フレイム&トランス 2
「薗の家ってどっちなんだ?」
「えっとねー、学校の裏門の方向かな。ちょっと歩くと小さい山があるんだけど、それを超えて少し歩いた場所にあるの~」
「ってことは、俺の家とはかなり方向が違うな」
巡はいつも校門をくぐると真っ直ぐ歩いて行くところを今日は右折する、そのまま学校の周囲を回るようにもう一度右折して10分ほど歩いた。裏門や校内の南側に位置する窓からいつも見える小さな山の麓までたどりつくと、山頂へと続く道路と真新しいトンネルがある分かれ道の前で立ち止まる。
「トンネルなんて出来てたんだ」
巡はこちら方面に滅多にこないため、このトンネルの存在を知らなかった。
「以前通った時は、山頂までの道を利用して超えたと思うんだけど」
「トンネルはわりと最近出来たみたいだからね~、交通はすごく便利になったっぽいよ? あたしはいつもメグルの言ってる古いほうの道を使うんだけど」
「そうなのか」
「うん、遠回りだけどいいかな?」
「構わないよ」
ありがとっ。そう言ってにっこり笑った水瀬は山頂まで続く道へと歩いて行く。この道は正確にいうと山頂までの道というより、対極の麓までの道路だ。その途中に山頂、巡のいう工場までの道路があとから増設されている形で、ただ道なりに進んでいけばそんなことにも気づかずに反対側の麓へたどりつける。巡はその工場までの分かれ道であるT字路を発見し、工場があるはずの方を見た。いつかはここから小さくその施設が見えたのだが今は暗くて何も見えない。というか、ここまで来る道も相当暗かった。
「電灯も古いし、間隔も遠い。こんな暗い道をよく行き来できるね」
「いつもは日が昇ってるから全然気にならないんだけどね~、流石にちょっと怖いかな、あはは」
「人の気配もまるでないな。あそこの工場も、灯りがついていたなら多分見えたはずだし」
「あそこ、だいぶ前に使われなくなったみたいだよ? あたしが朝登校してる時、取り壊したいろんな部品や瓦礫を運ぶトラックが何度か通り過ぎていったのを見たんだ~」
「じゃあ、この道を利用する人ってもう」
「ほとんどいないだろうね~」
ここまで歩いてくるのに、確かに誰ともすれ違っていない。片道一車道の細い道路の左端をゆっくりと歩いて行く彼女の背中を見つめ、そっと巡は切り出すことにした。
「薗、少し聞いていいか」
まるで、そう聞かれるのを待っていたかのように彼女は立ち止まってこちらを向いた。歩きながらでは、きっと人混みに着くまでには話が終わらないとでも言いたげな、すなわち何か大事なことを巡に伝える覚悟を決めた表情。
「あたしの能力について、だよね」
「話してもらえるのか」
「隠すつもりは、最初はあったんだけどね」
水瀬が転落を防止するためのガードレールに腰をかけ足をぶらつかせる。
「隣、座ってもらってもいいかな」
巡がきいたのではなく、水瀬がそういった。巡が黙って横に腰をかけると水瀬がぴったり密着するよう座りなおしてきた。
「あたしの能力はね、どんな人でも守りぬくことができるって、小さいころ言われたんだ。他の食す者とは比べ物にならない伸び代があたしにはあって、鍛えればどんな化け物だって倒せるんだって」
「それは……凄いことだな、専門家に言われたのか?」
「うん、あたしの力はほぼ確信されていて、食す者の中でもトップクラスに入り込む存在とも言われた。……あたしはね、力の程度なんてよくわからないしそこまで関心はなかったんだけど、誰かを守れるっていうのが、凄く嬉しくて……最初に失ったときは、自分のためにしか動けなかったから……」




