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Attri-tY  作者: ゆきながれ
Episode-1 彩られた日常と悲しみを繋げ
56/90

フレイム&トランス 8

「ッ!」

突然の威圧感に思わず腕で顔を覆ってしまう。物理的に何か飛んできたわけではない。が、強烈な熱気が彼を襲った。いや、彼を襲ったというよりもその熱気は空間全体に行き渡っている……?

まさか、これは――

「驚いてもらえたかな、コレが私の空間支配だよ」

炎の使い手フレイムイーターの、空間支配……?」

悠然と言い放った男の言葉が、唖然とした巡の脳内で曖昧に理解され、無意識に要約された形で口から零れる。

「おやおや、別に炎の使い手フレイムイーターが空間支配をできてもおかしくはないだろう? よもやそこれを氷の使い手アイスイーターだけの特権とでも思っていたのかね」

(やられた……)

男の言うとおりだ、全然あり得る話じゃないか。巡は下唇を噛んで頭をフル回転させた。どうする、どうしたらいい。いや、そんなことよりまずいちばんに理解しなくてはいけないことがある。それは現状での巡の勝ち目がゼロになったという事実……。

「さぁ見せてくれ、君の実力を」

「――ッ!?」

2メートル、もっと近い。目の前が真っ赤になった事を理解する間もなく激しい痛みと衝撃に声が漏れた、受け身もとれずに地面を転がり静止する。白い床に赤い線が幾つもできあがっていた。それが一撃の出来事。なんとか立ち上がると身体のいたるところから血が床に滴る、ガクガクとする脚で男の方に向き直ると、正面から巨大な炎弾が直撃した。吹き飛ぶというよりも熱された鈍器で床に叩きつけられた巡はこみ上げてきた血を吐き出すと、再度飛んできた炎弾に床から突き出させた氷柱を命中させ弾道をずらした。直後氷柱は溶けて液体となるが炎弾は巡には当たらず後ろの壁に衝突して動かなくなる。よろよろと立ち上がり血のついた口元を拭うと、一滴の血すら付着していない白衣をまとった男を睨みつけた。

「ずいぶん、ですね」

「私が負けたら、No.11イレヴンがいなくなってしまうからね」

「それほどまでに薗の才能が貴重なんですか」

「あたりまえだよ、絶対的なまでにNo.11イレヴン能力ティは力を持っているんだ。あの力はいつか必ず必要になる、だから手元で育てなくてはならない」

「彼女の意思は」

「もちろん、No.11イレヴンだってそれを望んだ」

「それはずっと前の話じゃないんですか」

「よく知っているね少年は……けれどそれは、友達としての認識でしかない。No.11イレヴンは友達など作っている場合じゃない、彼女は多くの命を救う存在なんだよ。だから去ってくれないか、そしてもうNo.11イレヴンに関わらないでくれたまえ」

「……なんだそれ」

最近にも、似たようなセリフを吐かれたな。

「あんた、そんなことして薗が可哀想だと思わないんですか。少なくとも薗はあんたのことを良い人だと思っていた時期はあったはずだ、そんな子の能力ティをひたすら強化するために炎の中に放り込んだりして、なんとも思わないんですか」

「……」

「黙るってことは、少なからずあんたにだって良心はあるはずだ。だったらなんでこんなこと――」

「……今更、一人の犠牲なんかで足を止めるわけにはいかない」

男は思いつめた表情の中にある決意に固まった瞳を巡に向けた。

「長話などしにきたのではないのだろう、さぁ決着をつけようじゃないか」

決着など、今の状況からしてしまえば直ぐにでも巡が敗北して決してしまう。男は白い部屋いっぱいに炎弾を創り出した。それは水瀬が見せたあの兵器的な攻撃、ただ属性が異なっているだけで破壊的であることにはなんら変わりのない攻撃だ。

「私も〈多角大量変換〉メニィ・レディは会得済みでね、"裏"でこの数の炎弾を創ることくらい造作も無いんだ」

そして、まるで吸い寄せられるように全方向の炎弾が一斉に巡へと襲いかかった。小さな隕石が降り注ぐように、いくつもの轟音が重なり空間を揺らしていく。よほど頑丈に作られているのか、白い床は凹んだだけで砂埃も立ち上がらない。

だから直ぐに巡が無事なことがわかった。

「君は、本当にNo.12トゥエルヴになるつもりはないのかい」

そこに立っていたのは、氷の盾を身の回りに張り巡らせた彼の姿。盾には溶ける気配や壊れる様子もなく確実に炎弾を防いでいたことが判る。そのプレート型をした盾を巡は全て横向きに変えて高速回転をさせ男へ飛ばす――しかし、巡のそばを離れた途端に形を失いただの液体へと変わり果ててしまう。

(……やっぱりダメか)

「なるほど、自分の周囲だけに強引な空間支配を生じさせたのか。その僅かな空間内にある能力ティだけは私の熱気にさらされることもなく強化される、よって炎弾を防げたというわけだ」

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