共存部 11
水瀬薗、彼女は何者なのだろうか。いや女子高校生であることに間違いはないのだろうが、只者ではないことにも確信が持てている。
それは巡の頭のなかで並べられた言葉。手に入れる者である宮前が気づけなかったのは無理ないが、彼はあれから気になってしようがない。水瀬は金曜日の夜に一度のトライでボウルを水で満たすことに成功した。だから巡は次の段階である水をボウルよりもはるかに小さいコップへと移動させるよう指示したのだが……その数分後に彼女は疲弊により倒れたのは驚くに値しない。
問題としているのは幾度となく、一滴の溢れも許さずに移動を繰り返された彼女の水だった。
(あんな操作、どんな特例を考えたとしてもBになりたて少女ができる技じゃない)
つまり巡は水瀬にどんな思いを抱いているのかと言うと、異様、また奇怪、とにかく普通ではないというものだった。確かに能力を操れるようになって捕食者階級はBへとシフトするのは決まりに基づいている。しかし彼女は"操れ過ぎていた"。あれは明らかに慣れない能力を操作する者の様ではない。
(でもそう考えると彼女はもとから能力をかなり使い込めていたことになる)
しかしそれでは彼女の疲弊しやすい事に関して話が立たない、もし水瀬がBの中でも上位の水の使い手だったとしたら能力の使用頻度によって属素の量はある程度なくてはおかしいのだから。いったいどういうことなんだ。
(どういうことなんだ、どういう……)
「51番、失敗」
――。
巡は我に返った。考え事に集中しすぎていたらしい、今何か言われたような気がしたのだがよく聞こえなかった。とりあえず球体をどうにかしてしまおうと前に向き直って、明らかに水瀬がここに立っていなかったときには無かった氷塊が3つ転がっていた。
「おうふ」
「結果は失敗ですがB判定です、おめでとうございます」
「おうふ」
「あちらの扉からご退場願います」
「いえその。……わかりました」
やりなおしができるわけもなく体育館の出口へ向かう巡。水瀬はどうしているだろうか、"きっとまた最後の部屋は巨大な球体"だろうなんて思いつつ廊下に出た途端、後ろからまさに巨大なものでも落下したかのような音が聞こえて振り返った。
「……いや」
いくらなんでも、彼女ではないだろう。
そう自分に言い聞かせつつも彼女に対する怪訝がより大きなものへと変わり続けていく。巡の中ではもう水瀬薗はただの少女ではなくなっていた。
じきに彼だけでなく学校全体にその情報が行き届くことになる。能力審査の張り紙があった掲示板は結果報告に取り替えられ次の週には生徒がそこに集まった。一次審査突破者一覧、二次審査突破者一覧、そして会場審査突破者の場所に「水瀬薗」の名前が並びさらにその下――最終審査会場Aランク試験合格者にもその名前が印字されていた事実に、巡一同と能力部部員たちのなんとも形容しがたい表情がその紙一枚に向けられていた




