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好み

「卓くんって細くない?」

「え?」

 こちとら、ジャージを忘れて寒そうにしているのに、久保さんはお気楽に聞いてきた。まぁ、バドミントンで屋内だったのが良かったか。

「ま、あんまり食べないし。筋トレとかもしてないし」

「へぇー」

 久保さんは下から上で僕を見てくる。

「なに……」

「いや、別に……」

 久保さんは赤いラケットを持つ。

 僕は青いラケットとシャトルを取ってショートサービスを打つ。

 パシーー

「……久保さんって、ムキムキなのが好きなの?」

「さぁね」

 パシーー

「それとも、背が高い人?」

 パシーー

 僕と久保さんでは、身長が少ししか変わっていない。

「どうでしょねぇ」

 バシーー

「おっと」

 慌てて後退して姿勢を落として、スマッシュのシャトルを打ちかえす。

 バシーー

 久保さんは、スマッシュを返す自信がなかったのか、テニスで言うロブを出した。

 バシーー

 久保さんの顔は途端に引き締まり、スマッシュを打つ。

 バシーー

 僕も負けじと打ち返す。

 バシバシーー

 バシバッシューー

 シュ バシーー

 次第に、足と腕に疲れが見え始めた。

 あと、数回ラリーをすれば決着はつくかもしれない。

 カンーー

 そんな音が響いた。弱々しくシャトルが飛ぶ。

 僕はすかさずシャトルに近づき、スマッシュを決める。 

 スパーン

 シャトルは床につき、終了を知らせる。

 久保さんは体育館の床に足を折って座り込む。

「あー、疲れた……」

 珍しく少し荒い息の久保さん。でも、負け惜しみみたいに言う。

「お姉ちゃんはね、中高でバドミントン部でインターハイにも行った」

「…………それで?」

「…………今度来なよ。お姉ちゃんにも話をつけるから」


            *


 土曜日ーー

「なるほど。で、私はこの子の相手ってわけね」

「お姉ちゃん。語弊がある」

「ん?」

 お姉さんは、真っ白なラケットを持っている。僕には黒いラケットを渡す。

「それ、私が中学校の時に使ってたラケット。借したげる。だからね、お互い手加減はなし」

「……はい」

 僕はショートサービスをした。

 お姉さんは普通に打つ。僕も、それに釣られて打ち返した時。

 耳の横を、ビュオンという音が通り過ぎる。

「え?」

 後ろには、シャトルが落ちていた。

「ハッハッハー。どうだ!インターハイ3位の久保若葉の実力はぁー。怖かったら大人しく私にジュースを奢ることだな」

「いや……」

 その時、僕の額のど真ん中にシャトルが当たる。

「ダハハハ。隠し球ならぬ、隠しシャトルだ。狙撃だってできるんだよ。スナイパー若葉と呼びたまえ」

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