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彼岸の鏡像  作者: 秋映


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10/10

#9 罪人を統べる者

ルカの叫びに、リデルは言葉を続ける。


「そんな邂逅、少なくとも俺は絶対にごめんだな。最低でも心の準備がほしい」

「こいつからすればそうだろうな」


こいつ、と指さされたリデルを見れば、心なしか顔色を悪くしている。


「まあ俺も進んで会いたいとは思わないが。資料の49ページ見てみろ。審判の次な」


今日何度目かになる資料のページをめくる。先ほど見たばかりのページから進めば、また別の大罪人の詳細が書かれている。そこにある顔写真を見たルカは思わず声を大きくした。


「さっきの眼帯の人!」

「大罪人コードネーム〝世界〟。お前が会ったのは彼だな。術解の効果は俯瞰および移動……噛み砕いて言えば瞬間移動。お前がいきなりどこかに行ったのも、彼の術解の対象になったからだ」

「ちょっと理解が追いつかないんですけど」

「そうだろうな。まあ今みたいな作戦外の瞬間移動は滅多にないから安心しろ」

「でも、リデルさんはどうしてそんなに怖がってるんですか?」


〝世界〟の様子を振り返れば、それほど危険な人物とは思えない。問われたリデルは数秒考えたあと、静かに説明を始めた。


「理解が及ばないからだ」

「理解が?」

「あの人は頭がいい。俺だって並くらいの学力は持ってるし、戦力的な目で見てもそれほど落ちこぼれてないはずだ。でも俺と彼じゃ思考のステージが違う。チェスの駒は指し手の意向なんて分からないだろう?」


どこか自虐が入った笑い方をしながらリデルは言った。ルカが何も言えずに立ち尽くしていると、彼は「なんてな」と表情を和らげた。


「何より〝世界〟は俺たちのボスだからな。自分の命を握られているからっていうのが一番の理由だよ」

「大罪人の皆さんって物騒ですね」

「天才や秀才が力を持ったとき人を殺すのは簡単だ。もちろん普通は理性が働くが、そうじゃないから俺たちはここにいる」

「怖……」

「ははは」

「目が笑ってないですよ!」


ルカで遊んでいたリデルは、ふと思い出したようにジークを見た。


「そうだ、ベルーシュがお前を呼んでたの思い出した。演習場だってさ」

「おいそれを早く言えよ!」


聞くやいなやジークは勢いよく立ち上がってバタバタと去っていった。呆気にとられて見送ると、リデルは愉快そうに手を叩いた。


「あれでベルーシュの方が年下なの、ほんと面白いよな」

「そうなんですか?」

「ジークの方が4つ上。見えないよね?やっぱり普段の振る舞いが子供っぽいからだよな」

「4つ上!!?嘘だ!」

「本当なんだなこれが」

「ちなみにリデルさんはおいくつなんですか」

「俺?今年で25」

「え、見えない……」

「失礼だな」


そういうお前はどうなんだと問われ、答えようとしたが言葉に詰まった。


「覚えてないです……」

「そんな訳……お前記憶ないんだったな」


興を削がれたようにため息をついたリデルは、空気を変えるように立ち上がってルカを見た。


「お前を連れていきたい場所がある。正確に言えば、会わせておきたい奴がいる」

「会わせておきたい人?」

「そうだ。奴は嫌そうな顔をするだろうが、お前を戦場に連れて行く以上必要なことだからな」


嫌な顔をする、とは。疑問が顔に出たのだろう、リデルが言葉をつけ足した。


「そいつはお前を記録人とすることに最後まで反対していた。お前に原因があるかは知らんが……その時の態度をみた限り、多分お前は嫌われてる」

「僕なにもした覚えないんですけど!」

「そりゃそうだろ記憶ないんだから。行くぞ」

「ええ……」

大罪人紹介

・コードネーム〝世界〟

性別:男性

罪状:生命錬成未遂

術解名:「盤上操作」

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