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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.001 { kai = new AnotherWorld(); }

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function.001(“天才プログラマー、異世界に降り立つ”);

――カタカタカタ

――カタカタカタカタ


薄暗いワンルームの部屋にキーボードを叩く音が響く。

机の上には飲みかけのマグカップと、昼に食べかけたパンの袋。

モニターの白い光が、青年の顔を青く照らしていた。


【お疲れ様です。

 ご依頼していただいたこの案件ですが、プログラミングとデバッグ完了しています。

 確認よろしくお願いいたします】


甲斐はチャットにそう書き込み、添付ファイルとともに送信する。

モニターの隅に小さく「送信完了」と表示されるのを見届けると、次の仕事に取り掛かり始めた。


――カチャカチャカチャカチャカチャカチャ

――カタッ


「ん……ここの処理は……この方が速いかな」


独り言を呟きながら、指が再びキーボードを走る。

その速さと正確さは、業界でも一目置かれるものだった――


しばらくすると、先ほどのチャットから返信がきた。


――ピロン


【ありがとう。

 納期がきつくてどうなるかと思ったけど、これでなんとかなりそうだ。

 速くて正確でいつも助かるよ。

 困った時の佐藤だな】


甲斐はコードを書く手を止めて、急いで返信をする。


【いえいえ。

 こちらこそ仕事回してもらってありがとうございます。

 職場で仕事出来なくなった僕のことを気にかけていただいて】


直ぐに送ったこともあり、相手の反応も早かった。


【お前のその腕を腐らせておくのはもったいないからな。

 なんてったって、お前の技術は最高だしな。

 自宅でその力が発揮できるなら、その方がお前にとっても良かったんだよ】


そこからしばらく仕事の手を休めて、チャットを続けた。


【僕なんてまだまだです。

 あの時は本当にすみませんでした。

 職場にうまくなじめなくて、それが嫌で飛び出してしまって……

 ただ、この形なら皆さんに迷惑をかけることもないかなと】


普段ならなかなか喋れない甲斐だが、チャットだとスラスラと言葉が紡がれる。


【迷惑だなんて、誰も思ってないよ。

 甲斐の技術でみんな助かっているんだから、気にするな。

 あぁ、あと毎回無茶させといてなんだけど、あまり仕事受けすぎるなよ。

 面白いからって次から次へと受けているようだけど……】


【ありがとうございます。

 でも、いろいろと作れて楽しいので。

 あっ、そうそうこの設計書で気になったところがあったので、直しておきました。

 コメントを付けておいたので後ほど確認してください】


返信と共に直した設計書を添付する。

送ったと同時にウインドウを切り替えると、またコードを書き進めていった。


――カタッ

――カチャカチャカチャカチャ

――カタカタ


再びキーボードを叩く音が部屋に響きわたる。

いつもは心地よく聞こえるキーボードの音も、今日は少し頭に響く。

少し疲れが溜まっているかもしれないと感じる甲斐だったが、

それでもコードを書く手を止めなかった。


――カチャカチャ

――カタッカタッ

――カタカタカタカタカタカタカタカタ


その後どのくらい時間がたったのだろう。

薄日が差し込んでいた窓の外も星空に変わっていた。


「ふぅ……そろそろ休憩しようかな……」


いつもの癖で首を一回転した後、椅子から立ち上がる。

その瞬間――

足から力が抜けて、身体の感覚が無くなる感じがした。

視界が歪み、無音が世界を包んだ。


「あれ……」


――ドスン


甲斐の目の前から光も音も、すべて吸い込まれるように消えていった。

そして、残ったのは完全な暗闇だった。


あれからしばらくの時間が経過したようだ――


甲斐が目覚めると、そこには古びたランプの光が差し込んできた。


『あれ?

 ここはどこだ?』


声を発しているつもりだが、うまく喋れない。

首もうまく動かない。

眼を動かし、周りを確認する。

そこには、知らない子供と大人がいた。


古木とお香のような匂いが漂う空間。

話している言葉も外国語のように聞こえる。


Wa-kevi! (わー、かわいい! )Turuha(本当に) mova!(動いてる!)


一人の女の子が手を差し出してきた。


『誰だ?

 止めろ』


手を振り払おうとするも、手も上手く動かない。


Fajiko(あなたの) hogap(弟よ)


『弟?

 僕には姉はいないはず……』


少し落ち着いてきた甲斐は周りの状況を確認し始めた。

見覚えのない場所、見覚えのない人たちがいる。

西洋風の造りの部屋に、古めかしいランプや机のデザイン。

周りにいる人たちの着ている服も今のものではない。


『あれ?

 僕は家で倒れたと思ったんだけど……』


すると、そばに居た女性が甲斐を軽々と抱きかかえた。


『大人の僕を軽々と……そんな訳ない……』


Hejake(あなたは) Kai so(カイよ)

 Gheopa(私の)seplo(可愛い)pleo(息子よ)


女性の満面の笑顔を見て、甲斐は何が起こったのかを悟った。


『あっ……これは……』


暖かい温もりが身体を包み込む。

懐かしさを感じるこの感触は、在りし日の母そのものだった。


暖かい腕の中で聞こえる母の声。

窓から流れる心地いい風。

花瓶に飾られた花々もなびき揺れる。

幸せを感じる日々が過ぎていく。


そして、少年は異世界で五度目の春を迎えていた――

本と共に過ごした日々は、まだ知らぬ世界への好奇心で満ちていた。

新作にお付き合いいただきありがとうございます。


技術はあるけれど、うまく居場所を見つけられなかった天才プログラマーのカイ。

そんな彼が、プログラムとは無縁の「魔術の世界」で、前世の知識をどう武器に変えていくのか?

そして、今度こそ自分の居場所を見つけることができるのか――。


カイの挑戦と成長を、ぜひ最後まで見守っていただけると嬉しいです。


【次回の更新について】

本日、夜20時頃に第2話を更新予定です。

また、明日からのGW期間中は、毎日数回更新で一気に第1章を公開していきます!


面白いと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援いただけますと、執筆の大きな励みになります。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
ルビについてなんですが、ルビを振られる側の分が長すぎる ルビ文が長すぎると起動しないみたいです、というかどちらもおそらく10文字以内にする必要がありそうです。
なかなか面白そうですね!続きも楽しみにしています!
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