#6 魔法と機械
「ルカさん、先程渡した資料を開いてください。地図があるはずです」
三人でしばらく歩いたあと、力_ベルーシュが立ち止まって指示をした。彼は開いた地図の一点を指さし、言葉を続ける。
「僕たちが今いるのがここ、A地点の仮拠点です。あと5分もすれば敵が転送されてくる予定なので、術解についてはジークの戦闘を見せながら解説します」
「転送?」
「はい。ここ数年の敵兵出現頻度から解析したと聞いています」
ルカとベルーシュは瓦礫の影に隠れて様子を窺う。ジークはそのまま待機しつつ指の骨を鳴らしていた。
「……来ましたね。地面に浮かぶ模様は見えますか?」
「青く光ってますね」
「あれが転送陣です。光ってからちょうど5秒後、敵兵が一斉に現れます。今回は機械兵でしたね」
彼の言葉通り、地面の模様の上に一斉に何かが現れた。機械兵と称されたそれらは確かに人工物のように見える。
「僕らが戦っている敵国は機械技術に秀でています。そのため戦争にも機械を利用する。機械が壊れても人は死にませんから都合がいいのでしょう」
「あれ、ジークさん1人で大丈夫なんですか?」
「大丈夫です。僕たちには魔法がありますから。資料の〝戦車〟のページを開いてください」
地図のページから捲り進めれば、大罪人を前から数えて七人目のところに〝戦車〟と題されたページがあった。
「コードネーム〝戦車〟、本名はジーク。罪状は今はどうでもいいから飛ばして。傾向という欄を見てください」
「傾向・火って書いてあります」
「僕たちの国では、人が使う魔法には幾つかの傾向があります。属性と言ったほうが分かりやすいですね。一番得意な魔法属性が傾向として登録されています」
顔を上げてジークを見れば、確かに辺り一面に火の粉が舞っている。
「熱そう」
「魔力があれば熱くないですよ。火傷もしません。その点で言えば、敵国の人間は魔力がないのでおそらく普通に熱いです」
「魔力って出身で決まるんですか?」
「正確には育つ土地の魔力量で決まります。僕らの国は魔力が豊富ですが、敵方はほぼ無いと言って良い。だから機械が発展してるんですよ」
本当に熱くないんですよねと念押しをしたルカは、再び資料に目を落とす。
「大罪人として政府と契約すると、特殊な魔法を使えるようになります」
「それって治安悪くなりませんか」
「魔法を使う代償として、発動するたびに生命活動に必要なものを持っていかれます」
「……大丈夫そうですね」
「特殊な魔法というのが術解です。一人につき一つですから、唯一無二とも言えますね。ジークの術解名は『断崖の狼』。戦闘に特化した魔法です」
「なんか格好いいですね」
「効果は覚醒、代償は疲労。ざっくり説明すると一時的に強くなるかわりに後で倍の疲労がくるという魔法です」
今は使ってませんね、とベルーシュが呟く。結構な数居た機械兵は、いつの間にか最後の一体まで破壊されていた。その一体も、瞬きをする間に破壊された。
「終わったか」
「上の見立てでは」
「数分様子見て問題なかったら引き上げよう」
「はい」
ルカも遅れて二人の下へ進む。手持ち無沙汰に資料を眺めていると、ジークの次のページにベルーシュのページがあった。術解の効果は知識、代償は集中と記されている。
「ベルーシュさん、集中が代償になるってどういう」
言葉が途切れる。ちょうどルカが立っている足元を中心として地面が光った。すぐにジークがルカを突き飛ばし、臨戦態勢に入る。幸いベルーシュが受け止めてくれたが、彼の視線は転送陣から動いていない。
「隠れて」
「は、はい」
ついさっきまで隠れていた瓦礫の影に戻る。恐る恐る顔を出すと、先程の転送陣との違いがあることに気付く。今回の転送陣は赤色で、サイズも一回り大きい。
「人間だな」
「その様ですね。本部に連絡を入れます」
ベルーシュが無線のスイッチを入れた。




