮前にだってわからない。観戦チケットということは、その紙の差出人は巡に決勝戦を見てもらいたいということなのだろうか。

「差出人の名前とか、書いてないんですか?」

「どこにもないよ。無地の封筒にチケットが……一枚だけ」

「出場者の名前は書いてないんですか?」

「書いてあるよ」

「そのどちらかに見覚えは?」

「あるよ」

「え」

差出人が書いてなくて、出場者を知っているなら、その人からという線が濃厚なのではないか?巡ならそれくらい気づきそうなものだが……と宮前は不思議そうに彼を見つめる。

と……

「宮前。これいる?」

「はい?」

「チケット、あげよっか」

「な、なんでですか」

巡宛てに送られてきたのではないのか。そうだとしたらその知り合いとやらは巡に来てほしいに違いない。そこに宮前が入ってく必要は全く無いどころか、巡自身が出向かなくてはその人は残念に思うのでははなか?

「あの、行ってあげないんですか?」

「どちらかというと、行きたくない」

「どうしてです?」

「いやー、うまく言えないんだけどね、なんていうか、行きたくないんだよ」

その複雑な言い回しに宮前はますますわからなくなる。

「仲がよろしくない、とかですか?」

「そうだったらチケットなんて送ってこないよ」

「てことは、仲はよろしいんですね」

「う……ん」

何故そこで詰まるのか。こんな青筋を額に浮かべた巡は初めて見る。一体どんな人物が決勝戦に現れるのだろうか……。

(なんだか少し、気になってきたかも)

「ごめん、俺部屋にもどるわ。もしチケット欲しくなったら言ってね、直ぐあげるから、無料で、タダであげるからね」

チケットを雑にびらつかせながら去っていく巡。一体どれだけそのチケットを譲歩したいのか。

(でも、決勝進出するほどの食す者イーターってことだから……巡さんはもしかしてその人を恐れている? だから仲が悪いというわけではないけれど、あまり関わりたくない、とか。それにしても……巡さんのあんな顔初めて見た。気のせいじゃなかったら震えてた? 寒がることなんか無い巡さんが……? 一体誰なんだろう……お父さんなら分かるかな。…よし、聞いてみよっ)

そんな宮前の行動がなかろうと、巡とその仲間たちは新たな慌ただしい日常に巻き込まれる事になっただろう。

宮前はこれから、なんとも複雑で激しい、しかし新鮮な人間関係を初体験するのであった。


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