誕生日
「拓くん。誕生日おめでとう」
「拓。おめっとさん」
今日、10月16日は僕の誕生日だ。
で、僕の誕生日を知ってる久保さんと、彼女から聞いた若葉さんを僕の家に招待した。
「まさか、歩果ちゃんにお姉さんがいたなんて……」
母が感嘆の声を漏らす。僕、久保さんにお姉さんがいること言ったのになあ……なんでもそつなくこなすのに、人のことは忘れちゃうのが母の悪いところ。
「久保若葉です。妹を通して彼のことは聞いていました」
すんごい真面目な声と顔をしてる。元は真面目だったらしいけど。
「私も、拓くんのことは弟のように思っています」
久保さんが「多分、本当」と耳打ちする。
「まぁ嬉しい」
母は若葉さんの嘘と本当を織り交ぜた話に丸め込まれている。
「若葉ちゃんは羨ましいわね。美人でスタイルもいいなんて」
「恐縮です。あぁ、そうだ。モデルをしている友人がいるのですが、お母様にも差し上げます」
若葉さんは机の下に置いてあった手提げカバンから,サイン色紙を取り出す。
「……それ、誰のサインですか?」
僕が聞く。
「前に言ったでしょ?絵優若葉」
「え、ずるい」
「安心して。君の分もあるから」
「わお。それが誕生日プレゼントですか?」
「いいや違う。なぁ歩果」
「うん」
なにか、サプライズでも考えてるのかな?でも、深く考えないようにしよう
今日は僕の誕生日のお食事会。
コロッケ、コーンスープその他諸々と、ボリュームの多い食事を食べ終えて、とどめにケーキ。
いくら食欲のある久保さんでもお腹を抑えていた。
「お腹いっぱい」
「ね」
向かいに座ってる僕と久保さん。なんか不思議で、顔を合わせて笑った。
母は母で、若葉さんと話が盛り上がっている。
「若い頃は仕事のできる人だったんですか。なるほど、拓くんがなんでもできるのも納得が行きますね」
「そうね、あの子なんでも出来て」
「そうですね。でも、そつなくはこなしてないですよ。何かしらの努力をしているのです。そうしないと、ただの出来る人ですからね」
「………拓」
「え、何」
いきなり母に話しかけられる。
「若葉ちゃんと私、すごい話が合う」
「シンパシーかな。お互い天才だし」
若葉さんはなんでも出来る天才。
母は仕事とか、それに関係することをこなす天才。
「おー、拓。私が天才かー……あ、いや」
思わず、若葉さんが素になった。
まぁ親が言葉遣いに厳しいわけでもないから,そのままでもいい気はしてた。
「……若葉さん。本当を出したらどうですか」
僕が言うと、若葉さんはため息をつく。
「はいよ、バースデーボーイ」
*
母はタバコを吸うために部屋を出た。僕達に配慮してくれたらしい。
「あ、拓くん。ゲーム持ってきたから一緒にやろうね」
「うん」
「私もやるからな」
「え,お姉ちゃんのコントローラーないけど?」
「私が持ってきてる」
若葉さんは絵優若葉のサインを入れていた手提げカバンから、ゲームのコントローラーを取り出す。
「じゃあ、マ○カやろ」
*
「もしもし」
森川羽巳は、電話をしながらゲームをしている息子とその友達を見ている。
『あなたからかけてくるのは久しぶりですね』
「敬語は冗談?」
『もちろんだよ。あぁ、拓の声がする。今日、誕生日だよね。プレゼントは送ったから。多分、明日くらいには届くと思うけど』
「それは分かってる。そろそろ、顔見せに来たら?」
『恨みっ節しか言わない気がする。遠回しな。君譲りなのか、頭の回転は速いから』
「もう、それほど恨まれてないんじゃないの?」
『んー。じゃあ、月末くらいにどうかな?』
「分かった」
すると、リビングから声がする。
「歩果!私にばかりコウラ投げるなよ!」
「お姉ちゃん。夜だから静かにね」
「2人とも。そんなにくっつかないでくれます?僕が集中できないんですけど」
羽巳はにこりと笑う。
「それに、今の拓はあの頃のことなんて帳消しにできるくらい、幸せなの」
『んー。来ない方がいいんじゃないかな?』
「ダメ。親権者命令でくることを命じます」
『なにその命令。まぁ、拓に伝えてくれるかな。誕生日おめでとうって』
「それはもちろん」
羽巳はリビングに戻ろうとするが,立ち止まる。
「…………もう少しだけ、3人だけにしますか」
投稿時間は8:20ですよね。
8×20=160
これをある数で割ると、10×16ですね




